スペインのギタリストのDNA?!・・・スペイン音楽祭2005

スペイン音楽祭2005
~ホセ・マリア・ガジャルド&ファン・マヌエル・カニサーレス“マノ・ア・マノ”~

2005年9月23日(金・祝) 19時開演@大阪市中央公会堂
クラシック・ギター:ホセ・マリア・ガジャルド・デル・レイ
フラメンコ・ギター:ファン・マヌエル・カニサーレス
ベース:ホセ・デ・ルシア
パーカッション:ロベルト・ヴォスメディアーノ

スペイン音楽祭のサイトはこちら↓
http://smf2005.exblog.jp/

名前は一応知ってはいたものの演奏は初めて聴くギタリストのお二方。“マノ・ア・マノ”とは出会いの握手というような意味合いのようです。1,000人は入るホールに席は4分の1も埋まってなくて、なんだか大変申し訳ない気分で・・・(苦笑)。

はじめに、ガジャルドとヴォスメディアーノが登場。ガジャルドはクラシック以外にもいろんなジャンルのミュージシャンとコラボレーションしているそうですが、彼のソロを聴いているともうクラシックの枠を飛び越えて‘スペイン’そのものを表現しようとしているのでは、と思えてきます。フラメンコのリズムも「もう子どもの頃からやってるよ」とばかりに違和感無くサラサラと弾いてしまうし、エスペリオンⅩⅩⅠのところでも言いましたが、やっぱり

スペインのギタリストって特別のDNAがあるんでしょ!?

と言いたくなります(恥ずかしくて言えませんが・・・ってもう言うてるし)

ガジャルドが2曲弾いた後はカニサーレスとホセ・デ・ルシアに交代して、このコンビで2曲。その後全員でアルベニスの曲を演奏して前半終了。

後半は最初から全員出てきて、のっけからエンジン全開の弾きっぷり。2人のテクニックと音楽性の素晴しさもさることながら、とても情熱的なギターでソロの受け渡しからなにからコンビネーションも見事で、もうスペインの薫りを満喫してお腹一杯!というコンサートでした。観客が少なかったのがとても残念です。こんなに人が少ないのなら、はじめっから小ホールでPA無しで2人の生の音を楽しみたかったですぅ・・・。

会場となっていた大阪市中央公会堂↓は歴史の古い建物で国の重要文化財にも指定されています。
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エスペリオンⅩⅩⅠ ライヴ in 大阪

エスペリオンⅩⅩⅠ(ヴァン・テ・アン) とはジョルディ・サヴァールが創設した古楽アンサンブルで、主にスペインのバロック音楽を中心をしたレパートリーを持っているようですが、録音の存在は知ってはいるものの聴く機会にこれまでなかなか恵まれず、いわば今夜はぶっつけ本番で聴きました。

19時開演、場所は大阪のザ・フェニックスホール。

メンバーは

ジョルディ・サヴァール(監督兼ソプラノ・ヴィオラ・ダ・ガンバ)
モンセラート・フィゲーラス(ソプラノ)
アリアンナ・サヴァール(カント&ハープ)
平尾雅子(テナー・ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ファーミ・アルクァイ(バス・ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ロルフ・リスレヴァンド(ヴィウエラ&ギター)
ベゴーニャ・オラヴィデ(サルテリオ)
ペドロ・エステヴァン(パーカッション)

ヴィオラ・ダ・ガンバを3種類見たのも初めてなら、サルテリオという楽器も初めて見ました。おそらく通奏低音を担当しているようでしたが。

当日はプログラムと共にA4紙1枚に書かれたジョルディ・サヴァールの時代背景の簡単な説明を含んだ解説が付けられていて、スペイン語も知らなければ世界史も断片の知識しかない私にはとてもありがたいものでした。16~17世紀のスペインの音楽を集めたプログラムだったのですが、曲をどう紹介してよいのやら(短めの曲が多い上に作者不詳のものも多い)・・・というわけで、テーマのみでお茶を濁します(苦笑)。

◆ドン・キホーテとミゲル・デ・セルバンテスの音楽
『スペイン黄金世紀の光と影』
◇第1部◇
 -モリスコのロマンセと舞曲-(4曲)
 -セフィルディーのロマンセ-(3曲)
 -ヴィリャンシーコと宮廷音楽-(4曲)
(休憩)
◇第2部◇
 -歌と弦楽器のための舞曲-(8曲)

のっけからもう
「今まで聴いたんと全然違う!」
でして、古楽アンサンブルも好きですからドイツ・フランス・イタリアのものなら少しは聴きかじってはいるのですが、イスラムっぽいメロディーがあってオリエントの薫り漂う雰囲気で、クラシックを聴いているというよりはエスニック混じりのヒーリング音楽を聴いているような心地好さ。フィゲーラスとアリアンナの声もとてもきれいでした。

開演前は閑古鳥だった臨時のCD売場も、休憩中は人だかり。もちろんサイン会の予定を告知していたわけではないんですよ。純粋に演奏が気に入って、だと思います。

さて、第2部は第1部よりも全体的に大衆音楽っぽい感じ。最初がギターソロだったのですが、ロドリーゴの『ある貴紳のための幻想曲』のラストを想起させるメロディーがあるかと思えばエンディングに向かってはもうフラメンコのようなノリで、

スペインのギタリストって、
ブラジルのサッカー選手のように
特別なDNAでもあるんですか?!

・・・すんまへん、つい「アレ!!」と叫びそうになったのは私(笑)。

ジョルディ・サヴァールの解説には、フェリペ2世の治世を含むスペインの黄金期にはほんの一握りの人が莫大な富に与れた裏で多くのスペイン人が極貧の生活を強いられた、というようなことが書かれてましたが、だからこそ当時の人々は音楽や舞踊でささやかな楽しみを精一杯満喫したかったのでしょうか、気持ちよく楽しんで聴ける曲が多かったです。プログラミングの妙かもしれませんけど、各演奏者が皆高い技術レベルにあるだけでなく、音を奏でること自体をとても楽しんでいらっしゃるような雰囲気がこちらにも伝わってきて、聴いている方も幸福に包み込まれているような感覚で心地好く楽しむことができました。

京都市交響楽団 モーツァルト・ツィクルス Nr.8

2005年9月23日(金・祝)19時開演
@京都コンサートホール・アンサンブルホールムラタ

◆W.A.モーツァルト 歌劇『フィガロの結婚』序曲 K.492
◆W.A.モーツァルト クラリネット協奏曲イ長調 K.622
(休憩)
◆W.A.モーツァルト 歌劇『劇場支配人』序曲 K.486
◆W.A.モーツァルト 交響曲第39番変ホ長調 K.543

指揮:大友直人
クラリネット:小谷口直子(京響クラリネット奏者)

 曲間には簡単な解説を交えた大友さんのトークがありましたが、さすがは若い頃NHK-FMで鍛えられただけあって、簡潔でわかりやすく聴き所のポイントを押えた解説でした。ホールが小ぶりなこともあって編成も小さめでした。コンマスは渡邊さん。

 最初のフィガロから、きちっと整ったアンサンブルで淡々と流れているようで細かいニュアンスの変化にも隅々にまで目の行き届いた、ある意味大友さんのキャラらしいモーツァルトで、バーンスタイン譲りの濃厚でロマン派的な大植さんのモーツァルトとは好対照。

 フィガロが終わって大友さんによるクラコンの簡単な解説の後、彼に呼び出されて小谷口さん登場・・・ほほう、ベージュのワンピースですか。似合っているのか似合っていないのか、よくわかりません(笑)。
 大友さんもおっしゃったように、モーツァルト最晩年の作曲だけあって「演奏時間の長い大きな曲というだけでなくて、内容もとても大きな内容を持った曲」というか、長調で書かれたにもかかわらず奥深い内省的な佇まいと澄みきった響きがして、モーツァルトらしく美しいだけでなく聴いていて楽しいメロディーがあちこちに散りばめられてはいても、どこかしら静かにニッコリ微笑んで天国へ旅立つような雰囲気が漂うようで、そういうのが聴き手にも感じとれるような、大変良い演奏だったと思います。
 ソロが会心の演奏で素晴しかったのは演奏後の小谷口さんの「一片の悔いも無し」の満面の笑みでわかりますが(爆)、大友さんのサポートも絶妙だったのではないでしょうか。

 熱い拍手で2度目にステージに呼び出された小谷口さん、マイクを持たされて少し緊張気味(笑)。手馴れた大友さんと正反対にボケたりどもったりで演奏以上にトークで緊張しているのがアリアリで、なんてわかりやすい人なんでしょう(爆)。彼女自身が言ったように解釈を深める余地はまだたくさん残っているのでしょうけど、現時点でのベストの演奏はできたのではないでしょうか。
「今までコンクールやオーケストラのオーディションで課題曲として、“(彼女の表現で)闘いの場”で演奏してばかりで、今回初めて自由に演奏できて、とても楽しんでできた・・・オーケストラの中で演奏するのと違って(協奏曲の)ソロで失敗しても自分(1人)で責任が取れるから、かえってとても気が楽でした。」
という正直なコメントがよかったです。あと、ステージから下がる時扉の向こうにいる人を見て「わーっ」と口を大きく開けた表情を見せていたのがドツボにはまって面白かったです(爆)。子どものまんま大きくなったみたいで親近感を持ちました(笑)。

 最後のK.543は昨年2月に大植さんが大フィルと演奏(コンマスが長原さん)したのも聴いていますが、あちらがコッテリ味ならこちらはややアッサリめのお味。モーツァルト後期の作品ですからスコアがしっかりしていて、どちらのアプローチでやってもビクともしませんが、大友さんもあっさりめとはいえニュアンスの微妙な変化もしっかり捕らえて演奏に盛り込んで、仕上がりの良いモーツァルトになったと思います。

京都市交響楽団 第480回定期演奏会

2005年9月14日(水)19時開演
@京都コンサートホール

◆V.トルミス  序曲第2番
◆S.ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番ハ短調 op.18
(休憩)
◆P.I.チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調 op.64

指揮:アヌ・タリ
ピアノ:伊藤恵

 アヌ・タリは1972年生まれのエストニア人。写真での印象とは違い、どちらかというと可愛らしい感じの顔立ちに、スレンダーで背もそんなに高くなさそう(170cmあるかないか)。録音もあるようですが未聴で、私は全く初めてでした。

 1曲目、ヴェリヨ・トルミスはエストニアの作曲家で合唱作品が多いらしく、合唱曲の分野ではそれなりに名前を売っているようです。今回の序曲第2番はもちろん管弦楽曲ですが、なんとなくシベリウスとショスタコーヴィチを足して2で割ったような音の作りでした。全体的に速めのテンポで1歩1歩を力強くしっかり大地を蹴って早足で歩くような、エネルギッシュで前向きな印象を持った曲でした。
 アヌ・タリの指揮は右手はほとんど拍子を振るだけ、左手は楽譜をめくるか右手と一緒に拍子を振るくらいで、あまり器用には見えませんでしたが、練習で良い関係を築けたのかオケがよく喰らいついている様子でした。今日のコンマスだった工藤千博さんが一際大きな身振りで弾いてましたし。

 2曲目のソロは伊藤恵さん。昨秋の神戸でのリサイタルで聴いたシューマンとシューベルトのソナタがとても印象に残っていて、信頼度100%(笑)。間違ってもおセンチになったり変に甘ったるくなったりするようなことにはならないと思ってはいましたが、まさに期待に違わない素晴しいラフマニノフでした。ピアノのダイナミックレンジが広く1つ1つの音を丹念に力強く弾いて曲の構造をしっかりと作り、スケール大きく仕上げてきました。自分が弾いてない時でもオケに合わせて体を大きく動かしたり口ずさんだりと、ラフマニノフの世界にすっかり入ってはいるのですが、それでいて流されず闇雲に没入せず、曲の全体構造を掴んで聴衆に提示してくれるのは伊藤さんならではだと思いました。バランスよくピアノをサポートした指揮も良かったと思います。拍手を受ける時に、若き指揮者を盛り立てようとするソリストと、あくまでソリストを立てようとする指揮者の譲り合いは見ていて微笑ましかったです。

 3曲目のチャイコフスキー、音の響きはやっぱりロシア・スラブ的というよりも北欧の薫り漂うもので、このままシベリウスでもやってくれないかな~~~なんて思ったり。京都コンサートホールは場所によって聴こえ方がえらい違うので断言はできませんが、私のいた席(ヴィオラの真上にあたる3階席)からは弦を大きく鳴らして際立たせてるように聴こえました。テンポは全体的に中庸で、目立ったリタルダントやアッチェランドもなかったですが、その中でもメロディーはわりとたっぷり歌わせてましたし、メリハリが効いて引き締まった、非常に集中度が高く熱い好演奏でした。いつもこんなに音大きかったっけ?というくらい弦の厚みがあって、木管ソロもよかったし(仙崎さん・小谷口さん・高山さん、お疲れさんどした!)、終楽章コーダに入る直前で間違い迷惑ブラボーをデカい声でかましやがったバカオヤジがいなければ大変気分良くホールを後にできたんですけどね!!!たぶん1階席だと思うのですが、下の客席がよく見えなかったので、誰かはわからずじまい。特定できたら帰りにヤキ入れてやったのに(をい)。

 アホなオヤジ客に呆れたのか工藤さんは苦笑いでしたが、小谷口さん周辺だけでなくヴァイオリンを中心に団員達の充実感溢れる笑顔があちこちで見られました。この日の演奏という結果だけでなく、指揮者の指名で拍手を受ける仲間に対して、そして指揮者に対して、自然な笑顔で心からの拍手を送るステージの団員(特に女性)を見て、アヌ・タリと京響がとても良好な関係を築いて本番に臨み成功させたことを客席からも実感しました。エストニアを背負っているという意気込みすら感じる気迫と同時に謙虚で控えめな一面ものぞかせて、演奏の中身とともに良い印象を持ちました。また京響定期でアヌ・タリに振ってほしいですね。今度はペルトやトゥビンなど、オール・エストニア・プログラムでぜひ。