日本のレアメタル確保戦略とスイゼンジノリから抽出される‘サクラン’

園田義明めも http://y-sonoda.asablo.jp/blog/」にレアメタル確保についての記事がアップされてました。日経の記事を引用しながら経済産業省総合資源エネルギー調査会第9回鉱業分科会について触れてあるのですが、この日経の記事がWeb上ではあがってないんですよね。きたねーぞ、日経。

レアメタルの国家備蓄拡充、数量・品目なお不足――レアアース追加も検討。
2009/06/03日本経済新聞朝刊

 政府が補正予算成立を受けてレアメタル(希少金属)の国家備蓄拡充に乗り出す。従来の鉄鋼添加向け7種に加えて、液晶パネル材料のインジウム、発光ダイオード(LED)材料のガリウムの備蓄を開始。今後予想される価格高騰局面での供給不安を軽減する。ただ、備蓄量と対象品目の少なさを指摘する声もあるなど、課題も多い。

 「市況に影響を与えないように、静かに徐々に備蓄を積み増したい」。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)で、国家備蓄の実務を取り仕切る馬場洋三希少金属備蓄部長は今後の買い増しを控え、やや緊張した面持ちだ。

 インジウムの国際価格(中値)は現在1キロ350ドル、ガリウムは1キロ450ドル、それぞれ過去数年の最高値水準のほぼ半値。在庫量も多いことから日本の備蓄が市況を大きく左右する可能性は小さそうだ。

 しかし「国の買い付けを市場が注視しているのは当然」(大手商社)。米国では国防総省が秘密裏に備蓄を進めるのに対し、日本は入札買い付けの2週間前には発表する。レアメタル専門商社、アドバンスト・マテリアル・ジャパンの中村繁夫社長は「レアメタル市場は規模が小さく、情報を投機筋などに利用されかねない。産業を守る視点からもっと戦略的な備蓄法も検討すべきだ」と指摘する。

 備蓄数量も十分とはいえない。例えばパソコン用のリチウムイオン電池の正極材などに使うコバルト。年間需要は約1万4千トンだ。しかし、需要の7割を占める2次電池向けについては、制度スタート時に想定されていなかったため、今も備蓄量の算定基準に含まれない。その結果、備蓄目標として定める「需要の2カ月分」は、本来2千トン以上になるはずだが、実際の備蓄量は400トンにとどまる見通しだ。

 コバルトは電気自動車用のリチウムイオン電池にも採用予定で、一段と需給が引き締まる可能性もある。1983年に始まった備蓄制度はニッケルやクロムなどが対象で、鉄鋼産業を支えることを主目的にしてきた。このためハイテク産業の成長への対応が遅れが目立っていた。

 備蓄品目を拡充すべきだという声も強い。東京大学生産技術研究所の岡部徹教授は排ガス浄化に使うロジウムなどの重要性も指摘。「31種類に固定化しているレアメタルの分類見直しも含めて備蓄対象を増やし、安値で迅速に買い付けに動ける環境が必要」と話す。

 経済産業省は現在、磁石原料になるレアアース(希土類)など、5品目についても備蓄対象にする方向で検討している。

 「電池各社は使用鉱物の多様化などを進めているが、備蓄制度が安心感につながるのは確か」(電池工業会)とレアメタル需要家サイドには備蓄制度の拡充を歓迎する声が多い。

 ただ、中国を中心に各国が一段と資源の囲い込み姿勢を強める中で、レアメタル高騰はいつ再燃するか予断を許さない。制度の機動的な見直しと拡充が今後も必要になりそうだ。

希少金属、安定供給へODA活用、経産省が戦略原案、携帯リサイクル強化。
2009/06/03日本経済新聞夕刊

 経済産業省は3日、鉄鋼製品やデジタル家電の生産に欠かせない希少金属(レアメタル)を国内に安定供給するための総合戦略の原案をまとめた。海外の鉱山周辺でのインフラ整備に向けた政府開発援助(ODA)の積極活用や、携帯電話のリサイクルなどが主な内容。省エネや環境分野の利用も増えており、国内産業の国際競争力を強化する観点から対策を総動員する。

 レアメタルは埋蔵量が少なく、ニッケルやプラチナなど31品種を対象にしている。経産省は同日の総合資源エネルギー調査会鉱業分科会に原案を示し、7月にも正式に決定する。

 「レアメタル確保戦略」と呼ぶ取り組みとして(1)海外資源確保(2)リサイクル(3)代替材料開発(4)備蓄――の4つの柱を挙げた。海外資源確保では、レアメタルが途上国に存在することが多いことから「鉱山周辺のインフラ整備へのODA活用」を盛り込んだ。鉱山周辺で電力や鉄道、港湾といったインフラの整備に円借款などを使い、権益獲得を狙っていく。先行的な案件としてベトナム北西部の鉱山周辺で、道路整備を円借款で支援する方向で検討している。

 回収や再生ができるレアメタルは「リサイクルによる資源確保も重要な政策で取り組むべきだ」と強調した。レアメタルが多く使われている携帯電話やデジタルカメラなどをリサイクルする仕組みを構築することが重要と指摘。携帯電話は年内をめどに方向性を出すように調整を図ることも示した。

 供給が細る懸念を技術的に打破するために、代替材料の開発にも力を入れる。具体的には、産学官の連携強化や研究開発拠点の整備などを挙げた。備蓄では対象とする品種について「需給動向を踏まえ、積み増し(放出)を機動的に取り組むべきだ」と指摘している。

[※尚、こちらも参照のこと→財務省HP~「レアメタル確保のための戦略的アプローチ」PDF

日本の将来を大きく左右する一件なのですが、他紙は携帯電話回収キャンペーンのことを報じた程度で日経のような採り上げ方をした記事は見当たりません。国家ぐるみで強引に───というかほとんどヤクザまがい───確保に乗り出している中国に比べたら日本は大きく遅れをとっているのですから、日本の基幹産業にかかわること且つ消費者の生活に直結する事項は大いにニュースにすべきと思いますが・・・。

ちなみに、携帯電話の回収は現状で2割程度らしいのですが、個人的な愛着があるという理由はよくわかるとしても(無理に差し出せとは言えないし)、電話帳や画像データを保存させている人たちって、中のハードウェアの劣化→データの劣化・破損までは考えないのでしょうか?新しいのを持ってるならデータがちゃんと残ってるうちにサッサと移行させたらいいでしょうけど(この点は回収する側でももっとフォローしてしかるべきだと思う)。あと、個人情報の漏洩に対する懸念には、回収即物理的破壊を(回収する側とされる側の双方に)周知徹底させるのはもちろんですし、回収前のデータ全消去の手段を利用しやすいよう整えてアナウンスするとかも必要でしょう。盗難に遭いやすく落下等での破損の危険性もあるケータイに、電話番号以外にいったいどんな「漏れたら困る」個人情報を入れてるのか?としとらすがツッコミたいのは置いといて(笑・手軽な便利さに甘えすぎると碌なことがないし、だいたい通話記録とか重要な個人情報を握ってるのは携帯電話事業者の方なんだし)。そうそう、消費者に不要になった携帯電話機の供出を促すシステムを作ることも重要ですね、買取とか。

http://journal.mycom.co.jp/news/2009/06/03/063/index.html

携帯電話回収キャンペーンでは鳩山邦夫総務相が目立ってましたが、西川善文・日本郵政社長による「かんぽの宿」のオリックスグループ譲渡問題への徹底した批判とか、どこかの党代表に比べるとしっかり仕事している印象ですね。なにかにつけポエミーな兄ポッポより随分マトモやん(笑)。自民党内とマスゴミからどんなに言われようと、かんぽの宿の件では鳩山総務相にぜひ初志貫徹してほしいものです。

ところで、ここ両日のレアメタル関連の記事を探してたら、‘サクラン’という語が目に入ってきました。なんでも福岡県朝倉市の黄金川だけに自生する絶滅危惧種スイゼンジノリから抽出される多糖類の新物質だそうで、発見した北陸先端科学技術大学院大学の金子達雄准教授のグループによる研究成果がアメリカの化学会誌『マクロモルキュルズMacromolecules http://pubs.acs.org/journal/mamobx』に掲載されたのだとか。1gで水6Lという高い吸水性に加えてレアメタルやレアアースを吸着する性質もあるのだそうで、自生する川の上流域に建設予定の小石原川ダムによる影響で一層の絶滅の危機に曝されているスイゼンジノリを救うと同時にサクランの応用研究も期待したいですね。

※参考→グリーンサイエンス・マテリアル(株)~「サクランについて」 http://gsmi.co.jp/sacran.html

「まさに都市鉱山。安心してリサイクルに協力を」—経産省らが携帯電話回収キャンペーンを展開
【日経BP:Tech-On! 2009年6月3日】

 「国民の協力なしには都市鉱山は生まれない。安心してリサイクルに協力してほしい」—総務大臣の鳩山邦夫氏らが,「使用済み携帯電話回収促進キャンペーン」の開始に当たって使用済み携帯電話機の提供を呼びかけた。同キャンペーンは,経済産業省,環境省,総務省の3省と通信事業者,携帯電話機メーカーらが連携して実施するもので,2009年6月3日~7月7日までの1カ月余りに渡って,イベントやポスター,パンフレットを通じて消費者に使用済み携帯電話機回収への協力を促す。

 携帯電話機にはAu,Cu,Pd,Coなど希少金属を含む再利用可能な金属が使われているが,使わなくなっても手元に残しておくユーザーも多い。個人情報の漏洩に対する懸念が,回収・リサイクルが進まない一つの要因とみられている。東京都内で行われたキャンペーンのキックオフ・イベントでは,回収すると最初に携帯電話機を物理的に破壊することをアピール。「リサイクルが安全なことは3省が保証する」(鳩山氏)と,個人情報が漏れる心配がないことを訴えた。

 KDDI株式会社社長兼会長で電気通信事業者協会会長の小野寺正氏によると,これまでの累計回収台数は6500万台になるという。「政府は今後3年で1億台の回収という意欲的な目標掲げている。もっと回収が進めば日本が資源大国となる可能性がある」(経済産業大臣政務官の谷合正明氏)。キャンペーン期間中には,横浜市や京都市で回収の実証実験を行うほか,通信事業者がイベントなどを通じて回収への協力を呼びかける。

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[↑キックオフ・イベントで使用済み携帯電話機の回収への協力を呼びかける総務大臣の鳩山氏や環境大臣の斎藤氏ら]

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[↑手動式の破砕機を体験する鳩山氏]

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[↑KDDIの機械式破砕機を試す斎藤氏]

サクラン 世界も注目 スイゼンジノリから抽出 米化学会誌の表紙飾る
【西日本新聞 2009年6月3日】

 福岡県朝倉市の黄金(こがね)川だけに自生する絶滅危惧(きぐ)種スイゼンジノリから抽出される新物質「サクラン」が世界の科学者からも注目を浴びている。発見グループの論文が、このほど発行された米化学会誌「マクロモルキュルズ」に紹介され、サクランの写真が冊子の表紙を飾った。上流域のダム建設計画で死滅の危機に直面するスイゼンジノリの評価があらためて高まりそうだ。

 ●レアメタル吸着性 実用化に期待

 サクランは2006年、北陸先端科学技術大学院大学(石川県能美市)の金子達雄准教授(天然物化学)のグループが偶然発見した。自然界で最大となる1600万の分子量を持つ多糖類だ。

 1グラムで水6リットルという高い吸水性に加え、レアメタル(希少金属)やレアアース(希土類元素)を吸着する性質もある。資源回収や化粧品などへの応用が期待され、金子准教授たちは実用化を目指している。研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業にも採択された。

 サクランが紹介されたのは、米化学会が4月末に発行したマクロモルキュルズ。金子准教授によると、日本の研究グループの成果が同誌の表紙に載るのは初めてという。

 高分子学会九州支部によると、同誌は高分子分野で世界的に権威ある専門誌。九州大学前学長で高分子物理が専門の梶山千里さん(69)も「商業誌ではなく学会誌なので論文の信頼度は高い」と話している。

 金子准教授らは国外の学会でもサクランの可能性を紹介している。グループの一員でNEDOの岡島麻衣子研究員は「最近は天然由来の新物質の発見が珍しい。ラン藻類の多糖類の実用例も少なく、海外の研究者も興味を持っている」と語る。

 しかし、黄金川での収穫量は水量減で最盛期の5分の1の年間約40トン。研究用の需要増加に対応できない。さらに、上流域に建設予定の小石原川ダムの影響で、スイゼンジノリは死滅の恐れが指摘されている。建設事業主体の水資源機構(さいたま市)は4月、有識者会議を設置、ダム下流域の環境保全を検討中だ。

 ノリ業者の羽野俊彦さん(62)は「研究用にもっと多くのスイゼンジノリを提供したいが、食用の需要もあり、できない。黄金川が昔の水量に戻れば生産量が増えるのに…」と話している。

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[↑絶滅危惧種のスイゼンジノリ(手前)が自生する黄金川=福岡県朝倉市]

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[↑「サクラン」が表紙を飾った米化学会誌「マクロモルキュルズ」=同誌のホームページから]