京都市交響楽団 第572回定期演奏会(指揮:マックス・ポンマー)

本題に入る前にちょっとしたお知らせ。

1.既報ですが『京都市交響楽団定期演奏会 名曲ライブシリーズ 3』が9月20日発売です。Amazonでも購入可能です!

2.昨年の組織改組以来、昨年と今年と8月定期に登場した京響コーラスですが、今日もらったメンバー募集のパンフの記載から推測するに、どうやら来年8月定期のメイン曲はジョン・ラターのマニフィカトのようです。これは素晴らしい!ちょっとNMLで自作自演のを聴いてみましたけど、歌詞こそマニフィカトというキリスト教聖歌のラテン語テキストを用いてますが、音楽の方はあまりクラシックらしくないというか、むしろかなりポップな雰囲気のする馴染みやすいトーンです。知らない作曲家だから、20世紀後半のゲンダイオンガクだから、とそれだけで敬遠するのはとてももったいない曲ですし、ぜひとも一切の先入観を持たずに生で聴いてもらいたいですね。指揮は誰だろう?昨年のプーランクはミッチーで先月は広上さんでしたけど・・・マジでチョー楽しみです!

 

閑話休題。

プレトーク、マエストロと一緒に登場した通訳の方は・・・菅野ボッセ美智子さん。そう、先年亡くなられたゲルハルト・ボッセさんの奥様です。いや、日本人で歳の離れた女性と結婚されてたのは知ってましたけど、お顔とかフルネームとかまでは全然存じ上げてなかったので、あんな若い方だとは思いませんで・・・。ポンマーさんは生まれも育ちもついでに音楽教育もライプツィヒですので、昔のゲヴァントハウス管の演奏会で観て聴いたコンマスのボッセさんの話題をひとしきりした後は、故郷ライプツィヒと縁の深いメンデルスゾーンの曲の解説と、彼自身は忘れていたけれどティーンエイジャーだった頃の小菅さんと北部ドイツのとあるサマーフェスティヴァルで協演したことがあったというエピソード(小菅さんがサマフェス期間中のあるコンクールで1位?を取ってオーケストラとコンチェルトを演奏する機会を得て、そのオケを指揮していたのがポンマーさんだったそうな)を披露しながら彼女の演奏に注目するよう紹介したり、時折ジョークを交えながら楽しいプレトークをお話しされてました。ちなみにエロイカに関しては一切言及なし(笑)。

会場の入りはというと・・・残念ながら連続記録という点ではマー君に負けてしまいましたね(苦笑)。完売御礼とまではいかなかったようです。それでも客は結構入ってたので、演奏会が終わってから後で思ったのですが、これならメインをエロイカにすることもなかったんじゃないかと・・・同曲わりと最近でやってませんでした?アツモンさんの時だっけ・・・私が会員に入ってない頃でチケット買ってまでと思い聴きに行かなかった記憶があるのですが。

 

京都市交響楽団 第572回定期演奏会
2013年9月6日(金)19時開演@京都コンサートホール

◆F.メンデルスゾーン 序曲『フィンガルの洞窟(ヘブリディーズ諸島)』 Op.26
◆L.v.ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番ハ長調 Op.15
 (ピアノソロ・アンコール)
 ◇R.シューマン 子供の情景 Op.15〜第13曲:詩人は語る
(休憩)
◆L.v.ベートーヴェン 交響曲第3番ホ短調『英雄』 Op.55

指揮:マックス・ポンマー
ピアノ:小菅 優
コンサートマスター:泉原隆志

 

まずは『フィンガルの洞窟』。プレトークでメンデルスゾーン嫌いのワーグナー(まぁ彼のユダヤ人嫌いは思想的な大袈裟なものではなく単なる個人的怨恨でしかないのだけど)が唯一褒めたというエピソードを紹介されてましたけど、1曲目にしてはキッチリした仕上がりだった印象。

2曲目、ベートーヴェンのPコン1番。よくよく考えてみたら意外に生で聴く機会がなかったりする曲。ピアニストも似たようなもんじゃないかな(協奏曲ツィクルスでもやらんかぎり演奏機会なくない?)という気がしなくもないのですが、ピアノ・ソナタ全曲演奏シリーズを現在進行形で行ってる最中の小菅さん、その成果はこの1番協奏曲にもしっかりフィードバックしてくれたようです。第1楽章のどこかでミスタッチっぽいのもありましたけど、すぐに持ち直しましたし、オケと一緒になっての第2楽章から終楽章への静→動の切り替えもバッチリ決めて、ベートーヴェンの初期の様式を踏まえての形式美を感じた充実の演奏でした。なんかお祖父ちゃんと孫娘の共演みたいな感じで指揮者とソリストが互いをよく見て合わせてるようにも思えて、指揮者・オケとソリストの空気感がちょっと微笑ましかったです。あと、小菅さん、ポンマーさんとハグした後に今日のコンマスだった泉原さんともハグしてましたけど、彼が若手イケメンじゃなかったらどういうリアクションをとったのかなぁ〜(イジワルなニヤニヤ)。

そして後半、メインのエロイカ。まずポンマーさんの年齢とライプツィヒ出身(=旧東独育ち)とかから想定していたよりも速めのインテンポで終始一貫していたのが驚きでした(それでもリピートはちゃんとやってたのでカーテンコールも終わってお開きになったのが21時半頃でしたけど)。昔のドイツらしい独特の渋さとか円熟味とかからは少しかけ離れたというか随分と若々しい音楽という印象を受けました。余計なハッタリもなく全4楽章ストレート1本勝負みたいな・・・京響も弦セクションが頑張ってた反面でいつもはかなりアピールの目立つ管セクションが良くも悪くも控えめ(ホルンが全体的に本調子ではなかったような)でしたし、ポンマーさんがああいった芸風でしたから、同じベートーヴェンでも7番の方が互いのストロングポイントが上手く噛み合って、もっと素晴らしい音楽を作れたのではないかというのが正直なところです。更に言うとベートーヴェンを避けてモーツァルトにするかメンデルスゾーンの『イタリア』でもやるか、どうせ名曲選みたいなプログラムだけでは客を釣る伸びしろがないレベル(もちろん良い意味でですが)にまで来ている現状を考えれば、同じ独墺系でもいっそのこと現代モノにするとかの方がポンマーさんと京響の組み合わせ的にはずっとベターだったように思いました。というか、エロイカがベートーヴェンの芸風の切り替え時期の作で、彼のシンフォニーにしては形式的にも音楽の内容的にも未完成というか中途半端なところが無きにしもあらずという、そういった変な難しさを抱えているのを改めて現前に突きつけられたような感じです(フルトヴェングラーの“ウラニアのエロイカ”くらい突き抜けたものならともかく其れも彼にしかできない芸当ですし)。皮肉なもんですね。

というわけで、実年齢よりはずっと若々しく見えたポンマーさん、ぜひとも再演を願いたいところですが、仮にまた京都に来てくださるのなら、今度はもっとお好きなようにハッチャケたプログラムでお願いします(笑)。

あと、来年度の定期のプログラムは当然ながらまだ発表されてませんけど、先月の定期のレセプションで広上さんがプログラミングで冒険したそうなことを喋ってましたし(少しずつ新しいメニューを加えていくので食わず嫌いにならずにぜひ聴いてみてほしい・・・みたいな言い回しだったかな?)、来夏のラターのマニフィカトとかもう大歓迎で、京響のカラーとストロングポイントに見合ったチャレンジをドンドン進めてほしいと願います。