リヒャルト・シュトラウス『英雄の生涯』・・・2枚のライヴ録音盤/ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデン、ハイティンク&シカゴ響

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明後日に迫った京響定期、後半メインはリヒャルト・シュトラウスの交響詩『英雄の生涯』です。これはもう今更というか、7年前の4月に京響と大フィルがどっちも定期のメインで採り上げて1ヶ月で2度も生演奏を聴くことになったという、滅多に無いような機会もあったりしたわけですが、実演ではアレ以来あったっけ?・・・と思って、こちらもNMLのリスト漁りからはじめてみました。

・・・そうしたらまぁ、作曲者本人が指揮したのとかメンゲルベルク&コンセルトヘボウのコンビ(ご存じの方も多いと思いますが『英雄の生涯』はこのコンビ両者に献呈されてます)のとかトスカニーニとか古い録音からもいくつか出てきまして・・・モノ珍しさでそっちをここで採り上げてもいいのですが、デジタル録音当たり前の時代でしかも実演でも聴いたことがあるものをわざわざSPモノラルで聴くのも、単なる興味本位と記録確認以外の理由ではただ興醒めするだけですので、今回は他のを・・・とピックアップしてみたのか下の2枚のディスクです。

 


 

まずはルドルフ・ケンペとシュターツカペレ・ドレスデンによる演奏。この両者でEMIにシュトラウスの管弦楽作品全集をセッション録音していますが、今回採り上げる演奏は旧東独ドレスデン放送によるライヴ収録のものです。Profil は Hänssler Classic[http://www.haenssler-classic.de/]の創始者ギュンター・ヘンスラーによる新レーベルで過去のライヴ音源をCD化するのがメインのようですが、このディスクにも「Staatskapelle Dresden Edition 28」と銘打ってありますので、当然“28”の前にいろいろとリリースされてるはずです(探すのがメンドイので今回はそこには触れません・苦笑)。

 

リヒャルト・シュトラウス『英雄の生涯』、他/ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデン、他 (2CD)【Profil】

リヒャルト・シュトラウス
・交響詩『英雄の生涯』 Op.40
クロード・ドビュッシー
・牧神の午後への前奏曲
ロベルト・シューマン
・ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54

指揮:ルドルフ・ケンペ
管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン
ピアノ:マルコム・フレージャー
ヴァイオリン:ペーター・ミリング[英雄の生涯]

録音時期:1974年3月15日
録音場所:ドレスデン、クルトゥアパラスト(DDRドレスデン放送によるライヴ収録)

http://ml.naxos.jp/album/PH08053

Ph08053

 

収録曲から推測すると1つの演奏会をまるまる収録したものかな・・・と予想していましたが、外国語のアーカイヴを探すまでもなく日本語でググって簡単に見つかりました。このページ(※注:私も度々拝見してよく参考にさせてもらった『An die Musik』は残念なことに今月いっぱい、2013年4月末を持って閉鎖されるそうです)によると1973-74シーズンの第8回定期演奏会をライヴ収録したものだそうです。プログラミング的に当日の演奏曲順はおそらく 牧神→シューマンp協→英雄の生涯 だったと思います。

で、真っ先に思ったのは、

ライヴ最高!!!www

「英雄の戦場」での高揚感が半端なく凄いです。最初の出だしからコツコツと丁寧に積み上げてきたものが正に花開いたかのように全力全開の大迫力を生み出しています。得にブラスセクションは大男の英雄による勝利者の雄叫びの如く重厚なサウンドでの大咆哮で聴き手を圧倒します。解釈自体はセッション録音とさして変わらず作為的なものが全く無い、このオケ特有の燻し銀のような音色をベースにした自然で質実剛健なものですが、セッション録音と生ライヴの違いを改めて感じずにはいられない印象です。

あと、EMI盤と違うのは、この演奏会ではヴァイオリンを対向配置にしていること。40年前の放送収録ではあっても一応ステレオ録音ではありますので、弦の響き方や聴こえ方がEMI盤とはまた違った魅力を見せてくれます。しとらす的にはこの対向配置の方が好みかなぁ・・・。

そして、他の2曲。『牧神』はさすがにフランス印象派的な雰囲気は見られませんが、オケの木質的なトーンを活かしたデリケートで美しい演奏はドビュッシーファンも充分納得のいくものだと思います。シューマンのピアノコンチェルトもソリストと指揮者・オケの息がピッタリ合っていて実に堂々とした素晴らしい演奏です。上品な美しさそのままにクライマックスに向けて熱を帯びていく様は大いに充実感を満たしてくれます。

 


 

さて、もう1枚のディスクはシカゴ交響楽団[http://cso.org/]の自主レーベルからリリースされているものです。シカゴ響がハイティンクと共に4年前に来日した際にはプログラムの中に『英雄の生涯』をメインにしたものもあったそうで、その実演に接した方も多いと思います。このディスクに収録されているのは当時の来日公演の3ヶ月前に地元の定期演奏会で演奏したもののようですね。

 

リヒャルト・シュトラウス『英雄の生涯』、ヴェーベルン:夏風の中で
 /ベルナルト・ハイティンク&シカゴ交響楽団
【CSO Resound】 [Hybrid SACD]

リヒャルト・シュトラウス
・交響詩『英雄の生涯』 Op.40
アントン・ヴェーベルン
・大管弦楽のための牧歌『夏風の中で』

指揮:ベルナルト・ハイティンク
管弦楽:シカゴ交響楽団

録音時期:2008年12月4-6日(英雄の生涯)、2009年4月23-25,28日(夏風の中で)
録音場所:シカゴ、シンフォニーセンター・オーケストラ・ホール[DSDライヴ]

http://ml.naxos.jp/album/CSOR9011002

Csor9011002

 

80歳にならんとする人だからこそできたのか、それとも80歳手前の人とは思えないと言うべきか・・・やっぱり前者の形容が近いですかね、ともかくシカゴ響の持つ卓抜した技量とパワーを全て構築美と内なるパッションの表現に費やしたかのように感じました。ミケランジェロ作のダビデ像(私は写真画像でしか見たことないですが)のよう・・・それも違うか・・・う〜ん、どう言えば適切ですかね?出だしの低音の腹に響くような感じとか「英雄の戦場」での大迫力とかシカゴ・サウンドらしさがチラチラ顔を出してましたけど、「英雄の業績」から「英雄の隠遁と完成」にかけての“静”の部分での美しさが同じくらいかそれ以上に際立っていたように思いました。

ちなみに、シカゴの現地紙では

「ハイティンクは静かに演奏するところで、このオーケストラがまさにどれだけ美しく演奏するかをわかっていますし、ほかのだれでもない流儀で静かに演奏させます。(中略)ブラスと木管は、きっと作曲家をニンマリとさせたに違いない方法で結びつけられます。」

といった論評があったそうですが・・・。

併録されているヴェーベルンの『夏風の中で』は彼の初期の管弦楽作品だそうですが、指揮者のハイティンクは実演でわりと好んで演奏しているそうで、反対にオーケストラ側のシカゴ響はこの曲を演奏会や録音で採り上げるのは以外にも初めてだったとか。ロマンティックな美しさに溢れた音楽ですが、こちらもなかなかの秀演でした。