圧倒的じゃないか、我が代表は・・・2014年W杯・準決勝:ブラジル 1-7 ドイツ

・・・なんて、ギレン総帥ばりの台詞をメルケルおばさん独首相が思ったかどうかまでは知りませんが(笑)。

そして、今日のゴールでワールドカップ通算得点の記録を塗り替えたクローゼには祝福の言葉を。
「おめでとう!」

 

2014年W杯・準決勝

ブラジル 1−7 ドイツ

 

会場がベロリゾンチでなくリオだったら街がどんなことになってたか・・・?

ブラジルの失点の仕方を見ていると、ネイマールの負傷欠場よりもキャプテンのCBチアゴ・シウヴァの出場停止の方がチームとしては穴が大きかったようですね。

ただ、2人の欠場を除いても、ベスト4まで勝ち残ってきたとはいえ、ラフプレーやファールはめっちゃ多いし、開幕戦の西村PKのようにジャッジに助けられることもしばしば・・・これまで5試合の因果応報がまとめて準決勝の試合に降りかかってきたと言えなくもないと思います。これでクロアチア国民も少しは溜飲下がったかしら?(苦笑) フェリポンのチームは元からクリエイティヴとは対極にあるようなスタイルですが、今大会のセレソンにはボランチと前線に殊更タレントを欠いていて戦術的に一体感があるようでもなく、私には魅力あるチームには見えませんでした。準々決勝でコロンビアに敗れるのが妥当だったとすら考えています。

それにしても、ドイツはさすがですね。ブラジルがネイマールとチアゴ・シウヴァを欠いていたとはいえ、圧倒的アウェーの中でも冷静にファイトできるメンタルの強さはやはり経験値の違いでしょうか。対面でアルゼンチンとオランダのどちらが上がってくるかまだわかりませんが、両チームと比較しても優勝に相応しいのはドイツ代表のように思えます。

 

衝撃を与えた「ミネイロンの悲劇」【スポーツナビ:宇都宮徹壱 2014年7月9日】

神妙な顔つきをした開催国の人々

 大会28日目。この日は準決勝のブラジル対ドイツが17時より、ここベロオリゾンテのミネイロンで行われる。大会2日目から準々決勝までのマッチデーは、常に2試合以上が行われていたが、この日から決勝までは1試合ずつ。試合数も残り4試合となった。4週間前に開幕した今大会も、いよいよ大詰めを迎える。

 この日は、朝からベロオリゾンテ市内のショッピングモールをはしごした。昨夜、原稿を書いていたら、PCの電源アダプターとカードリーダーが相次いで破損し、急いで代替品を購入する必要に迫られたからだ。海外取材も1カ月以上が過ぎると、どんなに注意していてもいろいろモノが壊れたり紛失したりする。問題は、ブラジルで同じような製品が売られているか。結果として、日本よりも若干価格設定が高かったものの、探し求めていたものを無事に購入することができた(当地は英語が話せる人が多かったのも幸いした)。

 準決勝当日とあって、セントロ(中心街)周辺ではセレソン(ブラジル代表の愛称)のレプリカを着た人々をよく見かけた。ただし、これまでと違ってこの日は皆ずいぶんとおとなしめ。というより、一様に神妙な表情である。この日の相手はドイツ。ラウンド16ではアルジェリアに延長戦までもつれ、続く準々決勝のフランス戦では1点を争う伯仲したゲームとなったが、いずれも持ち前の勝負強さで勝ち上がってきた強豪である。一方のブラジルは、薄氷を踏む思いでチリとのPK戦に競り勝ち、コロンビアには2−1で勝利したものの、ネイマールが相手選手の悪質なファウルを受けて骨折。キャプテンのチアゴ・シウバも累積警告で出場停止となってしまった。

 これまで、いささか無邪気かつ能天気にセレソンの勝利を信じていたブラジル国民。しかし、この緊急事態の上にドイツとファイナル進出を懸けて戦うとあって、国民の代表に対する真剣度と当事者意識がここ数日で急速に高まっているのを感じる。今大会の寵児(ちょうじ)となるはずだったネイマールを失ったことで、セレソンとサポーターとの間に強い結束力が生まれたならば、あるいはドイツを返り討ちにできるのではないか──。試合前には、そんなことを考えていた。

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〔※写真:セミファイナルの会場となったミネイロン。まさかここでセレソンの歴史が塗り替えられるとは【宇都宮徹壱】〕

94年ぶりに更新された不名誉な記録

 序盤はブラジルが積極的に仕掛け、ドイツががっちりそれを受け止めながら時おりショートカウンターを繰り出す展開で始まった。やや受け身で試合に入ったドイツは、まずはセットプレーからチャンスを見いだす。前半11分、右CKをトニ・クロースが蹴りこむと、ファーサイドに走りこんできたトーマス・ミュラーが右足インサイドで直接合わせてネットを揺らした。その直後、ブラジルサポーターの声援のボルテージも一段上がる。みんな必死だ。中にはすでに泣き顔の人もいる。圧倒的なホームの状態を創りだしているにもかかわらず、ブラジルの人々はなりふり構わぬ姿でセレソンに応援を続けている。

 ミュラーの先制ゴールは、悲劇に向けたプロローグでしかなかった。23分、ドイツは右サイドのスローインから、クロース、ミュラー、ミロスラフ・クローゼへとパスがつながる。クローゼのシュートは、いったんはGKジュリオ・セーザルのセーブに阻まれるも、こぼれ球を再びクローゼが押し込んで追加点。その後はドイツのショートカウンターがさえ渡り、わずか4分間で3ゴールを挙げる。24分には右からの折り返しにクロース、26分にはサミ・ケディラとのワンツーからまたもクロース、そして29分にはケディラのインターセプトからメスト・エジルを挟んで最後はケディラ。なんとブラジルは、前半だけで5失点を喫してしまう。前半終了のホイッスルと同時に、会場は怨嗟(えんさ)のこもったブーイングに包まれた。

 後半のブラジルは、ドイツ相手にいかに5点差をひっくり返すかというプレッシャーよりも、むしろ「6失点目の恐怖」のほうが強かったのではないだろうか。今大会の最多失点はスペインとスイスの5(それぞれオランダに1−5、フランスに2−5)。開催国ブラジルが、しかも準決勝の大舞台でそれを塗り替えるわけにはいかない。加えてもうひとつ、ブラジルの最多得失点差負けの「0−6」に並んでしまう可能性さえあった。もっとも、ブラジルのベンチでその事実に気づいていた選手やスタッフが、どれだけいたかは分からない。何しろこの不名誉な記録が生まれたのは1920年のことだからだ(ちなみに相手は、世界最強となる前夜のウルグアイ)。

 結局のところこれらの記録は、後半13分にクローゼに代わって入ったアンドレ・シュールレによって、一時的に更新されてしまう。後半24分、右サイドのフィリップ・ラームからの低いクロスに右足で合わせて6点目を決めると、その10分後にはミュラーの左からの折り返しに今度は左足でネットを揺さぶり7点目。この瞬間、94年という気の遠くなるような年月を超えて、ブラジルの不名誉な最多失点記録が更新された。と同時に、ブラジルのサポーターからも拍手が沸き起こる。とうとうセレソンの不甲斐なさに愛想を尽かしたのか、その後もドイツのパスが回るたびにスタンドから「オーレ! オーレ!」と大合唱が起こる。そして終了間際にオスカルが1点を返すと、今度は「今さら遅いんだよ!」と言わんばかりのブーイング。それでもこの1点により、最多得失点差負けの記録更新だけは回避された。

 やがて、アディショナルタイム2分を経て、終了のホイッスル。ファイナルスコア、1−7。長く辛い試合が、ようやく終わった。ワールドカップ(W杯)において、日本戦以外でこれほど胸が張り裂けそうになった試合は、今回が初めてである。

セレソンの心が折れた瞬間

 それにしてもワールドカップ(W杯)のセミファイナルで、これほど大差が開いた試合が、かつてあっただろうか? 調べてみると、1930年の第1回大会のアルゼンチン対米国とウルグアイ対ユーゴスラビア、そして54年大会の西ドイツ対オーストリアが、いずれも6−1というスコアで最多得点差記録となっていた(2次リーグ制の大会は除く)。今回のブラジル対ドイツは、それらを上回る記録となったわけである。余談ながらこの日の試合では、クローゼの大会通算ゴール記録が16点となり、元ブラジル代表のロナウドを抜いて単独トップとなっている。そんな大記録が目立たなくなるくらい、ブラジルの大敗はスキャンダラスであった。

 では、大敗の一番の原因は何だったのか。もはや「ネイマールの不在」だけでは、説明できないだろう。ひとつ手がかりになりそうなのは、試合後のスタッツ。ポゼッションではブラジル51、ドイツ49とほぼ互角だったのに対し、シュート数ではブラジル18(枠内13)に対して、ドイツ14(枠内12)。ブラジルのほうがシュート数で優っているにもかかわらず、スコアにこれだけの開きがあるというのが尋常でない。ブラジルに関しては、確かにドイツGKマヌエル・ノイアーのファインセーブに阻まれたシーンが3回ほどあったが、それ以外のシュートはさほどドイツに脅威を与えてはいなかった。数字上では互角かそれ以上であっても、数字に現れていない部分、とりわけメンタル面でブラジルは明らかに萎縮しているように見えた。

 確かにブラジルは、そこそこボールは保持できていたし、そこそこシュートも打っていた。が、ここぞというところでパスの呼吸が合わない。クロスを上げても誰も走りこんでいない。相手ボールになっても積極的にプレスを掛けようとしない。攻撃のためのリスクをとろうとしない。ファウルしなければ相手を止められない。これらブラジルのネガティブなプレーが目立つようになったのは、5失点を喫した直後からであった。あの瞬間、選手たちの心がポキリと音を立てて折れてしまったのだろう。前半を2失点で折り返していれば、まだ逆転の可能性はあった。しかし25分から29分にかけての、ショートカウンターからの3連続ゴールが、セレソンの闘争心を完全に萎えさせてしまった。

 かくして「優勝」を義務付けられていた開催国ブラジルの夢は、誰もが予想しなかった形で潰えてしまった。そして終わってみれば、ドイツの完ぺきなゲーム運びと無慈悲ともいえる攻撃力ばかりが際立ったセミファイナルとなった。今日の試合は「ミネイロンの悲劇」として、今後50年は語り継がれることだろう。そしてこの試合に出場した選手は、今後どのようなフットボーラーとしての栄達を極めたとしても、この日のトラウマを生涯引きずり続けることになるだろう。あらためて「サッカーの怖さ」を思い知ったベロオリゾンテの夜。試合後、メディアバスでセントロに戻ってみると、まだ20時を過ぎたばかりなのに、時おり聞こえる酔っぱらいの叫び声以外、街はひっそりと静まり返っていた。

 

2014年W杯・準々決勝:アルゼンチン 1-0 ベルギー、オランダ 0-0(PK4-3) コスタリカ

なんか今大会のファン・ハールの采配って鬼神憑ってません?日本の高校選手権のようなアマチュア大会ならいざ知らず、世界最高峰のプロ大会でPK戦のためにGK替えるなんて・・・彼なりに100%自信があってやったことなんでしょうけど、傍から見たらいろんな意味でやっぱりリスキー。いやまぁ、性格からして頭のネジが何本か飛んでるような人ではあるけれど(バイエルン・ミュンヘン時代の奇行エピソードとかw)。

 

2014年W杯・準々決勝

アルゼンチン 1−0 ベルギー

オランダ 0−0(PK4−3) コスタリカ

 

1ヶ月前の日本との親善試合が嘘のような躍進ぶりを見せていたコスタリカも準々決勝で散ってしまいましたが、それでもオランダを相手に120分間を零封した事実はあるわけで、オランダから13のオフサイドを奪った絶妙のラインコントロールとMOMに選ばれた守護神ナヴァスの奮闘ぶりは称賛に値します。残念な結果になりましたけど堂々と胸を張って帰国してほしいですね。

ベルギーは好チームではありましたけど先制されたゴールは運に見放されたような感じのものでしたし、本気モードに入ったアルゼンチンの堅守を破るにはもう1ピースの‘違い’が足りなかったいうところでしょうか(もっともそれがあればアメリカ戦でもっと楽できたでしょうけど)。一方、辛勝で24年ぶりの準決勝進出をはたしたアルゼンチンですが、前半で負傷交代したディ・マリアがこのままリタイアとなると攻撃陣が更に薄くなってしまいますね。もっとも相手のオランダとて暑い暑いサルヴァドールでPK戦までやった後にサンパウロへの長距離移動ですから・・・う〜ん、どっちが勝ってもなんかグダグダな試合になりそうな予感(苦笑)。

 

清々しかったコスタリカの「終わり方」【スポーツナビ:宇都宮徹壱 2014年7月6日】

コスタリカのおばちゃんと意気投合

 大会25日目。準々決勝2日目のこの日は、13時からブラジリアでアルゼンチン対ベルギーが、そして17時からサルバドールでオランダ対コスタリカが開催される。前日までフォルタレーザにいた私は、早朝の飛行機でサルバドールに移動。ブラジリアの試合は、ホテルの近くの食堂で昼食をとりながらテレビ観戦した。

 試合は、前半8分にゴンサロ・イグアインが決めた1点を守り切ったアルゼンチンが勝利し、見事に準決勝進出を決めた。アルゼンチンのベスト4入りは、実に24年ぶり。24年前といえば90年のワールドカップ(W杯)イタリア大会のことで、マラドーナが(ピークを少し過ぎていたとはいえ)全盛期だった時代だ。そのマラドーナが現役を退いて以降、何人もの「マラドーナの後継者」たちが現れては消えていったが、ついにリオネル・メッシが名実ともにマラドーナ越えを実現させようとしている。残り2試合。決勝の舞台マラカナンへの切符を懸けて戦う相手はオランダか、それともコスタリカか――。

 というわけで、本当は準々決勝最後の試合を取材しにサルバドールに来たわけだが、実は私はこの試合をスタジアムで見ることができない。記者席に入るためには、メディアチケットをFIFA(国際サッカー連盟)のメディアチャンネルから申請する必要があるのだが、不覚にもこのカードの申請に間に合わなかったのである(気づいた時には締め切りから2時間がたっていた)。ブラジリアでの取材に切り替えることも考えたが、エアチケットを確保できずにあえなく断念。さんざん迷った末、サルバドールのパブリックビューイング(PV)を取材することを思い立った。

 ところが、ここでまたしても誤算。PVが行われると聞いたペロウリーニョ広場に来てみると、あちこちに屋台はあるものの肝心の大型スクリーンが見当たらない。どうやらPVが行われるのは、セレソン(ブラジル代表)の試合だけのようだ。とはいえ、いずれの屋台でも客寄せのテレビ中継を見ることはできる。たまたま相席になったコスタリカ人のおばちゃんと意気投合し、一緒にコスタリカ代表を応援することと相成った。もっとも、おばちゃんは英語が分からないし、私はスペイン語が分からない。それでも、コスタリカがピンチになるたびに彼女が「アイヤイヤイヤ!」と叫ぶので、こちらもつられて「アイヤイヤイヤ!」と叫んでいるうちに、私たちはすっかり意気投合していた。

あらためてコスタリカの健闘に思うこと

 戦前の私の予想では、オランダが圧倒的な攻撃力でコスタリカに完勝するというものであった。しかし、この日もコスタリカの5バックは、オランダの圧倒的なポゼッションに対してしっかり対応していた。とりわけ感心したのが、その絶妙なラインコントロール。この試合でオランダは13のオフサイドを取られているが(コスタリカは2)、そのほとんどはコスタリカの最終ライン5人の息のあったラインコントロールによるものであった。巧みなオフサイドトラップに加えて、この試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれた守護神ケイラー・ナバスの活躍により、コスタリカは120分にわたり0−0の均衡を保ち続けることに成功する。最初は高みの見物を決め込んでいた地元の人々も、やがてナバスのファインセーブに歓声を上げるようになっていった。

 とはいえ、やはりオランダはコスタリカに比べてはるかに試合巧者であった。延長戦終了間際、ルイス・ファン・ハール監督はGKをヤスパー・シレッセンから第3GKのティム・クルルに交代。PK戦を見据えてのベンチワークであることは明らかだが、まさか高校選手権ではなくW杯でこのような交代を目にするとは思わなかった。シレッセンと比較して、クルルがどれだけPK戦に強いのかは手元にデータがないので、はっきりしたことは言えない。だが少なくとも、シレッセンよりも6センチ長身のクルルがゴールマウスに入ったことで、ずい分とゴールが小さく見えたのは事実だ。
 それと同時に、このタイミングでのGK交代が、コスタリカに心理的な揺さぶりをかけた可能性も十分に考えられる。結果としてクルルは、コスタリカ2番手のブライアン・ルイスと5番手のミチャエル・ウマニャのシュートを防ぎ、オランダの準決勝進出に大きく貢献した。

 試合後、敗れてなお誇らしげにほほ笑むコスタリカのおばちゃんに「アディオス(さようなら)」と別れを告げて帰途につく。途中、コスタリカの冒険の終わりについて考えた。終わってみれば、至極順当な結果であったといえよう。グループリーグ初戦、ウルグアイ相手に3ゴールを挙げたコスタリカであったが、このチームはやはり「ディフェンスありき」ゆえに、確実な勝利が求められる決勝トーナメントで勝ち切るには、おのずと限界はあったと思う(2試合連続PK戦というのは、その証左と言えよう)。しかしだからこそ、自分たちができることを愚直に精いっぱいやりきり、そして敗れたコスタリカの姿勢には、見ていて非常にすがすがしいものが感じられる。

 W杯とは、優勝チーム以外はいつか敗れる大会である。問題は、その敗れ方が納得できるものであったかどうか、ではないだろうか。多くの強豪国が、なかなか納得できずに大会を終える中、コスタリカの「終わり方」は、もはや1ミリの余力もないくらいの「やりきった感」が十分に伝わってきた。米国・タンパで行われた、日本との親善試合から1カ月。その間、ことあるごとにコスタリカの躍進ぶりに羨望(せんぼう)の目を向けてきたが、実のところわれわれが見習うべきは、そのすがすがしいまでの「終わり方」であったのかもしれない。

 

高まるオランダ23人のチームスピリット クルルのPKストップは必然の結果!?
【スポーツナビ:中田徹 2014年7月6日】

熾烈な競争を強いられたオランダ正GKの座

 ワールドカップ(W杯)欧州予選の10試合で、ルイ・ファン・ハール監督はティム・クルル、マールテン・ステケレンブルフ、ケネト・フェルメール、ミヘル・フォルム、ヤスパー・シレッセンと実に5人のGKを起用した。GKはチームの砦であり、本来なら1人の選手に信頼を与え、なるべく固定したいポジションだ。しかし、代表選手の招集条件として、「所属クラブでしっかり出場機会を得ており、コンディションがフィットしている選手」と挙げた指揮官は、GKにも競争を促した。

 そのうちの1人がクルルだった。彼は2012年9月7日に行われたW杯欧州予選の初戦、対トルコ戦に抜てきされ、2−0の白星スタートに貢献したものの、安定感を欠く場面もあり、今ひとつファン・ハール監督の信頼を掴みきれなかった。

 彼にとっても、ファン・ハール監督にとっても残念だったのは、このGKはビルドアップができないことだった。

 オランダの指導者の世界では、「1−4−3−3」「1−5−3−2」というフォーメーション表記を使うが、これはGKもサッカーをする構成要員の1人と考えられており、ビルドアップへの貢献が求められているからだ。オランダのセンターバック(CB)が2人で、相手が2トップを採用したら、GKもビルドアップに参加すれば3対2の数的優位ができるではないか……という考えは、オランダではごくごく普通のことで、そこに「1−4−3−3」というフォーメーション表記の妙がある。
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〔※写真:準々決勝のコスタリカ戦は、オランダのファン・ハール采配が的中。延長後半ロスタイムに投入されたクルルが、見事PKを2本ストップし試合を制した【写真:ロイター/アフロ】〕

クルルはオランダで“ラインGK”の第一人者

 ファン・ハール監督のフィロソフィーに合うGK、それはアヤックスのフェルメールだった。ビルドアップの起点として、彼ほど足下の技術があるGKは他にいないだろう。しかし、昨季半ば、アヤックスのフェルメールは、ヤスパー・シレッセンにレギュラーの座を奪われ、代表チームでのヒエラルキーも失った。

 オランダはフォルムを正GKとして予選終盤を戦い、W杯出場を決めた。消化試合となった最後のトルコとのアウェーゲームで、ファン・ハール監督はシレッセンを試し、フォルムとの競争を促した。この時点でクルルのポジションは、PSVアイントホーフェンのイェルーン・ズートと第3GKの座を争っていた。

 しかし、さすがにクルルは、プレミアリーグを舞台に戦っている(ニューカッスル所属)とあって、シュートを止める力がずば抜けていた。昨季のトッテナム・ホットスパー戦では1試合14セーブを記録している。“ラインGK(ゴールラインの上で力を発揮するGKの意)”としてなら、クルルはオランダ人の中で第一人者だった。W杯というトーナメントを前に、ファン・ハール監督はあえて自分のフィロソフィーからかけ離れた選手を第3GKに入れ、PK戦のスペシャリストとしてブラジルW杯準々決勝コスタリカ戦の延長後半ロスタイムに投入したのである。

万全だったオランダのコンディション

 それが当たった。クルルは見事に2本のPKを止めたのだ。決められた2本のPKも、クルルはしっかりコースを読んでいた。チームとして事前スカウトはバッチリだった。また、PK戦専用GKの存在は、ケイラー・ナバス擁するコスタリカの流れも止めた。

 ファン・ハール監督は、119分まで交代枠を1枚余らせた采配をこう振り返る。
「GKにはそれぞれ異なった特徴がある。ティム(・クルル)は手が一番長く、PKをストップするのに適しており、止めるのもうまい。それがうまくいかなかったら、私の交代策は失敗と見なされる。それがフットボールの世界というもの」

 こうして、とうとう今大会のオランダは23人のメンバー中、実に21人がプレーした事になる。大会前、メンバーが乏しく、実力では低いと目されていたオランダは、まさに総力戦で大会を勝ち抜いている。

 3人目の交代をクルルのために余らせた采配は、チームのコンディションが最高だからできた。PK戦を前に、ピッチの上でマッサージを受けていたのはコスタリカの選手だけで、オランダの選手たちは皆、ピッチの上に立って最後の戦いに備えていた。

「試合中、ロン・フラールは膝を腫らしていた。ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ロビン・ファン・ペルシーも力を使い切っていた。交代策は少しトリッキーだった」とファン・ハール監督は明かした。しかし、それ以上にコスタリカの選手の疲弊は明らかだった。

 また、クラース・ヤン・フンテラール投入によって点を強引に奪いに行くサッカーに転換したオランダだったが、120分のうちにゴールが決まっていたらDFヨエル・フェルトマンを投入する準備も終えていた。クルル抜てきの裏には、こうしたファン・ハール監督の並行作業があった。

23人で勝ち取ったベスト4進出

 アリエン・ロッベン、ディルク・カイト、ウェスレイ・スナイデルというベテランたちのスタミナは衰えず、最後の最後まで技術・走力・体力でコスタリカを圧倒していた。クルルの活躍も光ったが、その前の“投資”としてオランダはコンディションでコスタリカに差をつけ、PKの精度をしっかり保っていた。

 6番目以降のキッカー陣が若く、経験不足だったのが懸念されたが、ファン・ペルシー、ロッベン、スナイデル、カイトといった百戦錬磨のキッカーたちが全員決めた。さらに5番目のキッカーとしてフンテラールが控えていた。

 これまでオランダでは「PK戦は運」という声が多かったが、まるで高校サッカーのようなPK戦戦術を用いたファン・ハール監督によって、その考えも改まるかもしれない。

 オランダのチームスピリットは高まっている。まさかクルルがこの日のヒーローになるなんて誰も想像していなかっただろう。今大会、出場機会の無いMFヨルディ・クラシーにだって、もしかしたら第2GKのフォルムにだって残された2試合でピッチに立つ可能性が残っている。これほど23人の力を感じさせるチームは、なかなかそうない。

 

2014年W杯・準々決勝:フランス 0-1 ドイツ、ブラジル 2-1 コロンビア

リベリーを欠いたことで逆にリアリズムを追求して腹を括ることができたのか、大方の予想を覆してベスト8まで順当に勝ち上がってきたフランス。一方、前の試合ではアルジェリア(アルジェリア戦争で独立した国とはいえ皮肉なことに旧フランス領なんだな・苦笑)相手に延長戦までもつれこむ苦戦を強いられたドイツ。ユーロ通貨圏2大国による準々決勝の第1試合でしたが、ノイアー神が相変わらずの鉄壁神ぶりで攻守の要であるフンメルスが復帰したドイツには1点で充分だったようで、結果は下の写真が象徴してますね。
・・・ってか、平日に何故ベルリンじゃなくてリオのマラカナンにいたのさwww>メルケルおばさん
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2014年W杯・準々決勝

フランス 0−1 ドイツ

ブラジル 2−1 コロンビア

 

仏独対決は見応えある試合でしたが、フンメルスの復帰で攻守の歯車がスムーズに噛んで回ってたドイツの方が内容では一枚上手でしたね。
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そしてもう1つの試合・・・これまで先にゴールを奪うことで4連勝してきたコロンビアが初めて先制されて調子が狂ってしもうたんかな〜と。前半わずか7分、しかもCKでのマークミスという、点を取られた時間帯も失点の仕方も悪かったですね。それでもコロンビアが押していた時間帯も多かっただけに、ファルカオがいればなぁ〜とタラレバの1つは言いたくなりますね(苦笑)。

一方の勝ったブラジル。スニガがネイマールの腰椎を骨折させることになったプレーに注目がいきがちですが、ダーティーさではブラジルも他所のこと言えないですよね(苦笑)。開催国だから大目に見てもらってるだけなんでしょうけど、守備を固めて攻撃はタレント任せがフェリポンのスタイル(サポート役のパレイラも似たような感じか)とはいえ、今大会のセレソンはマリーシアを通り越してダーティーが目立って見苦しい。ボールを蹴ろうとしたGKにチャージかましてイエローくらったチアゴ・シウヴァのあのプレーなんか典型例ですが(これで累積で準決勝出場停止ですから主将のやることじゃない)。フェリポン&パレイラよりもペケルマンの方が良い仕事してるのは明らかだったので、上に上がるならコロンビアに行ってほしかったですが、今大会で初のベスト8進出を果たしたコロンビアが更に上を行くのには足りないものがまだいろいろとあったのかな、という気もしてます。

 

ポゼッションサッカーはまだ終わらない ドイツ・レーブ監督の施した戦術の微調整
【スポーツナビ:中野吉之伴 2014年7月5日】

 スペイン代表のグループリーグ敗退とともに「ポゼッションサッカー終えん」を強調する声が増えてきている。ポゼッションサッカーの代名詞だったバルセロナがチャンピオンズリーグ準々決勝で姿を消したことも、その論調を後押ししている。「カウンターサッカーの復活だ」と識者たちはオランダ代表やレアル・マドリーを絶賛しだした。

 そんな中、ポゼッションを基調とするサッカーのドイツ代表が準々決勝でフランス代表を1−0で下し、準決勝に駒を進めている。その秘密はどこにあるのか。ヒントは監督ヨアヒム・レーブが練り出した戦術のマイナーチェンジにあった。

論理的な戦術変更

 今大会、ドイツはサイドバック(SB)のポジションに本職がセンターバック(CB)の選手を起用してきた。その理由の一つに上げられるのが、ブラジルの気候。高温多湿での戦いが予想される今大会では前線から激しいプレスをかけるチームよりも、ある程度守備を固めてからショートカウンターを狙うチームが増えることが予想された。そうした相手に対して高い位置でポゼッションをすれば、カウンターの餌食になる危険が増す。とはいえ失ったボールをすぐに奪いに行く「ゲーゲンプレッシング」で即座にプレッシャーを掛けに行けば、スタミナの消耗が甚だしいだろう。大会を勝ち抜くには不確定要素が多すぎると分析した。またすでにトップチームは「ゲーゲンプレッシング」を狙ってくる相手に対して、どのようにそのプレスをかいくぐればいいのかの対応策も見いだしている。闇雲にプレッシャーを掛け続けるのは得策ではない。ポゼッションという既定路線を崩さずにカウンター対策をするのに、1対1に強い4人のCBを置いたのは論理的な帰結だといえる。

 では攻撃はどうだろうか。守備を固める相手に対していくらボールをキープしたところで攻撃の糸口は作れない。とはいえ闇雲なドリブルや縦パスでは、相手にボールをプレゼントするようなものだ。そこでキープ力と動き出しの良さが長所のトーマス・ミュラーを中心に、攻撃陣の頻繁なポジションチェンジで揺さぶりをかけるやり方を取った。ドイツ代表チーフスカウトのウルス・ジーゲンターラーは「ポゼッション率自体が大切なわけではない。ただボールを持たされているだけでは得点はできない。重要なのはボール・プログレッション(ボールの前進)」と強調していたが、彼らにとって大事なのは「ポゼッションをする」ことではなく、「どのようにポゼッションからボールを前に運ぶか」だ。理想だけを追い求めるだけでは、頂点にたどり着けないことを過去の大会で骨身に染みて知っている。現実的なスパイスを混ぜ込むことで結果を出している。決勝トーナメント1回戦でも素晴らしい抵抗を見せたアルジェリアに苦戦はしたが、相手の一瞬のスキを見逃さずに得点を取り、勝ち進んできた(2−1)。

フランス戦は戦い方をさらに変更

 一方のフランスは予選リーグ3連勝。結果だけではなく、内容的にも非常に充実していた。大会前はエース格のフランク・リベリがメンバー入りできずに不安視されていたが、逆にそれがチームとしてのまとまりを強めたようだ。大勝したスイス戦(5−2)を始め、秩序立った守備から積極的なプレスでボールを奪い、攻撃ではカリム・ベンゼマが抜群の動き出しでボールを引き出し、卓越したキープ力と決定力で圧倒的な存在感を示していた。決勝トーナメント1回戦のナイジェリア戦(2−0)でも、うまく試合をコントロールし、順当に勝ち上がってきた。

 そんな勢いのあるフランスを相手に、ドイツはがらりと戦い方を変えてきた。風邪でアルジェリア戦を欠場したマッツ・フンメルスが復帰したとはいえ、これまで通りの布陣ではビルドアップで相手のプレスを受け、前にボールを運べない事態が危惧された。そこで攻守両面で機能性を上げられるラームを右SBに、そして守備力だけではなく縦への推進力のあるサミ・ケディラ、ゲームコントロールに長けたバスティアン・シュバインシュタイガーをダブルボランチで起用。またフィジカルにも強いCBを置くフランスに対して、しっかりと攻撃のポイントを作れるミロスラフ・クローゼをFWに置いた。

フンメルスのゴールで勝利をつかむ

 序盤、ポゼッションの質が上がったドイツに対してフランスは中盤のスペースを注意深く埋めて対抗。しかしGKマヌエル・ノイアーも含めてポゼッションできるドイツには、これまでのようにプレスを掛けることができない。スピードに難があるジェローム・ボアテング、ベネディクト・ヘーベデスの裏のスペースをうまく狙って惜しいチャンスは作りだすが、復帰したフンメルスが最後のところで必ずブロック。一方、クローゼを起点に攻撃を組み立てるドイツは徐々にリズムをつかみだし、13分に先制に成功する。トニ・クロースのFKから、フンメルスが体をひねりながら素晴らしいヘディングシュートを決めた。

 フランスもベンゼマを中心に素早い攻撃でGKノイアーの牙城を脅かそうとするが、この日のドイツは非常にコンパクトで粘り強い守備でフランスの攻撃を跳ね返していく。何とか守備陣をくぐり抜けても、GKノイアーが好セーブでゴールを死守。1点リードのドイツは慌てずに相手が焦れて出てくるところを狙った。後半には相手守備のずれから生まれたスペースにミュラーやメスト・エジルらが抜け出して好機を演出。途中出場のアンドレ・シュールレが決めていれば、早々に試合を決定づけることができただろう。

対策通りに実践できるプレーインテリジェンス

 今のドイツ代表は4年前のような華麗なサッカーを披露しているわけではない。パーフェクトに機能していたコレクティブカウンターも見られていない。そのためドイツ国内では「このままでは優勝できない」という意見が大多数を占めている。確かに理論上は機能するはずの戦術でも、何が起こるか分からないピッチ上では、選手がその通りにプレーできないことも普通にある。しかしドイツ代表の選手は状況に応じてやるべきプレーを把握するプレーインテリジェンスを持ち合わせている。ここは体を張ってでも止めなければならない場面ではしっかりと相手を止め、無理をしても攻めなければならない場面ではリスクを冒してチャレンジする。理想だけを追い求めるのではなく、成熟したサッカーで結果を残すドイツ。今度こそタイトルに手が届くのだろうか。

 

ホセ・ペケルマンが見せた涙の意味 コロンビア国民の夢をかなえた知将
【スポーツナビ:藤坂ガルシア千鶴 2014年7月5日】

ドイツ大会では見せなかった涙

 ホセ・ペケルマンのあれほど悔しそうな表情を見たのは初めてだった。20年前、アルゼンチン代表の育成部門の責任者に抜擢(ばってき)されて以来、何度か間近で取材をさせてもらったが、その穏やかな人柄からいつも冷静で落ち着いていたホセが、歯を食いしばって天を見上げながら悔やむような、感情を顕にするところを見たことはなかった。

 私をもっと驚かせたのは、ブラジルの2点目が決まったあとに見せたその悔しそうな顔ではなく、試合後の様子だった。レポーターからの質問にひととおり答えたあと、「4500万人のコロンビア国民が今きっと拍手をしていると思います。彼らに何か言いたいことは」と聞かれると、口元を震わせ、泣き出したいのを我慢しながら「皆さんのことが大好きです」と一言だけ残し、涙と笑みを浮かべながらその場から立ち去ったのだ。

 ホセにとって最初のワールドカップ(W杯)となったのはアルゼンチン代表を率いていた2006年ドイツ大会。このときは、フアン・パブロ・ソリンやフアン・ロマン・リケルメ、エステバン・カンビアッソといった、ユース時代から育ててきた愛しい教え子たちを引き連れていたにも関わらず、敗退したときに涙を一切見せなかった。また、泣くのを堪えている様子さえなかった。
 それなのに、コロンビアの敗退が決まったあとで、ホセは涙を見せた。試合中に見せた悔しそうな表情よりも、ずっと意外な姿だった。
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〔※写真:ブラジルに敗れた際、涙を見せたコロンビアのペケルマン監督。06年のドイツ大会で敗れた際には流さなかった涙には理由があった【写真:ロイター/アフロ】〕

全選手のデータを集め最強チームを考える

 悔しかった理由はよく分かる。それについては、ホセ自身もはっきり説明している。
「(ブラジルに負けて)とても残念です。私たちはこの試合に勝てるという希望を抱いていましたが、セットプレーから2点を奪われてしまいました。この(W杯準々決勝の)ような試合でそれは決定的なことです。でも、これがサッカーというものなのですから仕方がありません」

 セットプレーで失点を許すことがホセにとってどれほど悔やまれるものなのかを理解してもらうためには、彼がどのようにチームを作り、準備をするかについて知ってもらう必要がある。

 ホセの下には、彼がアルゼンチンから連れてきた専属スタッフがいる。第1アシスタントのネストル・ロレンソと第2アシスタントのパブロ・ガラべージョは、ユース時代にアルヘンティノス・ジュニオルスでホセの指導を受けたことがある元教え子コンビ。
 ヘッドコーチのパトリシオ・カンプスは90年代にアルゼンチンリーグで活躍した元ストライカーで、フィジカル・コーチのエドゥアルド・ウルタスンは06年、当時アルゼンチン代表監督だったホセの下でW杯を体験。このほか、メンタルケアを担当する心理学者マルセロ・ロッフェ、そしてデータの収集と分析を担うガブリエル・ワイネルという人物がおり、いずれもホセが全面的な信頼を寄せるスタッフだ。

 ホセが2012年1月にコロンビア代表監督に就任した際、最初に行った仕事は、ワイネルに頼んでコロンビア国籍を持つプロ選手たちのデータを可能なかぎり集めることだった。代表歴を持つ選手たちから始まり、代表には招集されたことのない国内外のリーグ戦でプレーする選手の細かい情報を収集し、厳選された新鮮な食材で最高の料理を作り上げるように、その時点で最強のチームを構成するためのデータベースを作らせた。

 どのような選手なのか、どのポジションでプレーするか、どんなプレーを得意としているのか、何が苦手か、どれくらいの速さで走るのか、テクニックはどの程度か。個々の選手の細かい情報をそろえることにより、対戦相手のスタイルや試合会場の気候など、それぞれの状況に応じてベストの布陣を作るだけの準備を整えたのである。

悔やまれるセットプレーからの2失点

 次にワイネルは、W杯予選で対戦する相手のデータも収集し始めた。当然、どのようなプレースタイルを持ったチームなのかを知ることが目的だが、ワイネルが記録するデータは、そのチームの試合のビデオを見て戦術を分析するという程度に留まらない。相手チームの各選手の特徴や得意なプレー、速さ、セットプレーにおける動き方など、個々の細かい情報を徹底的に調べあげる。そこには控え選手のデータも含まれている。

 今回のW杯でもワイネルは対戦するチームの細かい情報を収集し、それを元にホセがコーチ陣と分析した上で、さまざまな展開に対応できる戦術をそれぞれのゲームのために用意してあった。それだけに、ブラジル戦でセットプレーから2点を奪われたことが悔しくてならなかったのだ。

 入念な準備をしていても、コーナーキックからチアゴ・シウバに先制点を許し、後半にはダビド・ルイスによる非の打ち所のない一撃に敵わなかった。「決定的」となった2失点は、ホセが「勝てると希望を抱いた相手」とコロンビアに大きな差をつけた。早い時間帯に決められた1点目が「大きな打撃」となったことも認めている。

 おそらくホセは、天を見上げたとき、「これがサッカーというものだ」と自分に言い聞かせながら、06年に母国アルゼンチンを率いて初めてのW杯に挑戦したときも、準々決勝で開催国(当時はドイツ)を前に敗れ去ったときのことを思い出したに違いない。

国民から絶大な信頼を受けたペケルマン

 では、どうしてホセは今回泣きそうになったのか。一体なぜ、06年大会では見られなかった瞳の中できらりと光る涙が、今回は流れ出そうになったのか。

 昨年10月、コロンビアがアルゼンチンに次ぐ2位の好成績で予選を通過してW杯出場を決めた際、選手たちが口々に「ホセはわれわれのメンタルを変えてくれた」と話していた。そこで私は、前述の心理学者ロッフェと連絡を取り、ほんの2年足らずの間にどうやってメンタルを変えたのか、詳しい話を聞きたいと依頼した。

 ロッフェは「それについては今は話せない」としながらも、コロンビアとアルゼンチンの違いを話してくれた。
「アルゼンチンでは、誰もがサッカーのことを知り尽くしていると思い込んでいる。コロンビアでは、誰もがサッカーのことをもっと学びたいという姿勢でいる」

 98年大会以来、ずっとW杯から遠ざかっていたコロンビアは、予選の途中からホセにすべてを託す大きな決意を下した。ロッフェの言う「学びたいという姿勢」から、サッカー協会の関係者を始め、メディアも一般のファンも、ホセのやり方を信じて後をついてきた。選手たちは、ホセとそのスタッフから出される的確な指示に忠実に従った。

 ホセにとってのコロンビアは、インデペンディエンテ・メデジンに所属していた28歳のとき、けがからプロ選手としてのキャリアを断念しなければならなかった苦い思い出と、愛妻マティルデとの間に娘バネッサを授かった幸せな思い出の両方が残る国。特別な思い入れのある国で、人々から多大な忠誠心を示されたホセは、自分の教えを素直に受け入れる従順で勤勉なコロンビアの人々の「W杯に行って、素晴らしいプレーを世界に見せたい」という夢をかなえたいと強く感じたのだ。

4500万人の国民への思いが詰まった涙

 ブラジルに負けて敗退が決まったあと、ホセはこう言った。

「私たちには夢がありました。その夢は、すべてかなったのです。ここで敗退するのは残念ですが、私たちは常に存在感を示し、良いイメージを残すことができたと思います。コロンビアの人々は、このチームを誇りにすることができるでしょう。私たちにとって、素晴らしいW杯でした」

 アルゼンチンで育成のエキスパートとして、多くの名選手を育ててきたホセ。今大会に出場しているアルゼンチン代表選手の大半は、ホセとそのスタッフによってユース代表デビューを果たしている。教え子たちが立派に育って晴れ舞台に立つ姿に感じる喜びは自己満足かもしれないが、一国の夢をかなえた達成感は自分だけのものではない。

 W杯でコロンビアを初のベスト8に導いた偉大なる監督として、同国のサッカー史に残る偉業を成し遂げた知将ホセ・ペケルマンが流した涙には、自分を信じた4500万人もの人々への感謝の気持ちが詰まっていたのだった。

 

ザックジャパン、グループリーグで敗退・・・2014年W杯・グループC:日本 1−4 コロンビア

まぁ前半終了直前に追いついたまではよかったんですけどね・・・

 

2014年ワールドカップ グループC

日本 1−4 コロンビア

ギリシャ 2−1 コートジボワール

 

グループCの結果は
 1位:コロンビア・・・・・・・世界ランキング8位[※2014年6月5日発表]
 2位:ギリシャ・・・・・・・・・世界ランキング12位
 3位:コートジボワール・・世界ランキング23位
 4位:日本・・・・・・・・・・・世界ランキング46位
となってコロンビアとギリシャが勝ち抜け。グループBのようにスペインが2連敗で早々に敗退が決まってしまったところはともかく、このグループに関しては結果的にFIFAランキング通りになりました、と。そう思えば諦めもつきますね(苦笑)。

日本が負けたことに苛ってないかと言われればそんなことはないのだけど、初戦で途中からドログバが出てきた時に急にアタフタしてしまった(冷静だったのって内田くらいじゃなかったか?)、自分たちのサッカーをしたいとショートパス主体の攻撃という“幻想”に拘りながら、それが封じられた時のための次善の策を中心選手たちが身に付けるのを怠ってきた(たしかに4年前の南ア大会でのドン引きサッカーやられたら進歩も何も無くなってしまうけれど)、守備に回った際のゾーンディフェンスとポジショニング・・・特に守備に関してはコロンビアとギリシャに比べて明らかに見劣りしてましたしね。更にはこれまでアジアカップや予選などを通じて先制されても何度となく逆転劇を見せてきたチームが、ワールドカップ本番になってメンタルがネガティブ思考に陥ってしまったらどうにもなりませんて。結果、前線で踏ん張れずに中盤と左サイドがポコポコ抜かれたり、今日の試合でPKを献上した今野のように軽率なミスを繰り返したり、FWは決定力不足を露呈したり・・・大久保が試合後のコメントで「このチームに入って思ったのは、1人ひとりの距離が遠い」と率直に語っていたのが今大会でのチームの在り方を見る上でとても印象深かったです。

ザックジャパンはたしかに歴代最強でした。でも運に恵まれるとか何とかを抜きに素のレベルを客観視したら、結局はまだまだこんなもんなんでしょうね。個の実力、技術・フォジカル・戦術眼が今の面子でも全体的に足りてない――一番わかりやすい例は毎年のようにチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場している内田のシャルケと日本代表での輝き具合の違い――のが改めて顕然化しただけでも意義はあったように思います。
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ファンはのんびり他の試合を楽しんでいればいいけれど、代表はそうもいかないでしょうからさっそくリスタート開始ですかね。監督人事に目が集まりやすいですけど、選手たちも4年後のことを考えたら内田と吉田を残して他はガラガラポンするくらいでいいのではないでしょうか。GKも川島より一回り若い年代が台頭してこないといけないし、CBはヴィッセルの岩波拓也とアントラーズの植田直通が出てきてほしい。SBはブンデスにいるW酒井が長友を追い越さないといけないし、中盤も遠藤と長谷部は代表引退で本田も本人は4年後もとか言ってるけど今のプレースタイルを変えないと世界レベルで通用しなくなってきてるのは明らかなので、山口や柴崎の年代からドンドン出てきてほしいところ。FWは・・・やっぱり誰か“エース”になってくれないとですかね(笑)。今回予備登録だったセレッソの南野拓実や、トリニータの坂井大将と共にトレーニングメンバーとして代表に帯同していたグランパスの杉森考起あたりが上の年代を突き上げるくらいやってもらって、その中から‘誰か’が出てくるといいですね。

最後になりましたが、ザッケローニ監督とイタリア人スタッフの方々は4年間本当にお疲れさまでした。たくさんの夢を見せてもらえて、東日本大震災の後もずっと変わりなく日本と友情を共にしてくれて、とても感謝しています。ありがとうございました。

 

ザック「間違ったアプローチだった」 W杯 コロンビア戦後監督会見
【スポーツナビ 2014年6月25日】

 サッカー日本代表は25日(日本時間)、ワールドカップ(W杯)ブラジル大会のグループリーグ第3戦でコロンビア代表と対戦。日本は前半17分に先制を許したものの、前半アディショナルタイムに岡崎慎司のゴールで同点に追いつく。しかし、攻めに出た後半にカウンターから3失点し、コロンビアに1−4の完敗を喫した。この結果、3戦1分け2敗となり、グループリーグ敗退が決まった。

 試合後、日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は、今大会について、「コンフェデレーションズ(コンフェデ杯)、W杯では間違ったアプローチを取ってしまった。戦術面ではなく、精神面を変えるべきだった」とグループリーグ敗退の理由を述べた。

 また代表監督の進退については「これから日本に帰り、(サッカー協会の)幹部の方と話してから決める。このことはチーム内で相談してから公表すべきだと思う」と、JFAとの話し合いをしてから決めるとしている。

戦術面より精神面で反省点

――この3試合で敗退が決まった率直な感想を。そして今後も日本代表監督を続けるか?

 後の質問に関しては、これから日本に帰り、(サッカー協会の)幹部の方と話してから決める。このことはチーム内で相談してから公表すべきだと思う。

 大会を通しての感想だが、敗退したということで(日本に)帰らないといけない。解決すべき課題が、1戦目、2戦目にあり、その課題に関しては3戦目に応えたつもり。チームは先に進む可能性があったので全力を尽くしたが、グループCで最強のチーム(コロンビア)に対して、応えるのはうまくいかなかった。

 しかし全体的に見ると、かなり良くプレーでき、特に前半は良くプレーできた。強力な対戦相手であっても、われわれが通常しているような濃密なプレーができれば、勝つ可能性があったことを示すことができた。

――ここ数年間で何かを変えようとしたか?

 この4年間、同じ選択肢を選んでいて、変えることはなかった。私は適切なプレーヤーを選んで、プレーの内容を濃くすることができた。国際試合の中でも、どんどん育っていく選手を選んだ。また国際的な環境の中で、彼らも育ってくれた。
 ただ、ここ2、3試合ではそれを示すことができなかった。コンフェデレーションズ(コンフェデ杯)、W杯では間違ったアプローチを取ってしまった。もし何かを変える必要があったとしたら、戦術面ではなく、精神面を変えるべきだった。

――この試合における、コロンビア代表の評価は?

 大会前に持っていた印象と同じ。ビッグチームであり、才能をそろえている。(グループリーグを勝ち上がる)それだけの資格があった。(得点の)機会があれば逸せず、ミスがない。コロンビアは優秀な選手をそろえているので、先に進むと思う。

体力的にもっとできたことはあった

――今日の試合は、3試合の中で一番攻撃がよかった。しかし、1人の突破で周囲のサポートがなかった。3試合を通して、運動量やスピード、インテンシティー(プレー強度)が足りなかったのは、調整に問題があったからか?(田村修一/フリーランス)

 いくつかの要因があり、その組み合わせでこうなったので、アプローチが良くなかった。私もメンバーも、技術的にも戦術的にも、良くプレーできると信じていた。しかし体力的にはもっとできたのではないかと思う。

――最後まで調子が上がらなかった本田(圭佑)を使い続けた理由は?

 その点については同意しない。本田は非常に良くプレーした。チームの中で最もフィジカル勝負ができており、ボールをキープできていた。常に2、3人の相手がいたので、ほかの選手にスペースを与えることもできた。チームに貢献できたと思う。
 私は各選手が個人でどれぐらいできたかというより、チームにどう貢献したかを見ている。

プレーヤー間の距離に問題があった

――今日も後半からハメス・ロドリゲスが出てきたり、第1戦もドログバが出てきたり、交代選手に対してはどのような対応をするようにしたか?(大住良之/フリーランス)

 ハメス・ロドリゲスに関しては、われわれが攻撃しないといけないところで、スペースを与えてしまった。彼らはそれを非常に良く活用していた。われわれとしては、この試合に勝たねばならなかったので、代替策はなかった。

――この大会の誤算は何だったか? 攻撃的なサッカーを貫くことを目指してた感想は?

 アプローチが誤っていたこと。その結果、質の高いプレーができなかった。
 それぞれの試合で同じような形で戦うとは考えていなかった。全体的な計画では、各試合で違うプレーをしようとしていた。速い攻撃をしようと考えていた。今日の試合の後半で何とかそれをしようとしていたが、残念ながら遅かった。

――W杯とコンフェデ杯でアプローチが間違っていたと話していたが、どのようなアプローチをしたかったのか?

 もっと対戦相手に応じた形で、攻撃すべきだった。もっとボールを支配すべきだった。それがチームの考えで、それを元に練習をしてきたが、われわれの頭にあることをもっと行動に移すべきだった。もっと速くパスを出して、適切な距離でボールを取り戻すこと、そしてまた攻撃すること。それが試合でできなかった。

――守備については3試合で6失点。4年間、チームを作る上で守備の面で足りなかったことは何か? 将来日本が、守備面で強くなるには何が必要か?(原田公樹/フリーランス)

 ひとつのポジションを作るともうひとつのポジションが弱くなることもあるので、バランスを取らないといけない。われわれの守備力はスピードを元にして作り上げた。11人が守備も攻撃もできるようにし、それがうまく機能すれば、うまくプレーができていた。

 もちろん、何点か(奪われること)は覚悟しないといけない。そのような考えでチームを作り、多くの試合で実践したが、この戦略を元によい成績を収めてきた。ただ残念ながらブラジルでは、それができなかった。

 プレーヤー間の距離があり、守備以上の問題があった。距離があることによって、MFが問題を抱えることになる。チームとしては、一緒に攻撃し、一緒に守るというコンセプトがあった。
 ボールを失ったときには、みんなで取り戻す。人によってはできたが、この4年間、この考えを元にプレーをしてきた。チームには勇気付けるように、「もっと大胆に攻撃しろ」「強いチームにも勇気を持ってプレーしないといけない」と言ってきた。

 

ペケルマン「自信をつけることができた」 試合後、コロンビア監督会見
【スポーツナビ 2014年6月25日】

 サッカー日本代表は25日(日本時間、以下同)、ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会の第3戦となるコロンビア代表戦に臨み、1−4で敗れた。日本はこの結果、1分け2敗の最下位に終わり、グループリーグ敗退となった。日本は前半17分に先制を許したものの、アディショナルタイムに岡崎慎司のゴールで同点に追いつく。しかし、攻めに出た後半にカウンターから3失点し、コロンビアに完敗を喫した。

 試合後、コロンビア代表のホセ・ペケルマン監督が会見に臨み、「3試合勝つことができたので、われわれはさらに自信をつけることができた」とグループリーグを3連勝で終えたチームに満足感を示した。

 また、日本代表については、「常に、日本は素晴らしいチームだと思っていたし、そう言ってきている」と話し、「W杯では期待していた結果でなくても、チームが悪いわけではない」と日本の戦いを称えた。

 コロンビアは29日、ラウンド16でグループDを2位で通過したウルグアイと対戦する。

この試合に集中して、全力でプレーした

――3試合で勝ち点9という実績をどう評価するか?

 とても喜んでいる。難しい試合を勝ち取ることができた。われわれが予想した通りの苦しい試合だった。しかし、3試合勝つことができたので、われわれはさらに自信をつけることができた。また今日、コロンビアは1つのチームであることを見せた。非常にまとまったチームだ。われわれがどのようなプレーができるのかを、ピッチ上で見せられて満足だ。このようなチームを率いることができるのはうれしいことだ。

――グループのアイデンティティーを維持するために何を心掛けているのか? 監督が持っている計画はどのようなものか?

 まず、W杯でプレーするためには準備が必要だ。選手は非常にインテンシティー(プレー強度)のあるプレーをしなければならないことを分かっている。毎試合条件は違っているが、集中力が必要なこと、細かなことに気をつけてプレーしなければならないし、そしてチームとして皆で一緒にプレーしなければならない。そしてアイデンティティーを維持して、プレーレベルも維持しなければならないし、時には落ち着かないといけない。

 ピッチで起こることだけを見ているのだろうが、ピッチ外でよく練習している選手たちもいる。このチームにはまだプレーしていない選手もいるが、彼らは気を悪くしていないし、常にまじめに練習している。いつプレーの機会を与えても、ちゃんとそれに応えられるような準備はしている。これは簡単なことではないが、選手たちはこの仕組を理解しているし、3試合で何ができるのかを見せてきた。

――ウルグアイ戦に向け、どのような懸念があるか? また、どのような有利な点があると考えるか?

 数分前まで、われわれは次の対戦相手のことは考えていなかった。この試合に集中して、すべてのエネルギーをこの試合に注いでいたのだから。われわれはすでに2試合勝ったからといってリラックスしてよいのではなく、全力でプレーした。相手(日本)は試合に勝たないといけない状況だったので、われわれにとっては非常に強力な相手だった。そんな相手に勝てたことを喜んでいる。

 ウルグアイ戦に向けて何をしなければならないかは考えないといけないが、相手は南米でも、世界でも最も強力なチームのひとつだということは知っている。ウルグアイは常に良いプレーを見せている。非常に良いサッカーの歴史を持ち、経験豊かな選手も多く、諦めない、気を緩めないという強みがある。非常に一貫性のあるチームで幅広い経験を持っている。

――ピッチ状態はプレーに影響を与えたか? また多くのサポーターがおり、ホームのような雰囲気だったが?

 最も重要なことは、選手たちがこのような大会で何をしなければならないか理解することだ。非常に経験豊かなチームがそろっていることは知っている。われわれはまだ若いし、成長過程にあるチームだ。そういう意味でわれわれは今の状態に満足している。得点を挙げることもできているし、バランスも失っていない。難しい時期、難しい相手にプレーすることもあったが、それを克服してきたのは重要なことだ。良いプレーを見せているのであれば、期待を上回るプレーをしていると言えるので、この経験には満足している。ウルグアイは難しい相手だと思う。

日本は素晴らしいチーム

――後半から出場したハメス・ロドリゲスのプレーについてコメントを。それとウルグアイ戦で(ルイス・)スアレスは出場してくると思うか?

 ハメス・ロドリゲスは、われわれが期待したプレーを見せてくれた。このW杯の最初から、彼はフィジカル的にも良く、多くを期待できる状態であることが分かった。スアレスについては、何が起こったのか分かっていない。どうなるのか見てみよう。

――ファリド・モンドラゴンについて何かコメントが欲しい。最年長出場記録を更新したが彼のチーム内での役割は?

 彼は重要なプレーヤーだったし、代表に加わってからこれまで重要な役割を果たしてきた。非常に実績を残している。ゴールは彼がいると安全だと言われるくらいなのだから。他のGKもきっちりと守っているが、国を代表してゴールを守らなければならないので、経験のあるプレーヤーが必要だ。他の選手は若いので、モンドラゴンは経験を伝えることができる。数分の出場にはなったが、彼をピッチに送り出すことができた。W杯での最高齢プレーヤーの記録を残したかったので今日はプレーしてもらった。

――今日の試合で、日本をどのように見たか? 日本のプレーヤーでスポットを当てたい選手はいるか?

 私は常に、日本は素晴らしいチームだと思っていたし、そう言ってきている。アジアカップも見たが、公式戦でいいプレーをしているし、経験豊かな選手もいる。欧州で実績を挙げている選手も何人かいる。問題はおそらく、必要な、期待していた結果が得られなかったことだと思う。今日はいい試合をしたし、チャンスはあったが得点に結び付けられなかった。残念ながら決勝トーナメントには進むことができなかったが、私の日本に対する見方は変わらない、非常に良いチームだ。若いプレーヤー、長谷部(誠)もいいし、GK(川島永嗣)も本田(圭佑)もいい。そして速いストライカーがいる。岡崎(慎司)は危険なプレーヤーだし、大久保(嘉人)や大迫(勇也)もいる。1人だけを選ぶことはできないので、多くのプレーヤーの名前を挙げなければならない。W杯では、期待していた結果でなくても、チームが悪いわけではない。

――コロンビアの決勝トーナメント進出は1990年のW杯イタリア大会と並んで最高成績なわけだが、イタリアを超えることはできると思うか?

 私は予測するのは好きではない。あの時は素晴らしい、特別な時を過ごし、コロンビアができることを見せた。今のチームも良くプレーしていて、長年のブランクを経てW杯に出場できている。だが、われわれは何をやっているかということに、より集中しなければならない。私がとても大切だと思うのは、若い選手が多いということだ。W杯に若い選手が多いことは良いことだと思う。

 

コロンビア戦後、選手コメント【スポーツナビ 2014年6月25日】

 サッカー日本代表は25日(日本時間)、ワールドカップ・ブラジル大会の第3戦となるコロンビア代表戦に臨み、1−4で敗れた。日本はこの結果、1分け2敗の最下位に終わり、グループリーグ敗退となった。

 日本は17分に先制を許したものの、前半アディショナルタイムに岡崎慎司のゴールで同点に追いつく。しかし、攻めに出た後半にカウンターから3失点し、コロンビアに完敗を喫した。

 試合後、本田圭佑は「これが現実なんでね。非常にみじめですけど、すべてを受け入れてまた明日から進んでいかないといけない」と悔しさを表しつつ、前を向いた。また4年後のW杯・ロシア大会については「初めから次も行くつもりでしたので、当然ながら目指したいと思います」と、今後の意向を明言した。

 以下は、試合後の選手たちのコメント。

本田圭佑(ミラン/イタリア)

「非常にみじめだが、これが現実」

(何が足りなかった?)話すとキリがないですけど、細かなところの積み重ねで向こうの方が自分たちを上回っていたと思うし、(日本が)チャンスを決めることができずに、向こうはチャンスを決めたと。そこに総括されると思います。

(4年間、取り組んでいた右からのドリブルでアシストを記録したが、良さが出たのでは?)そうですね。今は試合を振り返って、細かいこともありますけど、自分が言ったことに対しての責任もありますし……。とにかくこれが現実なんでね。非常にみじめですけど、すべてを受け入れてまた明日から進んで行かないといけない。僕が言うことに当然ながら信用も下がるし、また1からというか、この悔しさを生かすしかないのかなと。ただ自分にはサッカーしかない。自分らしくやっていくしかやり方を知らないし……。これからもというか、明日からですね。また前を向いて、進んで行きたいなと思います。

(集大成ということだったが、今大会で代表を引退する考えは?)いえ、初めから次(4年後)も行くつもりでしたので、当然ながら目指したいと思います。

香川真司(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)

「これで終わりだと思うとすごく寂しい」

 今、すぐ振り返るのはなかなか難しいです。(初めてのW杯だったが?)勝つことを目標にやってきて、でも1勝もできなくて、それが結果として残ったので、ただ悔しいです。(交代でベンチに下がった時、座り込んでいたが?)悔しかったし、これで終わりだと思うとすごく寂しかった。

(出しきれなかった?)結果的にそうだし、個人的にはそういう思いがあります。(大会の難しさがあった?)難しさはないけれど、こういう戦いで勝ち抜いていくために必要なことを感じた。こういう4年に1度の大会で自分たちのサッカーをする、それを出しきるメンタリティーだったり、チームとしての強さというのを初戦から痛感させられたし、やはり経験を含めて物足りなかった。

(次の4年は?)分からないけれど、とりあえず自分のキャリアは続くし、でもこのW杯に懸けてやってきたので、今はなかなか気持ちの切り替えが難しいです。自分の中でまだ整理ができていないから分からないけれど、やはり自分たちは前に出て、勇気を持って攻守において戦わないと。それを90分やり続けないとこういう舞台では勝てない。個々の能力という意味では改めて感じました。

岡崎慎司(マインツ05/ドイツ)

「4年間やってきたことに打ちひしがれた」

 今は何も考えられないです。自分たちは最後まで攻撃に行ったけれど、1−4というのはすごく考えさせられるし、力不足といえばそれまでだけど……今はそれしか考えつかないです。自分たちの力がなかったし、ギリシャが最後に2−1まで持って行ったというのは、何か皮肉というか自分たちがやりたかったことをやられて悔しさしかないし、整理できないです。

(ハーフタイムに途中経過は知っていた?)(情報は)あった。1−1で点を取りに行こうと、コートジボワールもそのままでは終わらないし、とにかく1点でも多く取ろうというのがありました。前半同様に後半も積極的に行こうと話しました。

(前半の出来は?)自分のせいで失点したので、それを取り返せたのは気持ち的にすごく大きかったですし、入りからとことん裏を狙い続けたのは良かった。トシ君(青山敏弘)が(自分の動きを)見てくれていたので、それは今までと違った。それに比例してみんなも自分を見てくれて、自分の良さは出たと思う。でも総合力的に自分に足りないものがすごくあったと思うし、力がないと感じた大会でした。もっと何かできただろうと思いました。

(裏へのパスが多かったが共通理解があった?)自分が足元で受けてもそこで打開できるわけではないし、相手も(プレスに)来ていたので。7番(パブロ・アルメロ)とかは足が速くなかったので、自分が走らせた方が絶対にチャンスになると思った。そこの勝負かなと試合中から思っていました。

(4年後は想像できる?)今は想像がつかないです。この場所でどうやったら勝てたんだろうというのを引きずっているし、勝っていれば自分たちが(決勝トーナメントに)行けていたのにという未練もあるし、悔しい。4年間やってきたことに対し、打ちひしがれた感じがあります。

大久保嘉人(川崎フロンターレ)

「1人ひとりの距離が遠い」

(警戒している選手たちにやられたが)自分たちはマッチアップしてないから分からないですけど、見ている感じではすごく簡単にやられていたので、あんなに簡単にやられるんだと見ていましたね。うまく対応できていなかったのかなと思いました。

(1トップに入って、相手をかき回していたが)とりあえず裏を狙ってDFラインを下げる。そこに何本か出してくれて、みんなが前掛かりになっているのも感じられたし、ボールを持ったら「とりあえず前を見て」と話していました。あと、仕掛けたときに、人がいない場面がすごくあって、もったいないなと思いましたね。このチームに入って思ったのは、1人ひとりの距離が遠い。そうなるとでかい相手のフィジカルで、2人に来られて、難しくなったし、そこはすごく感じていました。

(3試合目になって、ようやく良さが出てきたように見えたが)みんなが前に行こうとしていましたし、回そうとすればおのずと1人ひとりの力は出ると思います。それを1戦目、2戦目に出せなかったのは残念でした。(悔やまれるのはもっと早くチームに加わっていればということ?)それはずっと思っていますよ。ずっと思っていますけど、言われていることは分かっていましたし、終わったことです。

長谷部誠(ニュルンベルク/ドイツ)

「強豪国はサッカーが文化として根付いている」

 前半は非常にいい形だったと思います。後半も前半のようにとは話していました。もちろん相手も修正してきて、出てくるようになって(難しくなった)。10番(ハメス・ロドリゲス)が真ん中にいたり、サイドに開いたり、どんどんボールに触って、彼が起点になっていた。2点目も彼の所からだし。ボールを持っているときに、もっと厳しくいかなければいけなかった。

(2点目を取られてがっくりときた?)まだ早い時間帯でしたし、とにかく顔を上げて、自分たちが2点目を入れるまでのサッカーを考えれば、全然逆転するチャンスも、力もあったと思います。とにかく顔を上げてやろうという話はしました。

(そもそもどういう狙いを持って今日の試合に入った?)僕らは勝たなければいけない状況でしたし、とにかく勝ちに一番近づくためには、自分たちのサッカーを出すことだというのはみんなが分かっていました。それは監督も選手も全員同じ方向を向いてやっていました。1戦目は多少引いてしまった部分がある。2戦目は、前半は出ていったけれど、相手が10人になってから難しいゲームになった。とにかく自分たちから前から行こうという話をしていました。いつも以上に、前への意識というのは強く持ってやれていたと思います。

(試合後に涙が浮かんでいるようだったが、この4年間が終わった今の心境は?)4年間やってきて、その中で結果を残せなかったことは、自分がこのチームのキャプテンとしてやってきて、責任を感じています。(目指す方向は間違っていないと今でも思えるか?)僕の個人的な意見で言わせてもらえば、間違っていないと思うし、これは継続していくべきものだと思います。ただ、結局結果が出ていないわけですから、説得力の部分ではね……。どちらかと言うと、専門家のみなさんに評価してもらって、これからの日本のサッカーにつなげていくべきだと思います。結果が出れば続けていくという形になるとは思うんですけど、結果が出なかった分どうやって考えていくか(が大切)。それは僕ら自身にも大事なことだと思います。

 あと今大会を通じて思ったのは、サッカーは世界の文化であって、その中でも特に強豪国と呼ばれる国は、サッカーが文化として根付いている。(そういった国は)選手が成長するのは大前提ですけれど、やはりW杯の一時だけではなく日頃から、代表だけではなく日本サッカー全体を日本中の人たちに厳しい目で見てもらって、日本のサッカーが文化として作り上げられていくと思う。そうしていくことも重要だと思います。メディアのみなさんともお互いに成長していければと思います。

今野泰幸(ガンバ大阪)

「後ろが我慢しきれなかった」

(最初の先制点の場面が痛かった?)PKを与えたプレーもそうだし、後半もそうだし、やっぱり後ろが我慢しきれなかったですよね。(個の違い?)個もそうだし、組織的にもあの10番(ハメス・ロドリゲス)が入ってからの後半は、やっぱり前からはめていこうとしても1人かわされてスルーパスとか、けっこう自由に裏を狙われた。それで自分たちにとっても怖い攻撃をされていたんで、その中でやっぱり我慢しきれなかった。

(相手の圧力は感じていた?)そうですね。やっぱりスピーディーだし、個でも1人でかわせる能力がある。動き出しもいいし、前半から圧力は感じていました。(ラインを高くして前へ行く姿勢は見せたが?)相手が4−2−3−1で来ると思っていたし、そう来たとしてもどんどん前から前からはめて、とにかく勝たなくちゃいけないからプレッシャーをかけていこうという話はしていたんですけど、相手も2トップできたし、その中でボールも収められた。(PKを取られたシーンはちょっと厳しいと感じたが?)覚悟してというか、自分の中では自分のタイミングで「取れた、行ける」と思った。自分ではボールに行ったと思っているけど、映像を見てみないと分からないです。

内田篤人(シャルケ04/ドイツ)

「やっぱり世界は広いです」

(こういう結果になったが?)どうしても自分たちが勝たなければいけないのは分かっていましたし、前半ギリシャが勝っているという情報も入っていました。その中で勝ちきれない。バランスを崩して前に行って、こういうサッカーになっちゃったんじゃないですかね。(前半に岡崎が1点取って、1−1になったところまでは納得できる内容だった?)いや、やっぱりこういう試合で先に失点してはいけないというのは分かっていましたし。まあ、ラッキーかな、前半で1−1に追いつけたのは。

(ハーフタイムに話したことは、バランスに気を付けようという感じ?)バランスは監督が言っていましたね。はい。(追いついてまた取られて、相手がまた固めてきていたが?)サイドから僕自身も何回か(大久保)嘉人さんに合わせたシーンもありましたし、FKやセットプレーが多少あったんでね。こういう大会ではセットプレーで(点を)取れたら楽なんですけど。CK含め。あとは、前に行った分後ろにかかる負担はだいぶありましたし、向こうのペナルティーエリア内で仕事ができる選手が、僕らが上がった後ろをつねに狙っていました。向こうの戦略通りという気もしますけどね。

(先制点を取られて)ちょっとガクッと来た部分はありましたね。サッカーの試合なんて、そんなことばっかりですから。前半のうちに追い付けたのは本当に良かったと思います。(日本のサッカー全体としては進化している?)進歩しているとは思いますし、いろいろな選手が海外に行ってやれているのもそうだと思います。なんか世界は近いけど、広いなって感覚があります。それは別にこの大会で思ったことじゃないけれど、ドイツに行って最初に思ったこともそうですし。(世界は)なんか近くなったような気もするけれど、やっぱり広いですよ、世界は。

青山敏弘(サンフレッチェ広島)

「すべてにおいて自分のレベルが低い」

 すべてにおいて自分のレベルが低いというのは感じたんで、ここからこれをどうするか、何をするかですね。(もっとうまくなれる?)ここを目指してずっとやってきたけど、目指しているだけじゃダメなんだなと。結果を出すことを目指さないとダメなんだなと感じました。すべては自分を高めるしかないんですけど、どこを目標にするかというのがね、今まで甘かったなと。

(それが分かったことが大きい?)……そうするしかないし、結果を出していくしかないんで、その努力の内容というのは、こだわってやらないといけないと思います。Jリーガーとして、期待してくれたJリーガーのみなさんや、応援してくれるファンやそういった人たちに応えられなかったのが申し訳ないです。

吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)

「GKを代えられて屈辱的な思い」

 いつも言っていることですが、結果がすべてなので、勝てなかったこと、GLを突破できなかったことが現実。悔しいけれど受け止めなければならない。悔しいです。

(世界との差について)失点の3つ目と4つ目は、僕らが前掛かりになったので。それ以前に勝たないといけない試合だったし、相手があれだけメンバーを変えてきて崩せなかったほうが悔しい。GKを代えられて屈辱的な思いもしましたけど、それを受け止めるしかない。(4年後について)負けることは考えていなかったので、先のことは考えられない。(今回の23人について)日本らしさが出ていたいいチームだと思うし、僕は好きだったので1試合でも多く彼らとやりたかった。残念です。

(自分たちのサッカーがある程度できても勝ちきれなかったのは)今日みたいな勢いをもってプレーしたかった。(コンディションは)個人的には満足しています。(今までやってきたことは間違っていなかったか)うーん、間違っていたかどうかは結果がすべて。結果だけ見れば間違っていたのかもしれない。でも個人的には可能性のあるサッカーだったと思っています。

(守備的にやっていれば結果は違っていたか)監督をはじめ僕らが攻撃的なサッカーをやろうとしていた中での結果なので、そこに不満はないです。(このサッカーを続けるべきか)次に新しい監督が来て、また新しい代表になると思うので、すべては監督次第だし、僕らも全員がスタートラインなので、また頑張っていきたいです。

遠藤保仁(ガンバ大阪)

「現役である限り常に代表は入りたい」

 勝ちが必要だったので、ある程度後半はリスクを冒してもしょうがないかなという感じはしましたし、前半も何度かいいところまで行ったと思うので、前半は最後によく追い付きましたし、後半前掛かりになり過ぎないようにと思いながら見ていました。

(終わった瞬間は?)W杯で勝つことの難しさを改めて肌で感じましたし、ここまでの4年間築き上げてきたものは、無駄にはしたくなかったですけど、終わったことはしょうがないかなというのもあります。4年間がすべて無駄だったとも思わない。W杯ではなかなか自分たちの形を出せなかったですけど、日本の力も世界に示せた4年間だったと思うので、それをW杯で結果として残せれば一番良かったと思います。

(3回出場したW杯の中で、日本が一番力を出しきったのは?)やりたいサッカーを、どういう相手に対してもトライするのは、今回のW杯が一番強かったと思います。実際3試合で2点しか取れていないので、自分たちの力を出しきれたかどうかは、まだまだ出せなかったんじゃないかなと思いますけど、全員がいいW杯にするために、ここまで全力を尽くしてきたと思うので、それはそれでこのチームのひとつのいい部分でもあります。ただ結果だけ見れば勝ち点1という残念な結果に終わっているので、まだまだ力が足りなかったかなって思います。

(その方向性について疑問を感じることはない?)いや、特にないですよ。監督が4年間築き上げてきた攻撃的なスタイルを、それが別に自分たちにとって悪いことでもないですし、日本の特長、選手の特長を考えれば、極力ボールを支配しながら攻撃的に行くというのは、間違いなく日本にとっていい部分だと思うので、不満はまったくないです。

(次のW杯への思い、代表への思いは変わらず?)僕は現役である限りは、カズさん(三浦知良)じゃないですけど、常に代表というのは入りたいですし、目標でもあります。代表の試合は何試合経験しても、何事にも代えがたいものもあるので、常に目標を高く持ってやりたいなと思っていますし、まだまだ努力して、もっと良い選手になれるように努力したいと思います。

 

「ドルトムントの夜」を思い出した敗戦【スポーツナビ:宇都宮徹壱 2014年6月25日】

「われわれはこの大会を楽しむ必要がある」

 ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の13日目。今日は13時(現地時間。以下同)からグループCのイタリア対ウルグアイ(@ナタール)とコスタリカ対イングランド(@ベロオリゾンテ)、そして16時からは日本対コロンビア(@クイアバ)、17時からギリシャ対コートジボワール(@フォルタレーザ)が行われる。以前にもお伝えした通り、クイアバはフォルタレーザよりマイナス1時間の時差があるため、結果として同時刻でのキックオフとなる。

 すでに決勝トーナメント進出を決めているのは、コスタリカとコロンビア。2敗したイングランドを除いて、残りの5チームにチャンスが残っているため、いずれの試合もスリリングな展開となるはずだ。そして、ここクイアバで行われる日本対コロンビアも──。
 キックオフ3時間半前に、会場のアレナ・パンタナールに到着。会場周辺は、すでに多くのコロンビア人サポーターで埋め尽くされている。その表情は、いずれも自信と喜びに満ちていた。ふと、前日会見でコロンビア代表のホセ・ペケルマン監督が「われわれはこの大会を楽しむ必要がある」とコメントしたことを思い出す。何気ないフレーズだが、彼らが味わってきた挫折と復活の20年間を思えば、深くうなずくしかない。

 今から20年前の1994年のW杯米国大会。“サッカーの王様”ペレをして「今大会の優勝候補」と言わしめた当時のコロンビア代表は、カルロス・バルデラマ、ファウスティーノ・アスプリージャ、フレディ・リンコンらを擁するタレント軍団であった。

 しかし結果は、1勝2敗のグループリーグ敗退。米国戦で痛恨のオウンゴールを献上してしまったアンドレス・エスコバルが、帰国後に射殺されたのはあまりにも有名な話だ。先月、取材でコロンビア大使館を訪れた際に、領事にエスコバルのことを尋ねてみた。すると、それまで快活に話していた彼の表情はみるみる曇り、「すまない、その件についてはノーコメントだ」と答えるのみであった。20年が経過した今でも、かの国において、エスコバルの名がタブー視されていることに、少なからぬ衝撃を覚えたものだ。

 コロンビアは4年後の98年大会にも出場するも、ここでも精彩を欠いてグループリーグ敗退。以後は3大会続けて南米予選で苦杯を味わい続けた。そして今大会、アルゼンチンの名将であり、希代のモチベーターとしても知られるペケルマンを指揮官に迎えたコロンビアはかつての輝きを取り戻した。

 43歳のベテランGK、ファリド・モンドラゴンを除いて全員がW杯未経験という若いチームは、初戦のギリシャ戦に3−0、続くコートジボワール戦にも2−1で勝利し、早々にグループリーグを突破。しかし、だからといって、この日本戦で手を抜くことはない。グループを1位で通過すれば、次はマラカナンの大舞台で試合ができるのだ。今のコロンビアにとって、「大会を楽しむ」要素はいくらでもあり、それこそが彼らの躍進の原動力となっているようにも思える。

「8年前」に重なることと異なること

 対する日本はどうか。「大会を楽しむ」どころか、思ったようなサッカーができずに悶々(もんもん)としているというのが実情である。アルベルト・ザッケローニの「われわれがこれまでやってきたことができなかった。これには驚いた」という言葉が、すべてを物語っている。

 またこの2戦の展開が、8年前のドイツ大会に重なって見えるのも気になるところ。先制するも瞬く間に逆転されたオーストラリア戦(1−3)、そして必勝を期して臨んだもののビッグチャンスを逃してスコアレスドローに終わったクロアチア戦(0−0)の記憶がよみがえってくる。

 ただし第3戦については、8年前の「他力+ブラジル相手に3点差以上」に比べると、今回はギリシャ対コートジボワールの試合結果次第ながら、それほどハードルは高くないようにも思える。加えて、選手たちのフィジカルコンディションが何人かを除いて総じて良好なこと、選手間のコミュニケーションが傍から見ていて決して悪くないこと、そして何より、過去5大会で歴代日本代表が積み重ねてきた経験をチームとして共有していることも、この機会にあらためて指摘しておくべきだろう。

 確かに現在のチームで、8年前のドイツ大会を経験しているのは、遠藤保仁のみである。しかし前回大会を経験したメンバーは、06年大会の反省を踏まえてチームが結束することの大切さを学んでおり、その意味で日本代表としての経験値は間違いなく受け継がれている。そして、それは見る側、すなわちわれわれメディアや応援するファン、サポーターの間でも、本来共有されるべきものではないだろうか。

 さて、この試合でザッケローニが選んだスターティングイレブンは以下のとおり。GK川島永嗣。DFは右から内田篤人、吉田麻也、今野泰幸、長友佑都。中盤は守備的な位置に長谷部誠と青山敏弘、右に岡崎慎司、左に香川真司、トップ下に本田圭佑。そしてワントップに大久保嘉人。前回のギリシャ戦から香川がスタメンに復帰。そして、これまでボランチの主軸だった山口蛍に代わって青山が今大会初出場となった。大久保はスタートからワントップでの起用。「より攻撃的に」という指揮官のメッセージがひしひしと伝わってくる布陣である。

 対するコロンビアは、何と8人ものメンバーを入れ替えてきた。ここまで2ゴールを挙げているハメス・ロドリゲスやテオフィロ・グティエレスをはじめ、多くの主力選手がベンチスタート。今大会初出場の選手は4人を数える。これを有利と見るかどうかは、やはり試合が始まってみないと分からない。16時、定刻通りキックオフ。

ロドリゲスの投入で潮目が変わって、そして……

 日本にわずかな光明が見えたのは、前半アディショナルタイムの同点ゴールであった。右サイドでボールを持った本田が、カットインしてゴール前にクロスを供給。これにニアで岡崎がヘッドで飛び込み、ネットを揺らす。日本は前半17分にPKで先制ゴールを奪われていた。ペナルティーエリア内でファウルしたのは今野だったが、相手の攻撃のきっかけとなったのは岡崎のボールロストである。しかし、それでも日本は少しずつポゼッションを高めながら積極的にシュートを放つようになり、それが前半終了間際の岡崎の真骨頂といえるゴールに結実した。一方、裏の試合ではギリシャがコートジボワールに1−0とリードして前半を終えている。レシフェでのラウンド16まで、あと2点。日本サポーターの期待は膨らんでいく。

 ハーフタイム、コロンビアは中盤の選手を下げて、2人の選手を投入。そのうちの1人が、要注意人物のハメス・ロドリゲスだった。コロンビアの背番号10は、後半早々の5分にドリブルから自らシュートを放つと、9分にはゴール前に走りこんできたカルロス・カルボネロに左足でクロスを供給するなど、早くも攻撃の起点として機能するようになる。そして後半10分、サンティアゴ・アリアスからのパスを受けたハメス・ロドリゲスが左サイドのジャクソン・マルティネスへとつなぎ、最後はマルティネスが左足でネットを突き刺す。これで1−2。ロドリゲスの投入で、明らかに試合の潮目が変わった。

 日本のベンチも、ロドリゲス対策として中盤のスペースをケアするべく、後半17分に青山を下げて山口を投入。さらに、疲れの見える岡崎に代えて柿谷曜一朗をワントップに据え、再び反撃体制を整えようとする。

 しかし、それでもコロンビアの勢いは止まらない。後半37分には、ハメス・ロドリゲスからのスルーパスに抜け出したマルティネスが、巧みな切り返しで内田と吉田を幻惑し、3点目をゲット。その3分後、コロンビアのベンチは、GKをオスピナからモンドラゴンに交代する。これでモンドラゴンは、94年大会でカメルーンのロジェ・ミラが42歳で打ち立てた、W杯出場最年長記録を更新することとなった。しかし日本にとっては、これ以上ない屈辱的な交代である。

 その後の出来事については、いささか記憶が混濁している。手元のノートによれば、後半40分に香川に代わって清武弘嗣がW杯初出場。45分、本田がボールを奪われてコロンビアがまたしてもカウンターを仕掛け、この日2アシストのロドリゲスが見事なループシュートを決めて、スコアを1−4とする。

 結局のところ、8年前にドルトムントで行われたブラジル戦とまったく同じスコア(1−4)ではないか(しかも、相手がGKを交代するところまでも同じだ)。

 そしてコロンビアのパスが通るたびに「オーレ! オーレ!」の大合唱。悔しい。ただただ、悔しい。しかし、8年前の「ドルトムントの夜」と同様、この屈辱的な光景もまた、しっかりと目に焼き付けておこう。今の私にできることは、それだけである。

結果についてはいろいろ言いたいけれど

 ファイナルスコア、1−4。4失点というのは、ザッケローニ体制での最多タイ記録で、これまで3回あった。12年10月18日のブラジル戦(0−4@ポーランドでの親善試合)、13年6月18日のイタリア戦(3−4@コンフェデ杯)、そして同年8月14日のウルグアイ戦(2−4@宮城での親善試合)。3試合中2試合の相手が南米勢というのは、なんとも暗示的だ。もともと南米とのガチンコ勝負を苦手とする日本であったが、それにしても最後の最後でコロンビア相手に4失点を食らうとは思わなかった。この結果、日本はブラジルでは1勝も挙げることなく、グループC最下位で大会を終了。なお裏の試合では、ギリシャが2−1でコートジボワールに勝利し、見事にグループリーグ突破を果たしている。

 両監督の会見を取材し終えて、ミックスゾーンに向かう。すでに日本の選手はメディア対応を終えており、しばらくしてドーピング検査を終えた吉田が姿を現した。心なしか、目に赤みがさしているように見える。おそらく日本でも(特に最後の2失点のシーンで)、吉田がマルティネスやロドリゲスに翻弄されているシーンが何度もリプレーされたと思う。それでも今日の彼はDFリーダーとして、最後までよく戦っていたと思う。この4年間の方向性の是非を問われると、吉田は報道陣をまっすぐ見据えながらこう語った。

「うーん、間違っていたかどうかは結果がすべて。結果だけ見れば間違っていたのかもしれない。でも個人的には、可能性のあるサッカーだったと思っています。監督をはじめ、僕らが攻撃的なサッカーをやろうとしていた中での結果なので、そこに不満はないです。
(今後の方向性については)次に新しい監督が来て、また新しい代表になると思うので、すべては監督次第。僕らも全員がスタートラインなので、また頑張っていきたいです」

 3分間限定のメディア対応を終えると、最後に吉田は「お疲れ様でした」と頭を下げてチームバスに向かっていった。こちらこそ「本当にお疲れ様でした」という気持ちでいっぱいである。結果がすべての世界であることは重々承知している。敗因の分析から、今大会の総括、さらにはこの4年間の総括に至るまで、われわれのやるべきことが山積みしていることもまた承知している。それでも、今日この瞬間だけは、選手やスタッフに対して、そしてザッケローニに対しても、まずは「お疲れ様でした」と思う次第だ。

 その後、今日の勝利に沸き立つコロンビア人たちに何度もすれ違いながら、疲労困憊(こんぱい)でホテルにたどり着いた。正直、今はグループリーグ最下位という現実を受け止めるのが精いっぱいで、この4年間の総括をするには、今少し時間と気持ちの猶予が必要だ。それでも間違いなく言えるのは、今回の落胆は8年前のドルトムントで感じたそれとは明らかに質と程度が異なる、ということだ。8年前の原稿で、私は「日本サッカー界は焦土と化した」と書いた。今回も悔しいといえば悔しい。が、実はあの時ほどの焦燥感は感じていないのも事実だ。その理由については、少しクールダウンして、明日あらためて記すことにしたい。そんなわけで、とりあえずは皆さん、お疲れ様でした。