バルトーク:ルーマニア民俗舞曲、ホルスト:セントポール組曲、チャイコフスキー:フィレンツェの思い出

本日は七夕。そんな夜に『La Meli Melo Ensemble vol.2』と題して、京都市交響楽団の若きコンサートマスター泉原隆志さんを中心とした弦楽アンサンブルの演奏会がありました。出演者は

泉原隆志(ヴァイオリン/京都市交響楽団)
直江智沙子(ヴァイオリン/神奈川フィルハーモニー管弦楽団)
中野志麻(ヴァイオリン/京都市交響楽団)
山本美帆(ヴァイオリン/京都市交響楽団)
鈴木康浩(ヴィオラ/読売日本交響楽団)
金本洋子(ヴィオラ/京都市交響楽団)
上森祥平(チェロ)
石田聖子(チェロ/大阪フィルハーモニー交響楽団)
神吉 正(コントラバス/京都市交響楽団)

そして、プログラムは

・バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
・ホルスト:セントポール組曲
・チャイコフスキー:フィレンツェの思い出

の3曲。セントポール組曲と『フィレンツェの思い出』は個人的に大好きな曲ということもあり、それが泉原さんら京響の弦楽器奏者たちの生演奏で聴けるとあって、出かけてきました。準備のための時間がもうちょっとあれば・・・と思わないでもないところがちらっと顔を出してた部分もありましたけど、それでも3曲すべてとても素敵な演奏で大いに満足して帰ってきました。

以下に挙げるディスクは予習がてらナクソス・ミュージック・ライブラリで聴いたものです。よろしければ参考までに。

 

バルトーク:ディヴェルティメント、ルーマニア民俗舞曲; ロージャ:弦楽のための協奏曲
/ペーテル・チャバ指揮ヴィルツオージ・ディ・クフモ
【Ondine】

バルトーク・ベーラ
・ディヴェルティメント Sz.113
・ルーマニア民俗舞曲 Sz.56(弦楽合奏編曲:アルトゥール・ヴィルナー)
ロージャ・ミクローシュ
・弦楽のための協奏曲 Op.17

指揮:ペーテル・チャバ
演奏:ヴィルツオージ・ディ・クフモ

録音時期:1998年7月
録音場所:フィンランド、ヤルヴェンパー・ホール

http://ml.naxos.jp/album/ODE919-2

Ode9192

 


 

 

ホルスト:セントポール組曲、他/ヒコックス&シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア【Chandos】

グスターヴ・ホルスト
・2つのヴァイオリンのため二重協奏曲 Op.49
・2つの無言歌 Op.22
・抒情的断章 H.191
・ブルック・グリーン組曲 H.190
・フルートとオーボエのためのフーガ風協奏曲 Op.40-2
・セントポール組曲 Op.29-2

指揮:リチャード・ヒコックス
演奏:シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア
ヴァイオリン:アンドリュー・ワトキンソン、ニコラス・ウォード[二重協奏曲]
ヴィオラ:スティーヴン・ティーズ[抒情的断章]
フルート:ドビング・デューク[フーガ風協奏曲]
オーボエ:クリストファー・フッカー[フーガ風協奏曲]

録音時期:1993年7月19-20日
録音場所:ロンドン、セント・ジュード教会

http://ml.naxos.jp/album/CHAN9270

Chan9270

 

 

 

弦楽のためのイギリス音楽/ジョージ・ハースト&ボーンマス・シンフォニエッタ【Chandos】

グスターヴ・ホルスト
・セントポール組曲 Op.29-2
エドワード・エルガー
・弦楽セレナード ホ短調 Op.20
ピーター・ウォーロック
・カプリオール組曲
ジョン・アイアランド
・牧歌的コンチェルティーノ

指揮:ジョージ・ハースト
演奏:ボーンマス・シンフォニエッタ

録音時期:1977年1月
録音場所:イギリス、ドーセット、クライストチャーチ修道院

http://ml.naxos.jp/album/CHAN8375

Chan8375

 


 

 

チャイコフスキー:弦楽セレナード、フィレンツェの思い出/マルコ・ボーニ&コンセルトヘボウ室内管【PentaTone】[Hybrid SACD]

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
・弦楽セレナーデ ハ長調 Op.48
・弦楽六重奏曲 ニ短調『フィレンツェの思い出』 Op.73[※弦楽合奏版]

指揮:マルコ・ボーニ
演奏:コンセルトヘボウ室内管弦楽団

録音時期:2002年4月
録音場所:アムステルダム、ワールセ教会

http://ml.naxos.jp/album/PTC5186009

Ptc5186009

 


せっかくならマーラー『復活』が聴きたかった・・・京都市交響楽団 特別演奏会「第九コンサート」(指揮:大野和士)

開演前の愚痴(苦笑)

・その1
コンサートパンフをめくったら
 ※四方恭子
  (客演コンサートマスター)
の文字が・・・え?四方さんがコンミスで入ってくれるの!?大野さんが指揮者で四方さんがコンミスって、なんで今年の第九は無駄に贅沢してるんですか?www これで京響と合唱曲やるんだったら絶対にマーラーの《復活》とかがいいって。

第九じゃなくて『復活』聴きたかったです!

(いやマジで)

 

・その2
開演前にロビーで事務局の方々が来年度のスケジュールパンフを配ってらっしゃって、さっそくいただいてページをめくったら、まずヨーロッパ公演のことが書いてました。それによると日程とプログラムは・・・

2015年6月1日(月)@オストラヴァ(チェコ)、オストラヴァ市文化センターコンサートホール
 ・武満徹:三つの映画音楽
 ・プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番〔Vn:ワディム・レーピン〕
 ・プロコフィエフ:交響曲第5番

2015年6月3日(水)@プルゼニ(チェコ)、プルゼニ市公会堂
 ・武満徹:三つの映画音楽
 ・プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番〔Vn:ワディム・レーピン〕
 ・R.シュトラウス:交響詩『ティル÷オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』
 ・R.シュトラウス:組曲『ばらの騎士』

2015年6月5日(金)@ケルン、フィルハーモニー
 ・武満徹:ノヴェンバー・ステップス〔尺八:柿堺香、琵琶:中村鶴城〕
 ・細川俊夫:嘆き〔Ms:藤村実穂子〕
 ・プロコフィエフ:交響曲第5番

2015年6月7日(日)@アムステルダム、コンセルトヘボウ
 ・武満徹:三つの映画音楽
 ・細川俊夫:嘆き〔Ms:藤村実穂子〕
 ・R.シュトラウス:交響詩『ティル÷オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』
 ・R.シュトラウス:組曲『ばらの騎士』

2015年6月9日(火)@フィレンツェ、オペラ・ディ・フィレンツェ
 ・武満徹:ノヴェンバー・ステップス〔尺八:柿堺香、琵琶:中村鶴城〕
 ・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番〔Pf:アンドレア・ルケシーニ〕
 ・R.シュトラウス:交響詩『ティル÷オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』
 ・R.シュトラウス:組曲『ばらの騎士』

・・・なんですが・・・武満徹とか細川俊夫とか京都ではやってくれないくせに、広上さんズルいです(苦笑)。

京響定期でも武満作品とか細川作品とかやってやって!

 

 

京都市交響楽団 特別演奏会「第九コンサート」
2014年12月27日(土)14時30分開演@京都コンサートホール

◆S.バーバー 弦楽のためのアダージョ Op.11
◆L.v.ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調 Op.125

指揮:大野和士
ソプラノ:リー・シューイン
メゾソプラノ:池田香織
テノール:西村悟
バリトン:須藤慎吾
合唱:京響コーラス(合唱指揮:小玉晃)
コンサートマスター:四方恭子

 

ソプラノの人が急病らしくて急遽変更になりましたが、聴いた感じでは特に無問題でした。

コンミスに四方さんが入って(隣が泉原さん、渡邊さんはオフ)、今回はチェロに上村さんも出てきていて、要にベテランがいたおかげか、バーバーのアダージョは濃密で濁りのないサウンドが何とも言えない味わい深さが出ていてよかったです。

休憩無しで始まったベートーヴェンの9番はテンポもオーソドックスで横の流れというかフレージングがとても自然な印象でした。後半楽章で所々見られたオオノ流スパイスも全然あざとさがなくてナチュラルな感じ、独唱と合唱が入る終楽章も歌パートのバランスや呼吸の扱いの巧みさはさすがオペラ指揮者の本領発揮といったところでした。2管編成だったオケ、そして京響コーラスも全力全開の好演でした。4人のソリストも特に目立った穴は無し。

うん、だからですね、第九じゃなくてマーラーの『復活』が聴きたかったんですよ、大野和士&京響(コーラス付き)コンビで。そうそう、今月上旬の都響定期でフランツ・シュミットの4番シンフォニーを採り上げていたので、彼の『7つの封印の書』も良さげかな?ともあれ、京響の大きな売りの1つが西日本随一の管セクションなんだから、2管編成の曲やって他を遊ばせるなんて勿体なさすぎるし、今回聴いてやっぱりと思ったけど大野さんの適性って明らかに「マーラー>ベートーヴェン」だから(その昔フルトヴェングラーがトスカニーニのベートーヴェンを聴いて良くも悪くもオペラ指揮者のそれだと批評してたっていうエピソード・・・2人がナチスの件で喧嘩別れする前の話・・・が岩波新書の丸山眞男『フルトヴェングラー』で言及されてて帰り道にふと思い出したものでした)、今日の演奏を聴いて、これが第九じゃなくて『復活』だったら、さぞかし掛け値無しの感動的な名演になったんだろうなぁ~とつくづく残念な気持ちになりました。変に徒にコネくりまわさずとも随所に工夫を施してしっかり聴かせるあたりはさすがでしたけど。

・・・いやまぁ、退屈だった去年に比べればずっと良かったですよ。でもでも、私はただでさえ餅代稼ぎで年末に第九をやる日本独特の風習にエエ加減もう辟易してて(12月定期が廃止になった代替に第九演奏会が振り分けられてるからチケットもったいなくて来てるようなもんだし)、大野さんはお気に入りの指揮者の1人だけど、来年から都響とバルセロナ響の音楽監督に就任するから、次にいつ京響に客演に来てくれるのか懸念せざるを得ないし、ツイッターのTL上では絶賛の嵐でしたけど、大野&京響の第九にプライオリティを見出せなかった私としては複雑な気分でした。ヘソ曲がりと言われればそれまでですが、年末の第九に(誰がどういったベートーヴェンを聴かせるかのベンチマークに利用する以外)何の有難味も持てない私としては鈴木秀美さんのようなピリオド系の指揮者とのコラボでないと新鮮なwktkが得られないのかもですね。この曲をロマン派の先駆けというかその延長線上のような捉え方をするオーソドシカルな解釈のなら、フルトヴェングラーのバイロイト1951年のとブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデンのゼンパーオーパー再建記念のと2つの歴史的ライヴ録音で充分ですし。

 

 

 



京都市交響楽団 室内オーケストラへの招待 Vol.3(指揮:鈴木秀美)

バロック・チェロの世界的プレイヤーとしてソリストとしてもバッハ・コレギウム・ジャパンの首席奏者としても活躍されているだけでなく、2001年にオーケストラ・リベラ・クラシカを創設して指揮活動もされている鈴木秀美さん。チェロ奏者としての演奏はバッハの無伴奏をリサイタルで聴いたことがありましたが、指揮の方は今まで見たことがありませんでした。
今回、京響の室内楽シリーズに客演されるのをチラシで見て、すぐに飛びついたのは言うまでもありません(笑)。

ハイドンの92番『オックスフォード』とベートーヴェンの『英雄』、京響初客演の鈴木さんの指揮が楽しみなのはもちろんですが、これまで古楽系の指揮者との共演自体がほとんどなかった京響がどんなリアクションを見せるのかにも興味がありました。

 

京都市交響楽団 室内オーケストラへの招待 Vol.3
「ウィーン古典主義〜古典派への新しいアプローチを求めて」
2014年6月28日(土)14時開演@京都コンサートホール・アンサンブルホールムラタ

◆F.J.ハイドン 交響曲第92番ト長調『オックスフォード』 Hob.I:92
(休憩)
◆L.v.ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調『英雄』 Op.55
(アンコール)
◇L.v.ベートーヴェン バレエ『プロメテウスの創造物』 Op.43〜フィナーレ

指揮:鈴木秀美
コンサートマスター:泉原隆志

 

席の埋まり具合は8〜9割ほど?鈴木さんのように古楽が専門の指揮者が京響を振るなんて滅多に無いことなのに・・・あれでも売れた方なのかしら?

閑話休題。

前半、ハイドンの『オックスフォード』。今日はコンマスが泉原さんで隣がアシコンの尾崎さん。弦セクションは第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2バイオリンの順に対抗配置で、コントラバスは客席から見て左後方、第1ヴァイオリンとヴィオラの後ろ。このコントラバスの配置は初めて見たような気がします。編成は8-8-6-6-4とコンパクト。他に目に付いたのがファゴット、ティンパニ、トランペットの位置。ホルン、フルート(清水さん)、オーボエ(1番は前後半ともシャレールさん)と並べた管楽器の1列後ろにファゴット(1番は前後半とも中野さん)を、ティンパニはオーボエの右隣り、更にその右にトランペット(稲垣さんと西馬さん)という、今まで見たことないような配置。何故このような配置にしたのがマエストロにぜひ尋ねてみたかったのですが、機会がなくて残念(苦笑)。演奏は予想通りのピリオド・アプローチでしたけど、今まで古楽系の指揮者との邂逅がほとんどなかったであろう京響も弦セクションが泉原さんのリードで思ったよりもしっかり対応してきてましたし、管楽器の音色もいつもと違う印象。モダン楽器でできるだけピリオド楽器の音色に近づけようとしていたのでしょうか。ともあれコンパクトな編成でのいつもと違うピリオド奏法により、楽章ごとの彩(カラー)が鮮明に浮かび上がっていて、終楽章での躍動感あるリズムとラストへの怒涛の畳みかけで締めくくられた素晴らしい結果を生み出してました。モダンオケの指揮者が聴かせるハイドンとはやはり一味違いますね。バッハを中心としたバロック音楽のジャンルでのこれまでの蓄積に加えて、オーケストラ・リベラ・クラシカでハイドンを数多くこなされてきた経験を京響にもフィードバックしてきて、オケ側もそれにしっかり応えていたように思いました。

後半のベートーヴェン、弦の人数を増やすかと思ってたら前半と同じ8-8-6-6-4の小編成。管楽器とティンパニは後方2列でホルンが前に2人と後ろに1人、前列は客席から見て左からホルン(1番は垣本さん)、フルート(1番は清水さん)、オーボエ、ティンパニ、トランペット(早坂さん、稲垣さん)。後列はホルン、クラリネット(1番は小谷口さん)、ファゴット。管楽器がピリオド楽器に寄せているという印象はハイドンよりもいっそう鮮明に受けました。管楽器がモダンのものそのままでああいう音色を出すのはかなり難しいように思うのですが、さすが京響の管セクションは優秀ですね(笑)。おかげで私がこれまで実演で聴いた中ではダントツで最も素晴らしい『エロイカ』の演奏を堪能できました。第3楽章と終楽章をほとんどアタッカで演奏したのも高ポイントでしたね。1,2,3+4で時間配分のバランスを上手くとったような形になりましたし、アレグロとアダージョで‘らしさ’を明確に描いていたのと、第2楽章の葬送行進曲でも部分部分を下手に変化付けて強調することなく流れるように進めていたことで、新鮮さが増した感がありました。モダンオケを振る世の大抵の指揮者はロマン派や現代音楽と並行してベートーヴェンを採り上げるので、バッハをメインとしたドイツ・バロック音楽を徹底的にやって、それからハイドンを経てベートーヴェンに至る鈴木さんのような古楽系の指揮者だと視点が違うのでしょうね。そうした部分がよりいっそう実感できた演奏でもありました。

鈴木さんもかなり熱のこもった指揮ぶりで、第1楽章の途中でカフスのボタンが外れて飛んでしまうほど(爆)。幸い指揮台のすぐ足元に落っこちてて見つけやすかったみたいでしたが、私は席が後方だったので、第1楽章が終わった後「何探してはんねん?」と思ったものでしたが。アンコールは初めて聴いた曲でしたが、『エロイカ』終楽章の主題と同じものが使われてるんですね。帰宅して調べてみたら『プロメテウスの創造物』 が先で、これの素材を後に書いた作品にも使ってるのだとか。ともあれ、愉快な音楽で大盛り上がりでした。

当初のアナウンスではアフタートークが予定されてたのですが、私がお手洗いを済ませてる間に半分くらい喋ってて、結局挨拶程度の短いものでした。サイン会もやってたしスケジュールが押してたとか?練習はゲネプロ入れて3日間だったかな、京響とは初めての共演ということで少し緊張もあったそうですが、「今日の演奏でこれっきりにならないように」と自虐ネタで笑いをとってましたけど、そうならないようにアンケート用紙に鈴木秀美さんの再招聘を要望として書いて提出させてもらいました(笑)。今回のピリオド・アプローチでのハイドンとベートーヴェンは聴衆に新鮮な感動を与えていたのはもちろんのこと、京響の団員にとっても新鮮で貴重な体験だったのではないでしょうか。カーテンコールの時に若手ほど熱心に拍手で迎えていたようにも見えました。


 

 



京都市交響楽団 京響友の会コンサート(指揮:広上淳一、2014年5月10日)

昨年は琵琶湖の船の上でやろうとして台風でポシャった会員向けのイベントですが、個人的には交通費かけて滋賀県くんだりまで遠出するのはお金=交通費も時間もかかって勘弁してくれって思ってましたので(だから実際に申し込まなかった)、一昨年や今年のようにホームタウンたる北山の京コンでやってもらった方がよっぽどありがたいのですが、一昨年は小ホールだったのが今回は大ホール、しかもレアなコンチェルトを3曲もってパワーアップしすぎです(爆)。フルトヴェングラーからカラヤンの代にかけてベルリン・フィルの首席ティンパニ奏者だったヴェルナー・テーリヒェンが作曲した曲が生で聴けるなんて、まさか自分の一生の中でそんな機会があろうとはつゆとも思わず、プログラムが公表されてからというもの、それはそれはもう楽しみにしていましたよ(笑)。

結論から言いますと・・・

今回のテーリヒェンとヒンデミットとアンリ・トマジの3曲、セッション録音でも改めてのライヴ録音でもいいのでCD化してリリースしてもらえないでしょうか?今日の1回きりというのはあまりにもったいなさすぎます!
>楽団長(門川京都市長)&副団長(奥美里・京都市文化市民局文化芸術担当局長)様

 

京都市交響楽団 京響友の会コンサート
2014年5月10日(土)14時30分開演@京都コンサートホール

◆W.テーリヒェン ティンパニ協奏曲 Op.34
◆P.ヒンデミット 木管楽器、ハープと管弦楽のための協奏曲
(休憩)
◆H.トマジ トロンボーン協奏曲
◆G.ビゼー 『カルメン』組曲
   〜前奏曲、アラゴネーズ、セギディーリャ、闘牛士、ハバネラ、闘牛士の歌、ジプシーの踊り
(アンコール)
 ◇G.ビゼー(E.ギロー編曲) 『アルルの女』第2組曲〜第4曲「ファランドール」

指揮:広上淳一
ティンパニ:中山航介
フルート:清水信貴
オーボエ:高山郁子
クラリネット:小谷口直子
ファゴット:中野陽一朗
ハープ:松村衣里
トロンボーン:岡本哲
コンサートマスター:泉原隆志(前半)、渡邊 穣(後半)
司会:椿あゆみ

 

フルトヴェングラーかカラヤンか』や『あるベルリン・フィル楽員の警告―心の言葉としての音楽』といった著作物は古本でも入手できるのに、録音の方はなかなか見当たらず、NMLにもなかったテーリヒェンのティンパニ協奏曲(1954年作)、今回幸運にも黄金期真っ最中の京響の演奏で聴くことができたわけですが、著書や過去の言動ではフルトヴェングラーへの敬愛とアンチ・カラヤンを示していたテーリヒェン、作曲はというとこの曲を聴いた限りではフルトヴェングラーのような後期ロマン派系統ではなくヒンデミットに少し似ているというか新即物主義・新古典主義のラインに連なる作風のような印象を持ちました。最後がちょっとジャパニズムっぽかったように感じたのは気のせいでしょうか?(大栗裕『大阪俗謡による幻想曲』―朝比奈隆さんがベルリン・フィルの定期に呼ばれた時に持っていった曲―からのインスパイアかと勝手に錯覚しましたがテーリヒェンのティンパニ協奏曲の方が作曲時期が早いので私の勘違いでした) で、私の席からは指揮台の右横に陣取っていたソリストの動きが丸わかりだったのですが、さすがベルリン・フィル首席団員の作だけあってティンパニを5台用意させて(ちなみにティンパニを囲むようにヴィオラとチェロの1プルトの前に透明の反射板が置かれてました)フル活用でしたね。音を出してる時は両手両足フル稼働、間がある時も手を休めずチューニングの微調整を頻繁にされてて、見るからに大変そうでした。曲自体はオーディションやコンクール等で必修らしいというのが肯ける良作で、また聴き直したいと思ったほどでしたが、どこかに録音残ってないですかねぇ・・・? やっぱり京響レーベルで出すしか・・・(笑)。

出来は演奏後にソリスト中山さん(29歳)とガッチリ握手をかわしていた泉原さん(前半のコンマス、仲良さそうに見えましたが歳が近いからかな?)の会心の表情が全てだったでしょう。演奏後は司会者のリードで広上さんと一緒にトーク。中山さんいわく、この曲の演奏は5・6回経験されてるそうですが、オーディションとかだとピアノ伴奏なのでフルオケをバックに演奏したのは今回が初めてだったとのこと。いつもステージ最後方にいるのが今回は指揮者右隣の最前列なので、音出しを合わせるタイミングの取り方の違いに慣れるのが一苦労だったようです。ちなみに広上さんはテーリヒェンの曲を指揮したのはこれが初めてだったとか。ともあれ、想像以上の良作品に若いティンパニ奏者の熱演は聴き手にとっても貴重な体験でしたし、彼が首席として京響にいる有難味を改めて感じました。

そして2曲目、ヒンデミット1949年作の、木管楽器・ハープと管弦楽のための協奏曲。やや小ぶりな編成のオケにフルート・オーボエ・クラリネット・ファゴット・ハープのソロが絶妙に絡み合うのですが、結婚行進曲のフレーズが出てきたりドイツ人のヒンデミットが敢えてフランス的なものを採り入れたりと、平易で親しみやすい中にも匠の技が凝縮されたようなユニークな音楽。京響の誇る木管首席陣が揃い踏みで本領発揮し美しいメロディーを奏でてくれてましたが、ヒンデミットは好きな作曲家ベスト5に入ると仰ってたフルート首席の清水さんは1995年7月13日の376回定期(井上道義指揮@京都会館)でもこの曲のソロを担当されたそうです。今日の演奏は彼以外のメンバーがゴッソリ入れ替わってますが、わりとインターナショナルな面子が揃っている京響において、オーボエ首席の高山さん、クラリネット首席の小谷口さん(演奏後に司会からマイクを向けられた時のリアクションが9年前と同じ初々しさだったのはご愛嬌w)、ファゴット首席の中野さんと何故か首席陣が揃ってドイツ系なんですよね。清水さんもジュリアード音楽院での師匠だった元ニューヨーク・フィル首席奏者ジュリアス・ベーカーが若い頃にロジンスキ、ライナー、ワルター、クーベリックといった独墺系を得意とする巨匠達の薫陶を受けてますし、そういう点では木管ソリスト4人のトーンが比較的近いので統一感があって、それぞれの技巧の冴え以外にも音色の響きや絡み具合を楽しめたのがよかったですね。

後半はコンマスが渡邊さんに替わり、プログラムもフランスもの。まずはアンリ・トマジ1957年作のトロンボーン協奏曲。所々ビッグバンドっぽかったりフレンチ・カフェっぽいムードがあったりとなかなかカラフルな音楽。帰宅してググったら技巧的にはかなりの難曲だと後で知って驚いたのですが、聴いていた時にはそういったのを全く感じさせなかったトロンボーン首席の岡本さんの演奏ぶり。お喋り好きなのかどうか知りませんが腕もよく回るけど舌も回るという感じで、演奏後のトークでもトロンボーンの歴史の古さ(スライドの原型は7世紀頃?まで遡れるとか)や、現在のような形になったトロンボーンが初めてオーケストラ作品に使用されたのがべ―トーヴェンの5番シンフォニーの終楽章だったとか〔※しとらす的補足:ベートーヴェン以前ではトロンボーンは神聖な楽器としてミサでの聖歌の伴奏とか教会での宗教音楽で用いられることは多くとも世俗的な場面で使われることが無かったため、交響曲といった宗教が絡まない世俗的ジャンルの作品で用いたのはベートーヴェンの交響曲第5番終楽章におけるのが記録上では初めて〕、広上さんと一緒にいろいろと薀蓄を語ってくださってました。

これまでの3つの協奏曲、ソリストを務められた方々のうちハープの松村さん以外は皆さん中学校の部活が楽器をはじめる最初のキッカケだったそうで、中山さんは小さい頃に親に無理やりピアノやらされたとか黒歴史?みたいな過去話してましたし、世の多くのピアニストやヴァイオリニストとは異なる日本の管楽器奏者独特のエピソードをそれぞれに持ってらしたのが面白かったです。

最後とアンコールはビゼーのお馴染みの曲から。『カルメン』の「闘牛士の歌」で朗々としたトランペットを奏でていたナエスさんを「ジプシーの踊り」に入る前に広上さんが一旦止めて立たせて客席に拍手を促せるサービスを見せていたのも、こういったイベントならではの一興でしたかね。

演奏会終了後の交流会でスタッフの方に伺ったところでは全体練習が2日しかなかったそうで、レアなコンチェルトを3つも採り上げたわりにはオケ側に定期ほどの練度まで達していなかったのは致し方ない側面もありましたが、それでも20世紀の冷戦時代初期にそれぞれ書かれた作品、しかも実演で接する機会がそうそう無いであろう曲を堪能するには充分でしたし、何よりも今回1度きりの一発芸みたいな感じで終わらせるのは勿体無いと聴き手に印象付けられただけでも大成功だったのではないでしょうか。テーリヒェン、ヒンデミット、トマジの3曲ともソリストは自前の首席奏者で賄えるし京響のストロングポイントが出せるしで、定期演奏会並みにもう少し練度を高めた上で再演の機会なりセッション録音してリリースするなりして、今日の演奏会に招待された会員だけでなく個人的にはより多くの人々に聴いてもらいたいと心から強く願っています。