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京都市交響楽団 第618回定期演奏会(指揮:下野竜也)

パンフの解説を見てビックリしたのだけど、ジョン・アダムズの『ハルモニーレーレ』は1986年に日本初演(下野さん曰くケント・ナガノと新日フィル?だったかな)されて以来、一昨年に下野さんが読響の定期で採り上げるまで30年近く日本では誰も何処も演奏してなかったそうな。数ある在京オケがどこかしらやってそうに思ってたけど、そうでもないのんな・・・もちろん、西日本では今回の京響定期が初めて。欧米での知名度や評価、演奏頻度と日本の事情とのギャップはこういうところでもあるんですね。つべでも作曲者自身がベルリン・フィルを振ったのとか拾えるのにね。

プレトークは『ハルモニーレーレ』にちなんで和声に関するちょっとした豆知識的なお話。作曲家がある特定の(◯長調や◯短調といった)調に何かしら特別の意味合いを持たせることがあるということでモーツァルトやベートーヴェンを引き合いに出しながらお話しされて、ベートーヴェンは“変ホ長調”を交響曲第3番『英雄』と今回演奏するピアノ協奏曲第5番『皇帝』で用いてて(帰宅してググったら作品番号1-1のピアノ三重奏曲第1番にはじまり、弦楽四重奏曲第10番・第12番、七重奏曲、ヴァイオリンソナタ第3番、ピアノ三重奏曲第6番、ピアノソナタ第4番・第26番『告別』、エロイカ変奏曲、等々たくさんあるのな)、実は『ハルモニーレーレ』も変ホ長調で終わる、のだそうな。あとはミニマル・ミュージックには馴染みが無いだろうけど(そりゃまぁ京響の客層でフィリップ・グラスとか知ってる人は超レアでしょ)、でもその元祖はベートーヴェンの『運命』=交響曲第5番だと思ってて、今でこそ誰もが知ってるクラシックの名曲だけど、(200年前の当時)初めて聴いた人は驚いたはず。だから『ハルモニーレーレ』も100年後には普通に演奏されるようになるかもしれないという、“感じ”て聴いて欲しいと『ハルモニーレーレ』推しみたいな熱っぽいトークの締めでした。

 

京都市交響楽団 第618回定期演奏会
2017年11月25日(土)14時30分開演@京都コンサートホール

◆L.v.ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 Op.73
 (ピアノソロ・アンコール)
 ◇L.v.ベートーヴェン ピアノソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2〜第3楽章
(休憩)
◆ジョン・クーリッジ・アダムズ ハルモニーレーレ(和声学)

指揮:下野竜也
ピアノ:アンナ・フェドロヴァ
コンサートマスター:西江辰郎

 

今回のコンサートマスターは新日フィルのコンマス西江さん。隣が泉原さんで年齢の近い人同士のコンビ。

今日は個人的な都合で朝が早かったのと、元々お目当ての『ハルモニーレーレ』に集中したいがため、前半は遠慮なく爆睡してましたw アンコールに『月光』ソナタの終楽章というサービスっぷりでしたけど、可もなく不可もなく、といった印象。

そして今年一番の楽しみだった『ハルモニーレーレ』。ナクソス・ミュージック・ライブラリにマイケル・ティルソン=トーマスとサンフランシスコ交響楽団によるライヴ録音のディスクが登録されてて、私はずっとそれで聴いてて馴染んでいたのだけど、あれは32年前に世界初演を任されただけでなく、現音楽監督のティルソン=トーマスがジョン・アダムズ含めて自国モノを積極的に採り上げてオーケストラも慣れてるからこそ、難曲と思わせないほどスムーズに聴ける、ということを大いに痛感しました。

上から見ると下野さんのめくる総譜は付箋と思しきものがカラフルにいっぱい付けてあって、パート1で見られた光景だと、オーボエ首席の高山さんが三拍子に合わせて上半身を三角形を描くように揺すったり、フルート首席の上野さんが時々足でリズムをとったりとか、明らかにタテを合わせるためだけのアマチュアっぽい動作がどのパートにも目立ってて、ミス無く通すためだけで京響があんなに苦労してるの、私は初めて見たように思います。演奏終了後の疲労困憊の度が過ぎて、下野さんや団員の方々がレセプションに顔出すのが遅くなったというオチがあったほどで。それでも音楽評論家の東条碩夫さんが
「京響の優秀さは今に始まったことではなく、今やN響、読響とともに国内オケのベスト3に数えられる存在、と言っても過言ではないかもしれない。」
と称賛する
程度には、素晴らしい好演でした。

 下野竜也(京響常任首席客演指揮者)が指揮するジョン・アダムズの「ハルモニーレーレ」は、一昨年、読響との演奏を聴き、すこぶる気持のいい思いをした記憶がある。今回は文化庁・芸術文化振興基金の事後調査の仕事を兼ね、もう一度聴きに来た次第。

 プログラムの前半では、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第5番《皇帝》」が、アンナ・フェドロヴァをソリストに迎えて演奏された。「ハルモニーレーレ」との組み合わせとしては意表を衝いたものだったが、これは曲の最後が変ホ長調で終ることと、「皇帝」が変ホ長調の曲であることを関連づけたためのようである。さすが下野竜也だ。
 今日のコンサートマスターは西江辰郎。

 フェドロヴァのピアノは細身の音だが、一つ一つの音に清澄な粒立ちがあり、音色が美しい。カデンツァなど、普通なら一気に均等に進んで行く音の流れの中で、時に強いアクセントを使って流れに変化を生じさせる弾き方が個性的だ。本来は豪壮な曲想の「皇帝」が、不思議に神経質な美しさを感じさせたのはそのためだろう。
 ただし下野と京響の演奏は、それをがっしりと支えるような、堂々たる風格のものであった。
 フェドロヴァはソロ・アンコールに、ベートーヴェンの「月光ソナタ」の終楽章を演奏したが、これも同じ特徴を持ったものだ。

 「ハルモニーレーレ」は、聴いた位置(1階15列中央)のためかもしれないが、以前サントリーホールで聴いた時と違い、オーケストラの内声部がリアルに聴き取れ、曲の面白さを倍加させてくれた。
 下野の指揮も相変わらず巧いものだと思うが、京響の張り切った力感と安定感、音色の多彩さにも舌を巻く。京響の優秀さは今に始まったことではなく、今やN響、読響とともに国内オケのベスト3に数えられる存在、と言っても過言ではないかもしれない。

 しかもカーテンコールの際に、客席に顔を向けた楽員たちの明るい表情と、笑顔の素晴らしさ。国内オケの中には、客席に一切顔を向けない団体とか、向けたとしても「そんなに拍手するほど良かったですかねェ」と言わんばかりの仏頂面をしている団体が多いのに比べ、これだけ聴衆との温かい交流を感じさせる京響の楽員は見上げたものと言わなければならない。

聴く方にとってはさほど身構える必要がなく楽しめると思うんですよ。私なんかはあのパット・メセニーが持てる才能を全振りしてクラシック音楽の曲を書いたらこういうのできるかも?みたいな感覚でいましたので、生演奏特有の三次元空間に大人数のステージから響いて反射する音が彩りキラキラ満載でとても素敵な印象を持ちましたけど(あの独特の良さがわからない人にはトコトン合わないのか途中で席を立つ人が散見されたけど実にモッタイナイ)、演奏する側にとっては変拍子が多い上にミニマル・ミュージック独特の進行がリズム感とかいろいろ狂わされるみたいで、暗闇の中トラップだらけの地雷原を歩いて進むような感覚だったかもと同情します。でもこうして1度本番を無事に終えられたので、2日目の明日は少し余裕が出てくるのではないでしょうか。明日26日に行く方は大いに期待していいと思います。

生で聴いて実感できたことですが、ジョン・アダムズは『ハルモニーレーレ』でミニマル・ミュージックだけでなく他にもいろんなギミックをつぎ込んでいて、それで尚かつ聴き手に敷居の高さを感じさせなくて面白い・楽しい・エキサイティング・綺麗・美しいと場面々々で多様なイメージを持たせてくれる、実に凄いことをやってのけているのではないですか。私の個人的印象では、ジャンルが異なりますけど、’80年代〜’90年代初頭のパット・メセニー・グループの音楽に初めて接した時の、それに少し近いような感じがしましたが、ともあれ傑作には間違いないでしょう。京響のカラーにもよく合うし、数年内での再演を、次はライヴ収録込みで強く希望します。

ジョン・アダムズ:ハルモニーレーレ/マイケル・ティルソン=トーマス指揮サンフランシスコ交響楽団[SACD]
82193600532

 

 

 


ワーグナー:『パルジファル』、ジョン・アダムズ:ハルモニーレーレ、ジャケ=ド=ラ=ゲール:ヴァイオリン・ソナタ集…etc.

ツイッターで #nml のハッシュタグを付けてツイートしてきたもののサルベージとか。

 

ワーグナー:楽劇『パルジファル』/マーク・エルダー&ハレ管弦楽団、他【Hallé】(4CD)

リヒャルト・ワーグナー
・舞台神聖祝典劇『パルジファル』

指揮:マーク・エルダー
管弦楽:ハレ管弦楽団
パルジファル(テノール):ラース・クリーヴマン
クンドリ(ソプラノ):カタリーナ・ダライマン
グルネマンツ(バス):ジョン・トムリンソン
アンフォルタス(バリトン):デトレフ・ロート
クリングゾル(バリトン):トム・フォックス
ティトゥレル(バス):ラインハルト・ハーゲン
合唱:ハレ・ユース合唱団、ロイヤル・オペラ合唱団、トリニティ少年合唱団

録音時期:2013年8月25日(BBCプロムス上演ライヴ)
録音場所:ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール

http://ml.naxos.jp/album/CDHLD7539

Cdhld7539

 


 

 

ダッロリオ:ヴァイオリン・ソナタ集/マリア・クレスティンスカヤ[Vn]、他【Pan Classics】

ドメニコ・ダッロリオ
・ヴァイオリンと通奏低音のための12のソナタ集〜
  ソナタ第1番 ハ長調
  ソナタ第4番 ト短調
  ソナタ第8番 変ホ長調
  ソナタ第9番 イ短調
  ソナタ第12番 ホ短調

ヴァイオリン:マリア・クレスティンスカヤ
バッセット:グリゴリー・クロテンコ
チェンバロ&オルガン:イムビ・タルム

録音時期:2017年5月2-4日
録音場所:オーストリア、ザンクト・フローリアン修道院

http://ml.naxos.jp/album/PC10378

Pc10378

 


 

 

ジャケ=ド=ラ=ゲール:ヴァイオリン・ソナタ集/リナ・トゥール・ボネ[Vn]、他【Pan Classics】

エリザベト=クロード・ジャケ=ド=ラ=ゲール
・ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ニ短調
・ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ長調
・ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ヘ長調
・ヴァイオリン・ソナタ 第4番 ト長調
・ヴァイオリン・ソナタ 第5番 イ短調
・ヴァイオリン・ソナタ 第6番 イ長調

ヴァイオリン:リナ・トゥール・ボネ
ヴィオラ・ダ・ガンバ:パッツィ・モンテーロ
チェンバロ:ケネス・ヴァイス

録音時期:2011年1月11-13日
録音場所:スペイン、マドリード州ヘタフェ、ヘタフェ専門音楽院

http://ml.naxos.jp/album/PC10380

Pc10380

 


 

 

ジョン・アダムズ:ハルモニーレーレ、他/マイケル・ティルソン=トーマス&サンフランシスコ響【SFS Media】[Hybrid SACD]

ジョン・クーリッジ・アダムズ
・ハルモニーレーレ(和声学)
・2つのファンファーレ〜ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシーン

指揮:マイケル・ティルソン=トーマス
管弦楽:サンフランシスコ交響楽団

録音時期:2010年12月8-11日(ハルモニーレーレ)、2011年9月7日
録音場所:サンフランシスコ戦争記念舞台芸術センター、デイヴィス・シンフォニーホール(ライヴ)

http://ml.naxos.jp/album/82193600532

82193600532

 


 

 

ジョン・アダムズ:ハルモニーレーレ、他/ピーター・ウンジャン&ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管【Chandos】[Hybrid SACD]

ジョン・クーリッジ・アダムズ
・『原爆博士』交響曲(ドクター・アトミック・シンフォニー)
・2つのファンファーレ〜ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシーン
・ハルモニーレーレ(和声学)

指揮:ピーター・ウンジャン
管弦楽:ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

録音時期:2013年2月10-11日(ハルモニーレーレ)、4月30日
録音場所:グラスゴー、ロイヤル・コンサートホール

http://ml.naxos.jp/album/CHSA5129

Chsa5129

 


 

 

ジョン・アダムズ:アブソルート・ジェスト、グランド・ピアノラ・ミュージック
/マイケル・ティルソン=トーマス&サンフランシスコ交響楽団、他
【SFS Media】[Hybrid SACD]

ジョン・クーリッジ・アダムズ
・アブソルート・ジェスト[※世界初録音]
・グランド・ピアノラ・ミュージック

指揮:マイケル・ティルソン=トーマス、ジョン・アダムズ(グランド・ピアノラ・ミュージック)
管弦楽:サンフランシスコ交響楽団
弦楽合奏:セント・ローレンス弦楽四重奏団(アブソルート・ジェスト)
合唱:シナジー・ヴォーカルズ(グランド・ピアノラ・ミュージック)
ピアノ:オルリ・シャハム、マルク=アンドレ・アムラン(グランド・ピアノラ・ミュージック)

録音時期:2013年5月4・5・9日、2015年1月16-18日(グランド・ピアノラ・ミュージック)
録音場所:サンフランシスコ戦争記念舞台芸術センター、デイヴィス・シンフォニーホール(ライヴ)

http://ml.naxos.jp/album/82193600632

82193600632

 


戦争の時代の音楽/カルロス・カルマー&オレゴン交響楽団

昨日PentaTone[http://www.pentatonemusic.com/]レーベルの新譜を採り上げた際に、そういえば今度のグラミー賞でノミネートされた中にここのレーベルのもあったよな?と思い出して聴いてみた次第です。“Music for a Time of War”というタイトルが付けられているこのディスク、昨今マグレブ地方で大変痛ましい事件が起きている時期に何ともキャッチーなものをと我ながら思いますが、仏軍の軍事介入と過激派組織の反乱の狭間で被害に遭われた民間人の方々の無事を祈りつつ採り上げることにしました。

 

戦争の時代の音楽/カルロス・カルマー&オレゴン交響楽団【PentaTone】[Hybrid SACD]

チャールズ・アイヴズ
・2つの瞑想~答えのない質問
ジョン・アダムズ
・包帯係
ベンジャミン・ブリテン
・シンフォニア・ダ・レクイエム Op.20
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ
・交響曲第4番ヘ短調

指揮:カルロス・カルマー
管弦楽:オレゴン交響楽団
バリトン:サンフォード・シルヴァン(「包帯係」)

録音時期:2011年5月7-8日(ライヴ)
録音場所:ポートランド、アーレン・シュニッツァー・コンサートホール

http://ml.naxos.jp/album/PTC5186393

Ptc5186393_2

 

アメリカ西海岸のオレゴン州では最大の都市であるポートランドに本拠を置くオレゴン交響楽団[http://www.orsymphony.org/]、音楽監督を務めるカルロス・カルマー共々あまり日本では馴染みがありませんが、カルマーの前任者ジェームズ・デプリーストの代にグッと実力を上げたようで、この演奏でも力強く精緻なアンサンブルを見せています(セッション録音でなくライヴ収録なのですからこの実力は本物でしょう)。古今のライバル録音が多いであろう『シンフォニア・ダ・レクイエム』やRVWの4番といった曲でも過去の名盤に充分伍するだけの内容あるものに思えます。

カルマーの指揮も全体のバランスをとりながら細部までキッチリ目を行き届かせている生真面目さが感じられ、また随所に切れ味の鋭さを垣間見せています。PentaToneレーベルは録音の良さもさることながら、若手ヴァイオリニストのユリア・フィッシャーに早いうちから目を付けるなどスカウティングにも長けたところがありますので、カルマー&オレゴン響のコンビでの録音とリリースを進めるのもPentaToneの目利き故かもしれません。