京都市は伝統的な京町屋を「スマートハウス化」する取り組みを進めている・・・というお話

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“電力とエネルギーを知る・買う・生かす”をキャッチコピーに節電・蓄電・発電に関する役立つ最新情報を紹介しているWEBサイト『スマートジャパン[http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/]』というのがあるのですが、そこに京町家を使った面白い試みがなされている記事を見かけました。伝統的な木造建築の京町家で省エネどころか、HEMS (home energy management system) と呼ばれる家庭のエネルギー管理システムで家電、太陽光発電、蓄電池、電気自動車等を一元的に管理する住宅、いわゆる‘スマートハウス’をやってしまおうというのです。京都市の様々な助成制度を活用した実験になっているようですが、こういった市民の利益に手早く直結しそうな有効策には遠慮なく税金を使って実現させてほしいですね。

 

京都の伝統家屋をスマート化、どうやって?
【スマートジャパン:畑陽一郎 2014年8月13日】

京都市は伝統的な京町屋を「スマートハウス化」する取り組みを進めている。省エネ・創エネなどの最新設備を取り入れるだけでなく、自然を生かす知恵や工夫と省エネルギー改修に役立つ現代の建築仕様を組み合わせて実現した。

 エネルギー問題のカギは発電所だけにあるのではない。利用する側の改善が必要だ。国内では住宅に対する取り組みが遅れており、特に木造既築住宅にはあまり手が入っていない(関連記事)。木造既築住宅では壁や窓の性能を高めることが、省エネルギーに役立つ。加えて、建物全体のエネルギー性能を高めなければならない。

 京都市が進める取り組み「京都市次世代環境配慮型住宅~エコリノベーション・京町家~」は、このような問題意識に加えて、伝統的な外観の維持にも配慮している(図1)*1)。

[*1) 「エコリノベーション」という用語には4つの観点が含まれているという。(1)エネルギーや二酸化炭素排出量の削減、(2)現代のライフスタイルに合致、(3)住宅の価値が高まる、(4)比較的規模の大きな改修、である。]
Yh20140813kyoto_map_250px図1 京都市下京区の位置

 「都心部の古い住宅の保全再生が目的だ(図2)。古い住宅の良さを生かして新しい設備を入れてエネルギー利用を改善する、このようなリノベーションの1モデルを普及促進したい」(京都市産業観光局新産業振興室)*2)。機器の組み合わせをパッケージ化して普及させるというよりも、古い住宅でどのような効果があるのかを、その工夫を見せたいのだという。

[*2) 京都市は2010年にスマートシティ京都研究会を設立し、都心部における京都の住宅の在り方を職住共存地域分科会で研究。今回の次世代環境配慮型住宅の実証事業に至った。2012年以降の議論の結果、住宅のエネルギー利用を高めるには地域コミュニティーを通じたエネルギー融通が必要だという結論に達したという。]
Yh20140813kyoto_house_318px図2 京町屋の外観 出典:京都市

 「京都の町中では屋根面積が小さいことから太陽光発電システムもあまり普及していない。しかし、京町屋であっても実際にある程度の太陽光を導入できることを見せたかった。(都市ガスを利用して電気と温水を生み出す家庭用燃料電池)エネファームにも似たような課題がある。この規模の住宅だと(設置が難しく)導入例が少ない。だが、エネファームは災害時にはバックアップ電源にもなる。太陽光と並んで役立つ設備だと考えている」(同室)*3)。

[*3) 京都市には住宅改修、断熱工事、住宅窓改修などの建物の省エネリフォームの他、太陽光発電システムや蓄電池などの助成制度があり、今回の改修でもこれらの助成制度を利用した。]

どのような住宅なのか

 改修の対象となった住宅は京都市下京区にあり、もともとは青果店だったという。五条通と堀川通の交差点である堀川五条の南東側の区画に位置する。小規模な住宅が集まる住宅地だ(図3)。住所は京都市下京区油小路通五条下る卜味金仏町(ぼくみかなぶつちょう)178番地5。
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図3 改修住宅の所在地 出典:京都市

 改修の対象となった住宅は、連棟住宅のうちの1棟。いわゆる長屋であり、建物の構造材などが連結している。一般にリフォームが難しいとされるタイプの住宅だ。独立したスマートハウスを新築で立ち上げるよりも数段難しい取り組みだ(図4)。住宅は2階建であり、延床面積は84.17m2(1階部分44.03m2、2階部分40.14m2)。
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図4 改修前後の外観 出典:京都市

どのような改修を施したのか

 改修の内容は、大きく2つに分かれる(図5)。エネルギー関連設備の導入と、主に熱性能に関係する受動的な建築仕様の導入だ。

 まず、太陽光発電システムを南側の屋根面に2.28kW導入できた。街並みの景観と調和しつつ、利用できるということだ。「太陽光発電システムの設備全体を京セラソーラーコーポレーションが提供した。ただし、太陽光発電の見える化などは日進システムズのHEMSを用いる」(京セラ)。HEMSは太陽光発電以外にも、住宅内の電力とガスの消費量や温湿度を計測し、エネルギーの見える化を担う。

 エネファームでは大阪ガスが協力した。発電効率と熱回収効率を合計すると、ガスが持つエネルギーの95%を利用できる設備だ*4)。「太陽光発電システムとはダブル発電の扱いになる」(京セラ)。今回の住宅は連棟住宅であり、室外に設置するエネファームの導入は難しかったが、小規模ながら庭スペースがあったことから、庭の景観を乱さないように配置できたという。

 空調は床下設置とした。京都の冬季の底冷えを防ぐ温風を得るためだ。

[*4) 大規模発電所ではガスが持つエネルギーのうち、41%しか利用できない。送電ロスはもちろん、排熱をあまり利用できないことが効率の低い原因だ。]
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図5 改修の内容 出典:京都市

 受動的なエネルギー対策は主に4点ある。住宅に出入りする熱の入り口のうち、最も大きいのは窓だ(関連記事)。そこで、複層ガラスを導入して断熱性を高めた。照明に掛かる電力を抑えるため、屋根面から採光できるトップライトを設けた。屋根自体にも断熱改修を施し、耐震補強も追加した。京町屋で使う土壁も断熱改修を加えて残した。

1年間生活して効果を測定

 「今回の改修は対象が伝統家屋であること、複数の省エネルギー機器や(受動的な)窓や壁の改修を含んでいることから、エネルギー消費量などの削減目標を事前に立てていない。その代わり、2015年2月から1年間、居住者に協力を依頼して効果を測定する」(同室)*5)。

 電力とガスの使用量の他、室内外の温度湿度を計測し、省エネ効果を分析する他、居住者へのアンケート調査も行う。

 今回の改修では、京都市次世代環境配慮型住宅エネルギー実証協議会が事業主体となった。協議会には大阪ガス、冨家建築設計事務所、日進システムズ、八清、京都高度技術研究所、京都市が参加している。大阪ガスはエネファームを供給、冨家建築設計事務所が全体の設計を担当し、日進システムズはHEMSを提供した。住宅を所有し、2014年8月30日から販売するのは八清だ。京都高度技術研究所は京都市の外郭団体であり、スマートシティ京都研究会で京都市と連携して研究・企画を進めてきた。

 「今回の事業の予算は2013年度と2014年度を合わせて約1100万円。2015年度からは新たに実証研究(計測分析)の予算を組む予定だ」(京都市産業観光局新産業振興室)。

[*5) 省エネ効果の前提となる建物外壁や内壁の熱伝導率や熱損失率は京都大学大学院工学研究科(鉾井修一教授、伊庭千恵美助教)の協力を得て、改修前後に計測、分析する。]