京都市交響楽団 第559回定期演奏会(指揮:広上淳一)

「リンツ」を挟んでのリヒャルト・シュトラウス・プログラム。なんとはなしにCD録音あるかもなぁ・・・と予想しながら行ったのですが、ホールに入ってみると案の定ステージに(放送用とは思えない)録音用のマイクがたくさん並んでました。パンフを開くと9頁下にCDリリースのインフォメーションが記載されてあって、それには今回の「ばらの騎士」と来年3月の566回定期でのハチャトゥリアン「仮面舞踏会」を収録予定とありましたが、1曲目に合わせたマイクの立て方を見るに、結果が良くて要望さえあれば全部出す気満々でしょ、これ?(笑) 実際2枚目のCDの時は「ローマの祭」が大好評だったのでCDの容量限界でも収録した経緯がありましたし。

プレトークは今回のパンフの解説を執筆された音楽評論家の奥田佳道さんが広上さんに呼ばれて2人の対談形式で行われました。今回のプログラミングにとは何だったのか自分の見解を述べつつ評論家らしい質問が奥田さんからありましたが、広上さんの答えは
「学者じゃないからそこまで深く考えてなかった」
・・・ってをい!w
それはともかく、奥田さんと広上さんとで上手く話を引き出し合ってたので、なかなかいいお話が聞けました。『ばらの騎士』組曲はシュトラウス本人の手によるものではなく、編曲者についてはこれまでもロジンスキー他複数の説があったようですが、NYフィルに残されたアーカイヴ(この曲は1944年にロジンスキーの指揮でNYフィルが演奏したのが最初)を調べたかぎりではロジンスキー説でほぼ間違いないだろうと米国の研究者から今朝方メールで返答をもらった、そんな裏話を奥田さんがされてました。

ちなみに、プレトークではサントリーホール・札幌Kitara・ミューザ川崎などの音響設計を手がけられ、京都コンサートホールの音響設計も担当されている永田音響設計[http://www.nagata.co.jp/]永田穂さんも会場にいらしてるとのことでした。特に名指しでの紹介はなかったので、どこの席にいらしたのかまではわかりませんが・・・。

 

京都市交響楽団 第559回定期演奏会
2012年7月20日(金)19時開演@京都コンサートホール

◆R.シュトラウス 13管楽器のためのセレナード変ホ長調 Op.7
◆W.A.モーツァルト 交響曲第36番ハ長調 K.425「リンツ」
(休憩)
◆R.シュトラウス 交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』Op.28
◆R.シュトラウス 『ばらの騎士』組曲 AV.145〔※編曲:アルトゥール・ロジンスキー〕

指揮:広上淳一
コンサートマスター:泉原隆志

 

1曲目、フルート2+オーボエ2+クラリネット2+ファゴット2+コントラファゴットの木管9人にホルン4の計13人という珍しい構成によるセレナード。作曲者が18歳の頃の若書きで、モーツァルトの「グラン・パルティータ」を意識したのでは?とプレトークでも触れられていた曲。首席揃い踏みとあって柔らかな響きで奏でられるサウンドは絶品でした。これは中学・高校で吹奏楽やってる子どもたちにぜひ聴いてほしかったですね。無名な曲ではあってもきっと良いお手本になったはずです。10代の客が少なかったのがつくづくもったいなかったよなぁ・・・。

2曲目の「リンツ」。今回は4曲もあるのでどこかで少しダレるかもと危惧してて、その筆頭として予想してたのが「リンツ」だったのですが、全くの杞憂でした。思えば私が広上さんを素晴らしい指揮者だとファンになるほど認識したのは十数年前に仙台フィルの定期で彼のモーツァルト(曲は忘れましたが・苦笑)を聴いたからなのですが、あの日の随所に才気を漲らせてフレッシュさに満ちた演奏とはやや趣きが異なり、この日の「リンツ」は溌溂として歯切れの良さを感じさせながらも大人の雰囲気をも纏ったような印象でした。おやっ?と思ったのは第1楽章の3小節目の四分音符のようにテヌートの指定があって通常なら長めにのばす音を音長通りに区切っていたこと(楽譜を見たことなくて耳から聴いただけの人には少し違和感があったかもしれません)、スラーがかかっている部分とそうでない部分はくどいほど弾き分けていたこと、などでしょうか。古楽器オケがやるかもしれないような工夫をそこここで見せていたので、フル編成のモダンオケにもかかわらず随分と新鮮に感じました。弦の響きが柔らかく透明感あるものだったことも高ポイントでしたね。

そして後半、まずはティル。帰宅してググってわかったのですが、この曲はどうも広上さんがかつてキリル・コンドラシン・コンクールで優勝した時の課題曲だったそうで。だからでしょうか、いかにも自家薬籠中といった感じの指揮と仕上がりでしたし、冒頭のホルンからして管楽器の見せ場がビシバシと極まりまくってて、Tuttiでの大音響はそれはもう素晴らしいほど鮮やかな響きでした。永田さんに是非感想を伺いたいところでしたね(だってここのアコースティックは・・・もごもご・・・ですし・苦笑)。随所で顔をのぞかせるいたずらっ子的な表情など細部の表現にも手抜かりなくて、これはぜひCD化していただかねば(笑)。

3曲目までがどれもほぼ満点に近い演奏でしたので、こうなると最後でオケがヘバってしまわないか心配だったのですが、今回に限っては全くの杞憂でしたね。皆しっかりトップギアのまま集中してて、こちらも素晴らしい演奏でした。プレトークで聴きどころだからと奥田さんからプレッシャーかけられていた?泉原さんのワルツでのソロもとても良かったです。『ばらの騎士』特有の艶っぽい響きを弦セクションがもう少し表現できていれば100点満点の出来だったのですが、あいにくウィーン・フィルやシュターツカペレ・ドレスデンとかじゃないし、オペラ慣れしていない日本のオケじゃ難しいでしょうかね。それでもA評価はあげられる好演出会ったことは疑いないものでした。

今回はリヒャルト・シュトラウス(プレトークでも触れられてましたが父親がホルン奏者だったそうですね)が3曲で、管セクションにとっては見せ場も多い反面でちょっとでもミスれば地獄を見るプログラムだったと思うのですが、全く隙の無い演奏で、京響の管セクションの実力を十二分に披露できていたのではないでしょうか。特にホルンは大活躍でしたね。京響の誇る管セクションの首席陣だけでなく、ホルンセクション全員の頑張りが今日の演奏を下支えしていたように思いました。弦セクションも終始透明で美しい響きながらも音の厚みに欠くことは全く無かったですし、これは4曲ともぜひCD化してもらわないといけません!データ量がCD1枚分に収まるかどうかわかりませんが(をい)。