京都市交響楽団 室内オーケストラへの招待 Vol.3(指揮:鈴木秀美)

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バロック・チェロの世界的プレイヤーとしてソリストとしてもバッハ・コレギウム・ジャパンの首席奏者としても活躍されているだけでなく、2001年にオーケストラ・リベラ・クラシカを創設して指揮活動もされている鈴木秀美さん。チェロ奏者としての演奏はバッハの無伴奏をリサイタルで聴いたことがありましたが、指揮の方は今まで見たことがありませんでした。
今回、京響の室内楽シリーズに客演されるのをチラシで見て、すぐに飛びついたのは言うまでもありません(笑)。

ハイドンの92番『オックスフォード』とベートーヴェンの『英雄』、京響初客演の鈴木さんの指揮が楽しみなのはもちろんですが、これまで古楽系の指揮者との共演自体がほとんどなかった京響がどんなリアクションを見せるのかにも興味がありました。

 

京都市交響楽団 室内オーケストラへの招待 Vol.3
「ウィーン古典主義〜古典派への新しいアプローチを求めて」
2014年6月28日(土)14時開演@京都コンサートホール・アンサンブルホールムラタ

◆F.J.ハイドン 交響曲第92番ト長調『オックスフォード』 Hob.I:92
(休憩)
◆L.v.ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調『英雄』 Op.55
(アンコール)
◇L.v.ベートーヴェン バレエ『プロメテウスの創造物』 Op.43〜フィナーレ

指揮:鈴木秀美
コンサートマスター:泉原隆志

 

席の埋まり具合は8〜9割ほど?鈴木さんのように古楽が専門の指揮者が京響を振るなんて滅多に無いことなのに・・・あれでも売れた方なのかしら?

閑話休題。

前半、ハイドンの『オックスフォード』。今日はコンマスが泉原さんで隣がアシコンの尾崎さん。弦セクションは第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2バイオリンの順に対抗配置で、コントラバスは客席から見て左後方、第1ヴァイオリンとヴィオラの後ろ。このコントラバスの配置は初めて見たような気がします。編成は8-8-6-6-4とコンパクト。他に目に付いたのがファゴット、ティンパニ、トランペットの位置。ホルン、フルート(清水さん)、オーボエ(1番は前後半ともシャレールさん)と並べた管楽器の1列後ろにファゴット(1番は前後半とも中野さん)を、ティンパニはオーボエの右隣り、更にその右にトランペット(稲垣さんと西馬さん)という、今まで見たことないような配置。何故このような配置にしたのがマエストロにぜひ尋ねてみたかったのですが、機会がなくて残念(苦笑)。演奏は予想通りのピリオド・アプローチでしたけど、今まで古楽系の指揮者との邂逅がほとんどなかったであろう京響も弦セクションが泉原さんのリードで思ったよりもしっかり対応してきてましたし、管楽器の音色もいつもと違う印象。モダン楽器でできるだけピリオド楽器の音色に近づけようとしていたのでしょうか。ともあれコンパクトな編成でのいつもと違うピリオド奏法により、楽章ごとの彩(カラー)が鮮明に浮かび上がっていて、終楽章での躍動感あるリズムとラストへの怒涛の畳みかけで締めくくられた素晴らしい結果を生み出してました。モダンオケの指揮者が聴かせるハイドンとはやはり一味違いますね。バッハを中心としたバロック音楽のジャンルでのこれまでの蓄積に加えて、オーケストラ・リベラ・クラシカでハイドンを数多くこなされてきた経験を京響にもフィードバックしてきて、オケ側もそれにしっかり応えていたように思いました。

後半のベートーヴェン、弦の人数を増やすかと思ってたら前半と同じ8-8-6-6-4の小編成。管楽器とティンパニは後方2列でホルンが前に2人と後ろに1人、前列は客席から見て左からホルン(1番は垣本さん)、フルート(1番は清水さん)、オーボエ、ティンパニ、トランペット(早坂さん、稲垣さん)。後列はホルン、クラリネット(1番は小谷口さん)、ファゴット。管楽器がピリオド楽器に寄せているという印象はハイドンよりもいっそう鮮明に受けました。管楽器がモダンのものそのままでああいう音色を出すのはかなり難しいように思うのですが、さすが京響の管セクションは優秀ですね(笑)。おかげで私がこれまで実演で聴いた中ではダントツで最も素晴らしい『エロイカ』の演奏を堪能できました。第3楽章と終楽章をほとんどアタッカで演奏したのも高ポイントでしたね。1,2,3+4で時間配分のバランスを上手くとったような形になりましたし、アレグロとアダージョで‘らしさ’を明確に描いていたのと、第2楽章の葬送行進曲でも部分部分を下手に変化付けて強調することなく流れるように進めていたことで、新鮮さが増した感がありました。モダンオケを振る世の大抵の指揮者はロマン派や現代音楽と並行してベートーヴェンを採り上げるので、バッハをメインとしたドイツ・バロック音楽を徹底的にやって、それからハイドンを経てベートーヴェンに至る鈴木さんのような古楽系の指揮者だと視点が違うのでしょうね。そうした部分がよりいっそう実感できた演奏でもありました。

鈴木さんもかなり熱のこもった指揮ぶりで、第1楽章の途中でカフスのボタンが外れて飛んでしまうほど(爆)。幸い指揮台のすぐ足元に落っこちてて見つけやすかったみたいでしたが、私は席が後方だったので、第1楽章が終わった後「何探してはんねん?」と思ったものでしたが。アンコールは初めて聴いた曲でしたが、『エロイカ』終楽章の主題と同じものが使われてるんですね。帰宅して調べてみたら『プロメテウスの創造物』 が先で、これの素材を後に書いた作品にも使ってるのだとか。ともあれ、愉快な音楽で大盛り上がりでした。

当初のアナウンスではアフタートークが予定されてたのですが、私がお手洗いを済ませてる間に半分くらい喋ってて、結局挨拶程度の短いものでした。サイン会もやってたしスケジュールが押してたとか?練習はゲネプロ入れて3日間だったかな、京響とは初めての共演ということで少し緊張もあったそうですが、「今日の演奏でこれっきりにならないように」と自虐ネタで笑いをとってましたけど、そうならないようにアンケート用紙に鈴木秀美さんの再招聘を要望として書いて提出させてもらいました(笑)。今回のピリオド・アプローチでのハイドンとベートーヴェンは聴衆に新鮮な感動を与えていたのはもちろんのこと、京響の団員にとっても新鮮で貴重な体験だったのではないでしょうか。カーテンコールの時に若手ほど熱心に拍手で迎えていたようにも見えました。