グリーグ:ピアノ協奏曲、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番/ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)、ケント・ナガノ&ベルリン・ドイツ響

今日付でNMLに登録されたディスクで私が注目したいのが2枚ありました。まずその1つ。Ambroisieレーベルの新譜で、来年3月に京響と共演する予定のピアニスト、ニコライ・ルガンスキーがケント・ナガノ&ベルリン・ドイツ交響楽団[http://www.dso-berlin.de/]と組んで演奏したグリーグとプロコフィエフのコンチェルトです。

 

グリーグ:ピアノ協奏曲、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
 /ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)、ケント・ナガノ&ベルリン・ドイツ交響楽団
【Ambroisie】

エドヴァルド・グリーグ
・ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16
セルゲイ・プロコフィエフ
・ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26

ピアノ:ニコライ・ルガンスキー
指揮:ケント・ナガノ
管弦楽:ベルリン・ドイツ交響楽団

録音時期:2013年2月
録音場所:ベルリン、シュテークリッツ=ツェーレンドルフ区 ダーレム、イエス・キリスト教会

http://ml.naxos.jp/album/AM210

Am210

 

グリーグとプロコフィエフの3番、両曲とも私としてはこうしてじっくり聴いたのは珍しいかもしれません。

まず、グリーグのコンチェルトは北欧というよりもドイツ・ロマン派の延長線上にあるような印象をもたらすほど、硬派でスケール感ある質実剛健な演奏だと思います。ソリストしかり、伴奏のケント・ナガノ&ベルリン・ドイツ響しかり。ピアノの強い打鍵でも透明さを維持しつつもあまり叙情性に傾きすぎることなく、終楽章を壮大に締めくくっているのには好感が持てます。

そしてプロコフィエフの3番コンチェルト、やるときはやるもんですねぇ〜(笑)。めっちゃスリリングな印象でした。特に両端楽章で。ルガンスキーの冴えわたる技巧は数々の難所もいともあっさりサクッと弾きのけちゃってるし、彼のスピードに伴奏のオケもしっかりついてきていて、両者がっぷり四つに組んでの快演に聴き手のボルテージが上がりまくりといったところです。

この、グリーグとプロコフィエフの3番でソリストとして見事な演奏を披露したルガンスキーが京響定期ではラフマニノフの2番を演奏する・・・ソナタの録音では骨太なラフマニノフ像を見せていた彼のことですから、コンチェルトでも‘おセンチ’などという類の言葉とは真反対のものを示してくるんでしょうね。同じラフマニノフの2番シンフォニーで音を録ってなかったのが勿体ないほどの素晴らしい演奏を定期公演で披露していた広上&京響とルガンスキーが組んで、どういった化学反応を起こしてくれるのか大いに楽しみです(逆に言うとセンチメンタルなラフマニノフが好きという人は誠に残念ながら絶対に期待しない方がいいwww)。

 



ベートーヴェン:交響曲全集/ブリュッヘン&18世紀オーケストラ

スペインの古楽レーベルGlossa[http://www.glossamusic.com/]から近頃リリースされていたブリュッヘンと18世紀オーケストラ[http://www.orchestra18c.com/]のコンビによるベートーヴェン全集がNMLにも本日登録されたので、早速聴いてみました。旧Phillipsレーベルが録音した同コンビによる1度目の全集は聴いたことがないのですが、前のがメジャーレーベルからで今回はややマイナーなレーベルからのリリース・・・こういったところにも近年のクラシック音楽産業の栄枯盛衰を感じることができますね(・・・というかメジャーどころが軒並み不抜けてきている証左の一つと言うべきか・苦笑)。

 

ベートーヴェン:交響曲全集/ブリュッヘン&18世紀オーケストラ【Glossa】[Hybrid SACD+DVD]

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
・交響曲第1番ハ長調 Op.21
・交響曲第3番変ホ長調『英雄』 Op.55
・交響曲第2番ニ長調 Op.36
・交響曲第4番変ロ長調 Op.60
・交響曲第6番ヘ長調『田園』 Op.68
・交響曲第5番ハ短調 Op.67
・交響曲第8番ヘ長調 Op.93
・交響曲第7番イ長調 Op.92
・交響曲第9番ニ短調『合唱』 Op.125
・DVD:天国への九つの階段~ブリュッヘンが語るベートーヴェンとその音楽

指揮:フランス・ブリュッヘン
管弦楽:18世紀オーケストラ
ソプラノ:レベッカ・ナッシュ
メゾソプラノ:ウィルケ・テ・ブルンメルストローテ
テノール:マルセル・ベークマン
バス:ミヒャエル・テーフス
合唱:ラウレンス・コレギウム&カントライ

録音:2011年11月(ライヴ)、デ・ドゥーレン(ロッテルダム)

http://ml.naxos.jp/album/GCDSA921116

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Gcdsa921116

 

初めてこれを聴いた時はフル編成のモダンオケの演奏かと思ってクレジット名を再確認したくらいです。それほど重厚感のある印象でした。古楽器オケのベートーヴェンは個性は違えども大抵は古楽器特有の音色や演奏法を活かした切れ味の鋭さや機動性の良さを指向しているように感じさせるものが多いと思うのですが、モダンオケのようなスケール感を追求して実際に成功しているのは見事という他ありません。

また、短期間でのライヴ収録ということもあって音楽作りに統一性のとれた造形も見られるかと思います。旧録音がどういった演奏だったのか知らないので比較できないのが残念ですが、なぜこのようなアプローチになったのかとても興味深いところです。セットに付属するDVDや解説で詳細を見てみたいですね。

 


 

せっかくですので、比較のためにも他の録音を2つ挙げておきます。どちらも古楽器オケや室内オケの良さをそれぞれなりに充分活かした好演奏だと思います。

 

ベートーヴェン:交響曲全集、序曲集/インマゼール&アニマ・エテルナ【Zig-Zag】

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
・バレエ『プロメテウスの創造物』 Op.43〜序曲
・交響曲第1番ハ長調 Op.21
・交響曲第2番ニ長調 Op.36
・交響曲第3番変ホ長調『英雄』 Op.55
・序曲『コリオラン』ハ短調 Op.62
・劇音楽『エグモント』 Op.84〜序曲
・劇音楽『アテネの廃墟』 Op.113〜序曲、トルコ行進曲
・交響曲第5番ハ短調 Op.67
・交響曲第4番変ロ長調 Op.60
・交響曲第6番ヘ長調『田園』 Op.68
・交響曲第8番ヘ長調 Op.93
・交響曲第7番イ長調 Op.92
・序曲『献堂式』 Op.124
・交響曲第9番ニ短調『合唱』 Op.125

指揮:ジョス・ファン・インマゼール
管弦楽:アニマ・エテルナ管弦楽団
ソプラノ:アンナ=クリスティーナ・カーポラ
メゾソプラノ:マリアンネ・ベアーテ・キーラント
テノール:マルクス・シェーファー
バス:トーマス・バウアー
合唱:アニマ・アテルナ合唱団

http://ml.naxos.jp/album/ZZT080402.6

Zzt0804026

 

ベートーヴェン:交響曲全集/ネルソン&アンサンブル・オルケストラル・ドゥ・パリ【Ambroisie】

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
・交響曲第1番ハ長調 Op.21
・交響曲第2番ニ長調 Op.36
・交響曲第3番変ホ長調『英雄』 Op.55
・交響曲第4番変ロ長調 Op.60
・交響曲第5番ハ短調 Op.67
・交響曲第6番ヘ長調『田園』 Op.68
・交響曲第7番イ長調 Op.92
・交響曲第8番ヘ長調 Op.93
・交響曲第9番ニ短調『合唱』 Op.125

指揮:ジョン・ネルソン
管弦楽:アンサンブル・オルケストラル・ドゥ・パリ
ソプラノ:ギレーヌ・ジラール
コントラルト:マリヤーナ・ミヤノヴィッチ
テノール:ドナルド・リタカー
バス:ハオ・ジャン・ティアン
合唱:パリ・オラトリオ合唱団

http://ml.naxos.jp/album/AM9993

Am9993

 



J.S.バッハ:フランス組曲、イギリス組曲/クリストフ・ルセ(チェンバロ)

先週ルガンスキーのラフマニノフを採り上げた際にフランスのAmbroisieレーベル(現在はNaïveの傘下)について触れましたけど、このレーベルに注目するようになったのは、クリストフ・ルセの弾くバッハのフランス組曲がキッカケでした。

彼の弾くチェンバロはリズムに瑞々しさを感じながらも尚かつ気品の高さも保った素晴らしい演奏でしたけど、この雰囲気や美しい音色をディスク上からも余すところなく伝えてきている録音の良さにも感心した記憶があります。チェンバロの生の音の良さを録音で伝えるのはなかなかに難しいと思うのですが、デリケートな音色の多彩さ、そして適度な残響による臨場感を見事にマイクに収めているのがAmbroisieのストロングポイントで、それに加えて演奏者も優れた人をチョイスしていたので、その目利きとエンジニアの腕の良さに信頼を置いて、このレーベルで出していたアンサンブル・ゼフィーロのCD(作曲家が無名の人で記憶にないのが残念ですが)を買ったりしたものです。

経済的事情とはいえ手放してしまったのが本当に悔やまれるのですが、Naïve傘下になってからは再プレスの基準が厳しくなったようで、レーベル初期の録音には廃盤になったものも多いみたいです。音源はあるのだから、せめてNMLに登録してくれるとありがたいのですが・・・アンサンブル・ゼフィーロの録音やオフェリー・ガイヤールの無伴奏チェロとか未だにリスト化されてませんしねぇ・・・(とほほ)。

 

J.S.バッハ:フランス組曲/クリストフ・ルセ(チェンバロ) (2CD) 【Ambroisie】

ヨハン・セバスティアン・バッハ
・フランス組曲第1番ニ短調 BWV.812
・フランス組曲第2番ハ短調 BWV.813
・フランス組曲第3番ロ短調 BWV.814
・フランス組曲第4番変ホ長調 BWV.815
・フランス組曲第5番ト長調 BWV.816
・フランス組曲第6番ホ長調 BWV.817

チェンバロ:クリストフ・ルセ

http://ml.naxos.jp/album/AMB9960

Amb9960

 


 

J.S.バッハ:イギリス組曲/クリストフ・ルセ(チェンバロ) (2CD) 【Ambroisie】

ヨハン・セバスティアン・バッハ

・イギリス組曲第1番イ長調 BWV.806
・イギリス組曲第2番イ短調 BWV.807
・イギリス組曲第3番ト短調 BWV.808
・イギリス組曲第4番ヘ長調 BWV.809
・イギリス組曲第5番ホ短調 BWV.810
・イギリス組曲第6番ニ短調 BWV.811

チェンバロ:クリストフ・ルセ

http://ml.naxos.jp/album/AMB9942

Amb9942

 


 



ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第1番・第2番/ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)

かつて(ワーナー傘下の)ERATOレーベルにおいて、サカリ・オラモ指揮バーミンガム市交響楽団をバックに従えてラフマニノフのピアノ協奏曲全集を録音し、その硬派な演奏で好評を博したニコライ・ルガンスキーが、今度は同じ作曲家のピアノ・ソナタをAmbroisieレーベルに録音して近日中にリリース、世に問うということのようですが、日本でのCDリリースより先に本日付けでNMLに登録されたので、幸いにも聴く機会に恵まれました。

それにしても、いくらラフマニノフのソナタはシンフォニーやコンチェルトに比べて演奏機会が少ないとはいえ、数年前にコンチェルトのツィクルスをリリースした大手レーベルからは出せなくなってきているという事実が、今のクラシック業界の状況を端的に表していますね。ワーナーに限らず大手の老舗が軒並みこういった感じですが、その一方で中小レーベルでも元気なところは頑張ってますし、オーケストラの自主レーベルもあったりして、一概に悪いとも言えない気がしますけどね(まぁ今のユニヴァーサル系やらEMIやソニーとか閉塞状況で人材も枯渇か?って素人目にも思いますからねぇ・・・)。

 

ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第1番・第2番/ニコライ・ルガンスキー【Ambroisie】

セルゲイ・ラフマニノフ
・ピアノ・ソナタ第1番ニ短調 Op.28
・ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調 Op.36〔1931年改訂版〕

ピアノ:ニコライ・ルガンスキー

Am208

http://ml.naxos.jp/album/AM208

 

・・・というわけで、私もよくよく考えてみればラフマニノフのソナタはちゃんと聴いたことなかったなぁ・・・と思いながら聴いてみたわけですが、ルガンスキーが弾いてるからかもしれませんけど、一般的にイメージされるような甘美でロマンティックなメロディーメーカーのラフマニノフはいったいどこ行った??!!という第一印象でした。

ラフマニノフの中で一番好きな曲を挙げろと言われたらダントツで作品45のシンフォニック・ダンスを挙げ、たいていは甘ったるかったりロマンティシズムが濃厚に出てたりで、しとらす的にはあんまり合ってるとは言いがたい作曲家ラフマニノフですが、そんな私にとってはわりといい塩梅なルガンスキーの演奏でした。硬派で骨太で構築美をガツンと出した感じで。と同時に、この作曲家の他のピアノ作品と比べて演奏機会があまり多くないというのもちょっと納得できた感じでした。

「私ラフマニノフ大好きでぇ〜す」というクラシックファンに、ぜひ聴かせてみたい(なんて意地悪なwww)

ちなみに、ワーナー系列が最近NMLに登録されるようになったので、おかげで前出のCDを買わなくてもコンチェルトの録音を聴くことができるようになりましたけど、あの当時の録音よりも更に硬派の度合いが上がっているような、今回のソナタ2曲の録音でした。2番の方は1913年の初版と1931年の改訂版の2種類があって(ホロヴィッツ版はここでは度外視)、今回のルガンスキーは後者の版で演奏しているそうですが、なぜそちらを選んだのかはわかりません。Ambroisieレーベルのことなので、もしかしたらライナーノーツにでも理由が書かれている可能性は充分ありますが、それもCDを買ってみないとわかりませんしねぇ・・・発売されたら誰かそのうちネットに上げてくれへんかな?(・・・人はそれを図々しいと言う・苦笑)

・・・そういえば、AmbroisieレーベルのCDを採り上げるのは今回が初めてでしたね。今はNaïveの傘下として吸収されてしまいましたが、AlphaやMirare等とほぼ同じ時期に見かけるようになったでしょうか、フランスのレーベルです。ニコラス・バルトロメーというエンジニアが立ち上げたそうで、最初の頃はチェンバロのクリストフ・ルセやバロック・チェロのオフィリー・ガイヤール、仏アンサンブル・アマリリスや伊アンサンブル・ゼフィーロなどの古楽アンサンブルといった、古楽器によるバロックの録音がメインだった印象です。録音良し・演奏良しでマイ・フェイバリットなレーベルで、昔は2・3枚ほど手元にあったのですが、何年か前に超金欠で苦労してた頃に売ってしまいましたからねぇ・・・えぇ、えぇ・・・大いに後悔していますとも(苦笑)。AmbroisieもNMLに登録されるようになったとはいえ、その録音全部があるわけではないのですよ。私が京都に越してきて間もない頃に来日公演で素晴らしい演奏を聴いたアンサンブル・ゼフィーロとかNMLのカタログから抜けてるままですし。

 

・ピアノ協奏曲第1番&第3番
 →http://ml.naxos.jp/album/809274794161

・ピアノ協奏曲第2番&第4番
 →http://ml.naxos.jp/album/825646194667

なお、現行のCDは「パガニーニの主題による狂詩曲」なども含めた3枚組の廉価盤としてリリースされています↓(下記はAmazonのリンク)
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