ブリテン:戦争レクイエム/マリス・ヤンソンス&バイエルン放送響、他

さて、昨日NMLに登録されたディスクの中で個人的に注目したいもの、ラストはこれです。ドイツのバイエルン放送の自主レーベルから2種のディスクが今回登録されていて、セールス的にも一般のファンの関心度からも普通ならベートーヴェンの交響曲全集+現代作品集の方に目が行きがちでしょうけど、ここは敢えて『戦争レクイエム』を採りたいと思います。

この演奏は今年3月のバイエルン放送交響楽団の定期公演をライヴ収録したものなのですが、事前に演奏会のスケジュールとプログラムを組んだ人たちからしてみれば、まさかコンクラーヴェでアルゼンチン人のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿がラテンアメリカ出身者初かつイエズス会初のローマ教皇として選出されて新教皇フランシスコが誕生した時と、定期で『戦争レクイエム』を演奏する日程がドンピシャで重なるとは、いくらなんでもまったく想像すらしていなかったでしょう(笑)。ドイツ内でもカトリック信者の多いバイエルンで、教皇フランシスコの選出をどのように受け止めたのかは私にはわかりません。ですが、ヤンソンスもバイエルン放送響を中心とした演奏者たちも『戦争レクイエム』という大曲を演奏するにあたっては元から入念な準備をしていたはずで、いざ本番を迎える頃に新教皇フランシスコ選出のニュースが飛び込んできて、この稀有な運命の巡り会わせに演奏者側も当日のミュンヘンの聴衆も何も感じ入るものがなかったいうことは、さすがにないだろうという気がしますが、さてさて・・・。

私自身は恥ずかしながらブリテンの代表作『戦争レクイエム』を聴きこんでいる人間ではないので、他の同曲の録音と比較してどうかとかまでとても言及できません。ただ、このライヴ録音からはバイエルン放送響の真の実力というか、フォルティッシモからピアニッシモに至るダイナミックレンジの幅と音の密度の濃さや純度の高さなど、本気度がマックスに近ければベルリン・フィルとほとんど遜色ないレベルにある(最近リリースされたラトル&ベルリン・フィルのラフマニノフがとてもナマヌルく感じるほど)ことと、ヤンソンスのタクトから生み出された音楽がパッションを内に秘めつつ全体の構築力と細部の緻密さのバランスが安定した充実度の高いものであること、第6曲「Libera me」の最後の部分が崇高な美しさに満ちていて心が芯から浄化されていくような印象を持ったこと、これくらいは言えるかな、と・・・。

惜しむらくはガスタイクの音響がデッドに過ぎるのがネット配信越しでもわかってしまうことと、販売されるディスクがハイブリッドSACDではなく通常CDフォーマットなこと、くらいでしょうか。このライヴ録音はぜひSACDの音質で味わってみたいところですね。でなければ、映像も一緒に撮っていればBDで出してくれへんかな〜とか。

歴史的に異例尽くしとなった新ローマ教皇の選出と時を同じくして演奏された、強い反戦思想をバックボーンとするブリテンの『戦争レクイエム』。今まさにシリア情勢が微妙なことになっていて、幸い軍事衝突は避けられそうな流れに傾きつつあるようですが、このまま戦火が起きないよう祈りをこめて(特にアメリカの軍産複合体とフランスの好戦派に強い抗議の意を表して)、このヤンソンスとバイエルン放送響によるライヴ録音を紹介しておきたく思います。

 

ブリテン:戦争レクイエム/マリス・ヤンソンス&バイエルン放送響、他(2CD)【BR KLASSIK】

ベンジャミン・ブリテン
・戦争レクイエム Op.66

指揮:マリス・ヤンソンス
管弦楽:バイエルン放送交響楽団
合唱:バイエルン放送合唱団、テルツ少年合唱団
ソプラノ:エミリー・マギー
テノール:マーク・パドモア
バリトン:クリスティアン・ゲルハーヘル
オルガン:マックス・ハンフト

録音時期:2013年3月13-15日(ライヴ)
録音場所:ミュンヘン、フィルハーモニー・ガスタイク

http://ml.naxos.jp/album/900120

900120