2014年W杯・準々決勝:アルゼンチン 1-0 ベルギー、オランダ 0-0(PK4-3) コスタリカ

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なんか今大会のファン・ハールの采配って鬼神憑ってません?日本の高校選手権のようなアマチュア大会ならいざ知らず、世界最高峰のプロ大会でPK戦のためにGK替えるなんて・・・彼なりに100%自信があってやったことなんでしょうけど、傍から見たらいろんな意味でやっぱりリスキー。いやまぁ、性格からして頭のネジが何本か飛んでるような人ではあるけれど(バイエルン・ミュンヘン時代の奇行エピソードとかw)。

 

2014年W杯・準々決勝

アルゼンチン 1−0 ベルギー

オランダ 0−0(PK4−3) コスタリカ

 

1ヶ月前の日本との親善試合が嘘のような躍進ぶりを見せていたコスタリカも準々決勝で散ってしまいましたが、それでもオランダを相手に120分間を零封した事実はあるわけで、オランダから13のオフサイドを奪った絶妙のラインコントロールとMOMに選ばれた守護神ナヴァスの奮闘ぶりは称賛に値します。残念な結果になりましたけど堂々と胸を張って帰国してほしいですね。

ベルギーは好チームではありましたけど先制されたゴールは運に見放されたような感じのものでしたし、本気モードに入ったアルゼンチンの堅守を破るにはもう1ピースの‘違い’が足りなかったいうところでしょうか(もっともそれがあればアメリカ戦でもっと楽できたでしょうけど)。一方、辛勝で24年ぶりの準決勝進出をはたしたアルゼンチンですが、前半で負傷交代したディ・マリアがこのままリタイアとなると攻撃陣が更に薄くなってしまいますね。もっとも相手のオランダとて暑い暑いサルヴァドールでPK戦までやった後にサンパウロへの長距離移動ですから・・・う〜ん、どっちが勝ってもなんかグダグダな試合になりそうな予感(苦笑)。

 

清々しかったコスタリカの「終わり方」【スポーツナビ:宇都宮徹壱 2014年7月6日】

コスタリカのおばちゃんと意気投合

 大会25日目。準々決勝2日目のこの日は、13時からブラジリアでアルゼンチン対ベルギーが、そして17時からサルバドールでオランダ対コスタリカが開催される。前日までフォルタレーザにいた私は、早朝の飛行機でサルバドールに移動。ブラジリアの試合は、ホテルの近くの食堂で昼食をとりながらテレビ観戦した。

 試合は、前半8分にゴンサロ・イグアインが決めた1点を守り切ったアルゼンチンが勝利し、見事に準決勝進出を決めた。アルゼンチンのベスト4入りは、実に24年ぶり。24年前といえば90年のワールドカップ(W杯)イタリア大会のことで、マラドーナが(ピークを少し過ぎていたとはいえ)全盛期だった時代だ。そのマラドーナが現役を退いて以降、何人もの「マラドーナの後継者」たちが現れては消えていったが、ついにリオネル・メッシが名実ともにマラドーナ越えを実現させようとしている。残り2試合。決勝の舞台マラカナンへの切符を懸けて戦う相手はオランダか、それともコスタリカか――。

 というわけで、本当は準々決勝最後の試合を取材しにサルバドールに来たわけだが、実は私はこの試合をスタジアムで見ることができない。記者席に入るためには、メディアチケットをFIFA(国際サッカー連盟)のメディアチャンネルから申請する必要があるのだが、不覚にもこのカードの申請に間に合わなかったのである(気づいた時には締め切りから2時間がたっていた)。ブラジリアでの取材に切り替えることも考えたが、エアチケットを確保できずにあえなく断念。さんざん迷った末、サルバドールのパブリックビューイング(PV)を取材することを思い立った。

 ところが、ここでまたしても誤算。PVが行われると聞いたペロウリーニョ広場に来てみると、あちこちに屋台はあるものの肝心の大型スクリーンが見当たらない。どうやらPVが行われるのは、セレソン(ブラジル代表)の試合だけのようだ。とはいえ、いずれの屋台でも客寄せのテレビ中継を見ることはできる。たまたま相席になったコスタリカ人のおばちゃんと意気投合し、一緒にコスタリカ代表を応援することと相成った。もっとも、おばちゃんは英語が分からないし、私はスペイン語が分からない。それでも、コスタリカがピンチになるたびに彼女が「アイヤイヤイヤ!」と叫ぶので、こちらもつられて「アイヤイヤイヤ!」と叫んでいるうちに、私たちはすっかり意気投合していた。

あらためてコスタリカの健闘に思うこと

 戦前の私の予想では、オランダが圧倒的な攻撃力でコスタリカに完勝するというものであった。しかし、この日もコスタリカの5バックは、オランダの圧倒的なポゼッションに対してしっかり対応していた。とりわけ感心したのが、その絶妙なラインコントロール。この試合でオランダは13のオフサイドを取られているが(コスタリカは2)、そのほとんどはコスタリカの最終ライン5人の息のあったラインコントロールによるものであった。巧みなオフサイドトラップに加えて、この試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれた守護神ケイラー・ナバスの活躍により、コスタリカは120分にわたり0−0の均衡を保ち続けることに成功する。最初は高みの見物を決め込んでいた地元の人々も、やがてナバスのファインセーブに歓声を上げるようになっていった。

 とはいえ、やはりオランダはコスタリカに比べてはるかに試合巧者であった。延長戦終了間際、ルイス・ファン・ハール監督はGKをヤスパー・シレッセンから第3GKのティム・クルルに交代。PK戦を見据えてのベンチワークであることは明らかだが、まさか高校選手権ではなくW杯でこのような交代を目にするとは思わなかった。シレッセンと比較して、クルルがどれだけPK戦に強いのかは手元にデータがないので、はっきりしたことは言えない。だが少なくとも、シレッセンよりも6センチ長身のクルルがゴールマウスに入ったことで、ずい分とゴールが小さく見えたのは事実だ。
 それと同時に、このタイミングでのGK交代が、コスタリカに心理的な揺さぶりをかけた可能性も十分に考えられる。結果としてクルルは、コスタリカ2番手のブライアン・ルイスと5番手のミチャエル・ウマニャのシュートを防ぎ、オランダの準決勝進出に大きく貢献した。

 試合後、敗れてなお誇らしげにほほ笑むコスタリカのおばちゃんに「アディオス(さようなら)」と別れを告げて帰途につく。途中、コスタリカの冒険の終わりについて考えた。終わってみれば、至極順当な結果であったといえよう。グループリーグ初戦、ウルグアイ相手に3ゴールを挙げたコスタリカであったが、このチームはやはり「ディフェンスありき」ゆえに、確実な勝利が求められる決勝トーナメントで勝ち切るには、おのずと限界はあったと思う(2試合連続PK戦というのは、その証左と言えよう)。しかしだからこそ、自分たちができることを愚直に精いっぱいやりきり、そして敗れたコスタリカの姿勢には、見ていて非常にすがすがしいものが感じられる。

 W杯とは、優勝チーム以外はいつか敗れる大会である。問題は、その敗れ方が納得できるものであったかどうか、ではないだろうか。多くの強豪国が、なかなか納得できずに大会を終える中、コスタリカの「終わり方」は、もはや1ミリの余力もないくらいの「やりきった感」が十分に伝わってきた。米国・タンパで行われた、日本との親善試合から1カ月。その間、ことあるごとにコスタリカの躍進ぶりに羨望(せんぼう)の目を向けてきたが、実のところわれわれが見習うべきは、そのすがすがしいまでの「終わり方」であったのかもしれない。

 

高まるオランダ23人のチームスピリット クルルのPKストップは必然の結果!?
【スポーツナビ:中田徹 2014年7月6日】

熾烈な競争を強いられたオランダ正GKの座

 ワールドカップ(W杯)欧州予選の10試合で、ルイ・ファン・ハール監督はティム・クルル、マールテン・ステケレンブルフ、ケネト・フェルメール、ミヘル・フォルム、ヤスパー・シレッセンと実に5人のGKを起用した。GKはチームの砦であり、本来なら1人の選手に信頼を与え、なるべく固定したいポジションだ。しかし、代表選手の招集条件として、「所属クラブでしっかり出場機会を得ており、コンディションがフィットしている選手」と挙げた指揮官は、GKにも競争を促した。

 そのうちの1人がクルルだった。彼は2012年9月7日に行われたW杯欧州予選の初戦、対トルコ戦に抜てきされ、2−0の白星スタートに貢献したものの、安定感を欠く場面もあり、今ひとつファン・ハール監督の信頼を掴みきれなかった。

 彼にとっても、ファン・ハール監督にとっても残念だったのは、このGKはビルドアップができないことだった。

 オランダの指導者の世界では、「1−4−3−3」「1−5−3−2」というフォーメーション表記を使うが、これはGKもサッカーをする構成要員の1人と考えられており、ビルドアップへの貢献が求められているからだ。オランダのセンターバック(CB)が2人で、相手が2トップを採用したら、GKもビルドアップに参加すれば3対2の数的優位ができるではないか……という考えは、オランダではごくごく普通のことで、そこに「1−4−3−3」というフォーメーション表記の妙がある。
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〔※写真:準々決勝のコスタリカ戦は、オランダのファン・ハール采配が的中。延長後半ロスタイムに投入されたクルルが、見事PKを2本ストップし試合を制した【写真:ロイター/アフロ】〕

クルルはオランダで“ラインGK”の第一人者

 ファン・ハール監督のフィロソフィーに合うGK、それはアヤックスのフェルメールだった。ビルドアップの起点として、彼ほど足下の技術があるGKは他にいないだろう。しかし、昨季半ば、アヤックスのフェルメールは、ヤスパー・シレッセンにレギュラーの座を奪われ、代表チームでのヒエラルキーも失った。

 オランダはフォルムを正GKとして予選終盤を戦い、W杯出場を決めた。消化試合となった最後のトルコとのアウェーゲームで、ファン・ハール監督はシレッセンを試し、フォルムとの競争を促した。この時点でクルルのポジションは、PSVアイントホーフェンのイェルーン・ズートと第3GKの座を争っていた。

 しかし、さすがにクルルは、プレミアリーグを舞台に戦っている(ニューカッスル所属)とあって、シュートを止める力がずば抜けていた。昨季のトッテナム・ホットスパー戦では1試合14セーブを記録している。“ラインGK(ゴールラインの上で力を発揮するGKの意)”としてなら、クルルはオランダ人の中で第一人者だった。W杯というトーナメントを前に、ファン・ハール監督はあえて自分のフィロソフィーからかけ離れた選手を第3GKに入れ、PK戦のスペシャリストとしてブラジルW杯準々決勝コスタリカ戦の延長後半ロスタイムに投入したのである。

万全だったオランダのコンディション

 それが当たった。クルルは見事に2本のPKを止めたのだ。決められた2本のPKも、クルルはしっかりコースを読んでいた。チームとして事前スカウトはバッチリだった。また、PK戦専用GKの存在は、ケイラー・ナバス擁するコスタリカの流れも止めた。

 ファン・ハール監督は、119分まで交代枠を1枚余らせた采配をこう振り返る。
「GKにはそれぞれ異なった特徴がある。ティム(・クルル)は手が一番長く、PKをストップするのに適しており、止めるのもうまい。それがうまくいかなかったら、私の交代策は失敗と見なされる。それがフットボールの世界というもの」

 こうして、とうとう今大会のオランダは23人のメンバー中、実に21人がプレーした事になる。大会前、メンバーが乏しく、実力では低いと目されていたオランダは、まさに総力戦で大会を勝ち抜いている。

 3人目の交代をクルルのために余らせた采配は、チームのコンディションが最高だからできた。PK戦を前に、ピッチの上でマッサージを受けていたのはコスタリカの選手だけで、オランダの選手たちは皆、ピッチの上に立って最後の戦いに備えていた。

「試合中、ロン・フラールは膝を腫らしていた。ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ロビン・ファン・ペルシーも力を使い切っていた。交代策は少しトリッキーだった」とファン・ハール監督は明かした。しかし、それ以上にコスタリカの選手の疲弊は明らかだった。

 また、クラース・ヤン・フンテラール投入によって点を強引に奪いに行くサッカーに転換したオランダだったが、120分のうちにゴールが決まっていたらDFヨエル・フェルトマンを投入する準備も終えていた。クルル抜てきの裏には、こうしたファン・ハール監督の並行作業があった。

23人で勝ち取ったベスト4進出

 アリエン・ロッベン、ディルク・カイト、ウェスレイ・スナイデルというベテランたちのスタミナは衰えず、最後の最後まで技術・走力・体力でコスタリカを圧倒していた。クルルの活躍も光ったが、その前の“投資”としてオランダはコンディションでコスタリカに差をつけ、PKの精度をしっかり保っていた。

 6番目以降のキッカー陣が若く、経験不足だったのが懸念されたが、ファン・ペルシー、ロッベン、スナイデル、カイトといった百戦錬磨のキッカーたちが全員決めた。さらに5番目のキッカーとしてフンテラールが控えていた。

 これまでオランダでは「PK戦は運」という声が多かったが、まるで高校サッカーのようなPK戦戦術を用いたファン・ハール監督によって、その考えも改まるかもしれない。

 オランダのチームスピリットは高まっている。まさかクルルがこの日のヒーローになるなんて誰も想像していなかっただろう。今大会、出場機会の無いMFヨルディ・クラシーにだって、もしかしたら第2GKのフォルムにだって残された2試合でピッチに立つ可能性が残っている。これほど23人の力を感じさせるチームは、なかなかそうない。

 

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