これをもって邪馬台国か?!とするのはあまりに短絡的だと思うのですが、せっかく出土した貴重な大型建物跡なんですし、畿内の古代史の解明に役立つ科学的調査をしていただきたいと思います。なんでも邪馬台国に結び付けようとすれば、本来見えるはずのものも見えず、土器など出土品の鑑定に恣意的な思惑が入るなど事実を歪曲することにもつながりかねませんし。学者の間での畿内説vs九州説の対立に加えて地元の市長がやたら張り切ってる様子などを見ると、邪馬台国論争の中に心情的なものという以上にあまりにも“政治”が介入しすぎているように思えて心配です。
さて、それはともかく、注目を集めているだけあって現地説明会にも力が入ってるようですね。あのローカル線にJR西日本が臨時列車を出すほどなんですよね。明日は天気もよさそうなので、かなりの人出がありそうです。見たくはあっても、行く気はしないな、さすがに(苦笑)。
◆「卑弥呼の宮殿」?興味津々…纒向遺跡説明会に考古学ファン
【読売新聞 2009年11月14日】

邪馬台国の女王・卑弥呼の時代にあたる3世紀前半~中頃の大型建物跡(南北19・2メートル)が出土した奈良県桜井市の纒向(まきむく)遺跡で14日、現地説明会が開かれた。同市教委は15日との両日で1万人以上の人出を見込むが、朝まで雨が降ったため、午後1時現在で約2000人と、やや出足は低調。それでも熱心な考古学ファンらが「卑弥呼の宮殿」の可能性もある建物跡を食い入るように見つめた。15日は午前10時~午後3時に説明会を行う。
現場では見学者が建物跡を取り囲んで、市教委の担当者から説明を聞いた。前夜から車で寝泊まりしたという埼玉県寄居町、主婦沢中智子さん(72)は「建物が整然と並び、邪馬台国で間違いないと思った。卑弥呼が住んでいたかと思うとわくわくする」と興奮した様子。京都府木津川市、会社員竹村順弘さん(54)は「実際に見ると臨場感が違う。まだ大きな遺構が残っているかもしれないので今後の調査に期待したい」と話した。
市教委は、今回の調査結果を発表した10日以降、連日100件を超す問い合わせがあったことを受け、説明会の警備や案内に職員50人を動員。JR西日本も最寄りの巻向駅発着の臨時列車を2日間で8本運行する。
◆奈良・纒向遺跡 建物跡、魏志倭人伝の「宮室」か
【読売新聞 2009年11月11日】
奈良県桜井市の纒向(まきむく)遺跡で出土した3世紀前半から中頃の大型建物跡。小高い丘を大規模に造成した場所は、この時代の政治や宗教の中心地としてふさわしい“一等地”だった。約1800年前に生きた日本の歴史上で最も有名なヒロイン、邪馬台国の卑弥呼の居所を巡って、研究者や歴史愛好家の熱い視線が、この地に注がれている。
調査地は、古代からご神体として信仰を集めてきた三輪山の優美な姿を南東に望み、南に「卑弥呼の墓」との説がある箸墓(はしはか)古墳が横たわる。西に目を転じると、勝山古墳や矢塚古墳など3世紀に築かれた最初期の古墳群が点在する。
桜井市教委の調査で見つかった飛鳥時代の宮殿に匹敵する直径約32センチの柱を持つ大型建物跡は、この時代、一帯に政治や宗教の中心となる強大な権力が存在し、後の大和王権に続く可能性を示している。
約20年前から同遺跡の発掘を手伝ってきた俳優の苅谷俊介さんは「ここに卑弥呼の宮殿があると予想していたので、大変感激している」と顔をほころばせる。1971年に同遺跡を初めて調査した石野博信・兵庫県立考古博物館長も「ようやく邪馬台国が大和にあったことを裏付ける有力な根拠が出た。魏志倭人伝にある『宮室(宮殿)』かもしれない」と感慨深げだ。
古代史に詳しいマンガ家の里中満智子さんは「卑弥呼はこのぐらい大きな宮殿に住んでいただろうと想像してしまう。これを機に、邪馬台国論争が一層盛り上がってくれれば」と期待する。
卑弥呼が活躍したのは、魏の曹操ら三国志の英雄と同時代。SF作家の豊田有恒さんは「魏は呉と通じた遼東半島の公孫氏に対抗するため、邪馬台国を厚遇した。今回の成果から、そうした東アジア情勢も浮かぶ」とダイナミックな歴史に思いをはせる。
畿内説論者の意気は上がるが、今回の発見は有力な傍証であっても、邪馬台国や卑弥呼と結びつく「直接証拠」ではないだけに、反論もある。
九州説を唱える高島忠平・佐賀女子短大学長(考古学)は「大型建物跡は、土器の年代から4世紀以降の遺構と考えるべきだ。魏志倭人伝の記述から、卑弥呼の都は九州の環濠(かんごう)集落がふさわしい」と主張している。
〔※写真:三輪山のふもと、箸墓古墳などに囲まれた纒向遺跡の調査地(奈良県桜井市で、本社ヘリから)=前田尚紀撮影〕
〔※写真:纒向遺跡で見つかった建物群の復元模型。右が今回出土した大型建物(黒田龍二・神戸大准教授作製)〕
◆3世紀前半の大型建物跡、邪馬台国の中枢施設か 奈良
【朝日新聞 2009年11月10日】

邪馬台国の有力候補地とされる奈良県桜井市の纒向(まきむく)遺跡(2世紀末~4世紀初め)で、3世紀前半(弥生時代末~古墳時代初め)の大型建物跡1棟が見つかった。市教委が10日発表した。同時期の建物としては、国内最大の面積で、邪馬台国の女王・卑弥呼が君臨した時期にあたり、専門家は「邪馬台国の中枢施設の可能性がある」と指摘している。畿内説と九州説が対立する邪馬台国の所在地論争に影響を与える発見となる。
市教委によると、周辺で以前に発掘された3棟とともに中心軸が東西の同一線上に並ぶなど例のない計画的な配置が施されていた。
大型建物は南北19.2メートル、東西12.4メートル、床面積は約238平方メートルと推定している。柱穴13個(直径32~38センチ)を確認。その間には、一回り小さい柱穴9個(直径23~25センチ)もあった。南北の柱間(約4.8メートル)を支える束柱(つかばしら)だったとしている。東西の柱間(約3.1メートル)にはなかった。
出土した柱穴群の西側は6世紀に造られた溝で削られていた。しかし、見つかった柱穴の形や並び方から見て、削られた部分にも同様の柱列があったと判断した。
また、大型建物跡の西側では、すでに3世紀前半の小中規模の建物跡3棟が見つかっていた。大型建物跡と同じ方位を向き、中軸線も東西の同一直線上に並んでいた。周囲からは総延長40メートル以上の柵(さく)列も出ており、大型建物跡など東側の3棟は柵内に区画されていたとみられる。計画的に配列された建物群は、飛鳥時代の宮殿や寺では一般化するが、今回は最古の例という。
大型建物跡の一部は、方形周溝墓とみられるL字形の溝で壊されていた。溝から3世紀中ごろの土器が出土したため、大型建物の時期は3世紀前半と判断した。纒向遺跡中心部の全体像を探るため、9月から約390平方メートルで調査を進めていた。これまでの調査面積は、遺跡全体の約5%にすぎず、今後の調査によって、さらに東側などに建物などが確認される可能性も期待されている。
3世紀後半までの大型建物跡としては、吉野ケ里遺跡(佐賀県)の高床式建物跡(2世紀、約156平方メートル)や、樽味四反地(たるみしたんじ)遺跡(松山市)の掘っ立て柱建物跡(3世紀後半、約162平方メートル)などがある。
邪馬台国は、3世紀末の中国・三国時代の史書「魏志倭人伝」に記載されている。宮殿や物見櫓(やぐら)、城柵があったと記されているが、纒向遺跡ではこれまで大型建物跡が出土しておらず、畿内説の「弱点」とされてきた。
現地説明会は14、15日の午前10時~午後3時。JR巻向(まきむく)駅西側。雨天中止。(渡義人)
〔※写真:纒向遺跡の中心部で見つかった大型建物跡。黄色のポールが柱穴の位置=奈良県桜井市、西畑志朗撮影〕
〔※写真:3世紀前半の大型建物跡が見つかった纒向遺跡。黄色のポールが柱穴跡=奈良県桜井市、朝日新聞社ヘリから、荒元忠彦撮影〕
〔※写真:発掘された大型建物(左)など4棟の復元模型=黒田龍二・神戸大准教授制作〕
◆纒向遺跡大田北地域の大型建物の発見について 佐賀女子短期大学 高島忠平
【佐賀新聞 2009年11月10日】
ヤマト王権発祥の地といわれている所での今回の発掘成果は、大きな意義がある。これまで、不明とされてきた集落跡、あるいは宮殿跡と思わせる大型建物と中小の建物が整然と軸線を共通に建てられ、一定の区画と方位性をもっているところから、祭祀性のある建物と考えられる。
指摘できるのは、古墳時代の家型埴輪の配列と共通する点があることだ。古墳時代の豪族居館・祭祀施設に連なるものではないか。しかし、小範囲の発掘であり、これらを含むほかの遺構や建物群は、広範囲に存在するので、それらが明らかとなった段階で比較検討し、遺構群の性格・機能を判断すべきだろう。
いずれにしても、後の古代国家に連なるヤマト王権発祥の地での今回の発見は、謎の多い日本古代国家の起源を探る上で、貴重な発見である。
吉野ケ里遺跡は、環壕集落全域を発掘調査で明らかにしており、その結果、歴代の王の墓、北内郭祭殿、南内郭宮殿、倉と市、南のムラ一般集落、祭壇といったもので構成される3世紀の一つの国の首都の構造をとらえている。
纒向遺跡は、それを明らかにできるには、長期間を要するだろうが、ヤマト王権、ひいては日本国家の起源を明らかにする重要な遺跡なので、今後の継続的な発掘調査に期待したい。卑弥呼の宮殿かとするには、時期が違う。纒向遺跡の最近の発掘で種々の問題がでてきており、今回発見の遺構(庄内式土器期)は4世紀以降のものとするのが無難である。
◇邪馬台国論は1970年代までは、箸墓など巨大古墳は、古墳時代、4世紀以降であることを共通の認識として行われてきた。
ところが、1980年代ごろから、考古学研究者、東洋史研究者の要請に応えた考古学研究者の間で、古墳時代を100年から50年ほどさかのぼるとする見解が出されるようになった。
ヤマト王権の発祥地とされる箸墓をはじめ奈良盆地南東部の古式の古墳群の時期を、3世紀とし、邪馬台国近畿説の根拠とするようになり、纒向遺跡の発掘成果を重ねて、纒向遺跡を邪馬台国の都と位置づけた。古墳時代の始まりを50年、100年と徐々に古くするなかで、多くの研究者が追随していった。これに呼応して、中国鏡の編年研究が進められ、これまで、3世紀の紀年鏡副葬古墳を従来より時代を古くする根拠とするようになった(しかし、3世紀に中国で鋳造された鏡は、紀年銘のあるものを含め、5世紀以降の古墳から出土することが多々あり、古墳や土器の年代を決定する資料にはならないとされている)。
また、これには、 C14(放射性炭素)年代測定と年輪年代測定の結果が一定影響をあたえている。
現在では、科学的な年代測定については、彼らの考古学見解と矛盾するところが生じ、国立歴史民俗博物館の研究グループを除いては、採用していない。ところが、近畿説をとる研究者間で違いはあるが、纒向遺跡を中心とした古墳・遺物(主として土器)・遺構の年代は、依然としてそのままである。
最近の古墳を含む纒向遺跡群の発掘成果によれば、こうした遺跡を3世紀、それも邪馬台国時代とするには、種々の問題が出てきているにもかかわらず従来の年代観に固執している。
◇
以下、今回の出土品の解釈などについていくつかの問題点を指摘しておきたい。
近畿説の研究者がいう布留1式(4世紀初め・歴博年代3世紀後半)の土器と「鐙(あぶみ)」が出土している。中国で鐙が出現するのは、4世紀はじめの西晋墓出土の陶傭に表現された片方だけの鐙で、両鐙となるのは4~5世紀である。朝鮮半島では、4世紀末に出現し、5世紀に普及し始めるものである。日本での出土例は、5世紀である。「鐙」というのは、騎馬戦が存在する軍事上極めて重要なものであって、アジア最古の鐙がそこにあっただけではすまない事案である。これまで、庄内・布留式土器の年代決定の手がかりがなかったが、「鐙」の出土は、そのための有力な資料となる。したがって、布留1式土器を従来どおり、4~5世紀とするのが合理的である。当然、庄内式土器の年代も4世紀以降ということになる。
次に、最古級とされる「ホケノ山古墳」の石室床面から布留1式からしか出現しない小形丸底壷が出土している。この種の土器は、布留0式からあっても良いとの私見はあるが、この点から「ホケノ山古墳」の築造を庄内式土器期にはできない。ホケノ山古墳は4世紀後半のものである。
また、魏志倭人伝が記述する「居所、宮室、楼観、城柵を厳重にめぐらして、人が居て、武器を持って守っている」とある卑弥呼の都(御家拠-館)は、城柵等の記述からみて環壕集落である。纒向遺跡をはじめ近畿では、弥生時代後期後半以降には存在しない。明らかに、魏志倭人伝は、環壕集落のことを記しており、九州の弥生後期後半の環壕集落がふさわしい。
よしんば近畿で、卑弥呼の都するところ(御家拠-館)を求めるとすれば、時期的には、奈良県田原本町の唐古・鍵遺跡の弥生後期後半期ではないだろうか。ただし、唐古・鍵遺跡の環壕からは、城柵(土塁と木柵)を見出すのは難しい。





























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