2016年・・・100年前の今頃は第1次世界大戦の真っ最中、そして100年後に間も世界は理不尽に満ちている

あけましておめでとうございます。
本年も拙サイトをよろしくお願いします。

3年前のワーグナーとヴェルディ生誕200周年のような、なんかわかりやすいのがないかサラッと見てみたのですが、そうそう都合よくはありませんね(苦笑)。

クラシック界で挙げるなら、カタルーニャの作曲家エンリケ・グラナドスの没後100年に当たります。ですが、グラナドスの死因は病気だったり交通事故のようなものだったりというのではありません。ニューヨークで歌劇『ゴイェスカス』初演に立ち会うために渡米し、その後当時のウィルソン米大統領の招きに応じて予定を変更して演奏会を催し、帰国の船便も当初の直行便をキャンセルしてリヴァプール経由の客船「サセックス」に乗った途上、英仏海峡でドイツ海軍の潜水艦による魚雷攻撃で船が沈められて夫妻ともども行方不明になったとか。

1916年の3月、第1次世界大戦の戦況は膠着していました。

グラナドスは戦争に殺された

・・・と言っても過言ではないでしょう。

100年後の今はどうでしょう?主戦場が欧州から中東やアフリカに移り、軍装・武装する主体が国家-nation-に限らず様々な組織 -organization- や集団 -group- が入り乱れるようになり、軍事兵器が100年間に相応の発展を遂げた以外では、世界は戦争している状態です。

戦争で溺死したのが作曲家グラナドスではなく、アイラン・クルディという3歳のクルド人幼児だとしても・・・
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日本は、普通に程々の政治さえ行っていれば、パレスチナのようにイスラエルの極右シオニストから無差別虐殺で弾圧されることもなく、シリアのように数多の武装組織に蹂躙される中で狭い逃げ場に難民が殺到することもなく、旧ザイール東部のように女性が年齢を問わず集団強姦される恐怖に怯えることなく、むしろそうしたジェノサイドや難民流出を平和的外交手段で少しでも止めさせる役割を担えるはずでした。

ですが現状は正反対で、とてもそんな“一流の”振る舞いが全然できなくなってきているどころか、景気のリセッションと経済格差拡大を放置して時計の針を逆周りし明治の前近代に戻ろうとしているのが明白に可視化された1年であり、そうした無様な政治社会状況の土壌にもSEALDsなどのような僅かな芽が出てきつつある1年でもありました。

第2次世界大戦終結後70年を迎え、改めて自国の戦争犯罪を反省すべきところを、逆に悪事を無かったことにしたい連中が跋扈してマジョリティを動かしている流れに竿を立てるのは容易ではないですが、自分を取り巻く社会にどうコミットするかは人それぞれとしても、社会の中で生きていく以上は過去と現在の在り方に目を背けることはできないわけで。

今年2016年は政治思想史家の丸山眞男さんの没後20周年になりますが、彼の代表的著書『現代政治の思想と行動』は21世紀の今でも色褪せることはなく、私達の手に自由と民主主義を取り戻すためにも今いちど広く読まれるべきでしょう。そしてそのエッセンスを現代にモデルチェンジして上書きするためには、昨秋に上梓された同志社大教授の岡野八代さんの著作『戦争に抗する――ケアの倫理と平和の構想』を読むことを必須として薦めます。

丸山眞男『現代政治の思想と行動』〔新装版〕

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岡野八代『戦争に抗する――ケアの倫理と平和の構想』

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以下に挙げたのはSEALDs選書プロジェクト(15冊)の次のステップとして読書を薦めたい本で、特に下段5書は昨年に刊行されたものを敢えて選びました。上左から順に、ジョルジョ・アガンベン『ホモ・サケル――主権権力と剥き出しの生』ジュディス・バトラー『戦争の枠組み――生はいつ嘆きうるものであるのか』ウェンディ・ブラウン『寛容の帝国――現代リベラリズム批判』ドゥルシラ・コーネル『“理想”を擁護する――戦争・民主主義・政治闘争』アイリス・マリオン・ヤング『正義への責任』
中段左から順に、小熊英二・編『平成史【増補新版】』菊池夏野『ポストコロニアリズムとジェンダー』清水知子『文化と暴力――揺曵するユニオンジャック』デヴィッド・ハーヴェイ『反乱する都市――資本のアーバナイゼーションと都市の再創造』ドリーン・マッシー『空間のために』(値段高いけどハーヴェイとマッシーで興味が湧いたらニール・スミス『ジェントリフィケーションと報復都市――新たなる都市のフロンティア』も是非)。
下左から順に、塚田穂高『宗教と政治の転轍点――保守合同と政教一致の宗教社会学』ジェレミー・ウォルドロン『ヘイト・スピーチという危害』福間良明『「聖戦」の残像――知とメディアの歴史社会学』中尾麻伊香『核の誘惑――戦前日本の科学文化と「原子力ユートピア」の出現』張 承志『中国と日本――批判の刃を己に』
それと、邦訳本が出るのがまだ半年以上先らしいいのですが、英語本を読むのが苦にならない人はナオミ・クラインの最新刊『This Changes Everything』もどうぞ。


 


 

此処から先は私が個人的に読んでみたいけどまだ買ってないというか、新訳が出たハンナ・アーレント『活動的生』が真っ先にそうなんですが、あとはウィングを広げて第1次大戦や中東のこととかで、オーランドー・ファイジズ『クリミア戦争(上)』『クリミア戦争(下)』アブドルバーリ・アトワーン『イスラーム国』ユージン・ローガン『アラブ500年史(上)――オスマン帝国支配から「アラブ革命」まで』『アラブ500年史(下)――オスマン帝国支配から「アラブ革命」まで』は買って読んでみたいと考えてます。