京都市交響楽団 京響友の会コンサート(指揮:広上淳一、2014年5月10日)

昨年は琵琶湖の船の上でやろうとして台風でポシャった会員向けのイベントですが、個人的には交通費かけて滋賀県くんだりまで遠出するのはお金=交通費も時間もかかって勘弁してくれって思ってましたので(だから実際に申し込まなかった)、一昨年や今年のようにホームタウンたる北山の京コンでやってもらった方がよっぽどありがたいのですが、一昨年は小ホールだったのが今回は大ホール、しかもレアなコンチェルトを3曲もってパワーアップしすぎです(爆)。フルトヴェングラーからカラヤンの代にかけてベルリン・フィルの首席ティンパニ奏者だったヴェルナー・テーリヒェンが作曲した曲が生で聴けるなんて、まさか自分の一生の中でそんな機会があろうとはつゆとも思わず、プログラムが公表されてからというもの、それはそれはもう楽しみにしていましたよ(笑)。

結論から言いますと・・・

今回のテーリヒェンとヒンデミットとアンリ・トマジの3曲、セッション録音でも改めてのライヴ録音でもいいのでCD化してリリースしてもらえないでしょうか?今日の1回きりというのはあまりにもったいなさすぎます!
>楽団長(門川京都市長)&副団長(奥美里・京都市文化市民局文化芸術担当局長)様

 

京都市交響楽団 京響友の会コンサート
2014年5月10日(土)14時30分開演@京都コンサートホール

◆W.テーリヒェン ティンパニ協奏曲 Op.34
◆P.ヒンデミット 木管楽器、ハープと管弦楽のための協奏曲
(休憩)
◆H.トマジ トロンボーン協奏曲
◆G.ビゼー 『カルメン』組曲
   〜前奏曲、アラゴネーズ、セギディーリャ、闘牛士、ハバネラ、闘牛士の歌、ジプシーの踊り
(アンコール)
 ◇G.ビゼー(E.ギロー編曲) 『アルルの女』第2組曲〜第4曲「ファランドール」

指揮:広上淳一
ティンパニ:中山航介
フルート:清水信貴
オーボエ:高山郁子
クラリネット:小谷口直子
ファゴット:中野陽一朗
ハープ:松村衣里
トロンボーン:岡本哲
コンサートマスター:泉原隆志(前半)、渡邊 穣(後半)
司会:椿あゆみ

 

フルトヴェングラーかカラヤンか』や『あるベルリン・フィル楽員の警告―心の言葉としての音楽』といった著作物は古本でも入手できるのに、録音の方はなかなか見当たらず、NMLにもなかったテーリヒェンのティンパニ協奏曲(1954年作)、今回幸運にも黄金期真っ最中の京響の演奏で聴くことができたわけですが、著書や過去の言動ではフルトヴェングラーへの敬愛とアンチ・カラヤンを示していたテーリヒェン、作曲はというとこの曲を聴いた限りではフルトヴェングラーのような後期ロマン派系統ではなくヒンデミットに少し似ているというか新即物主義・新古典主義のラインに連なる作風のような印象を持ちました。最後がちょっとジャパニズムっぽかったように感じたのは気のせいでしょうか?(大栗裕『大阪俗謡による幻想曲』―朝比奈隆さんがベルリン・フィルの定期に呼ばれた時に持っていった曲―からのインスパイアかと勝手に錯覚しましたがテーリヒェンのティンパニ協奏曲の方が作曲時期が早いので私の勘違いでした) で、私の席からは指揮台の右横に陣取っていたソリストの動きが丸わかりだったのですが、さすがベルリン・フィル首席団員の作だけあってティンパニを5台用意させて(ちなみにティンパニを囲むようにヴィオラとチェロの1プルトの前に透明の反射板が置かれてました)フル活用でしたね。音を出してる時は両手両足フル稼働、間がある時も手を休めずチューニングの微調整を頻繁にされてて、見るからに大変そうでした。曲自体はオーディションやコンクール等で必修らしいというのが肯ける良作で、また聴き直したいと思ったほどでしたが、どこかに録音残ってないですかねぇ・・・? やっぱり京響レーベルで出すしか・・・(笑)。

出来は演奏後にソリスト中山さん(29歳)とガッチリ握手をかわしていた泉原さん(前半のコンマス、仲良さそうに見えましたが歳が近いからかな?)の会心の表情が全てだったでしょう。演奏後は司会者のリードで広上さんと一緒にトーク。中山さんいわく、この曲の演奏は5・6回経験されてるそうですが、オーディションとかだとピアノ伴奏なのでフルオケをバックに演奏したのは今回が初めてだったとのこと。いつもステージ最後方にいるのが今回は指揮者右隣の最前列なので、音出しを合わせるタイミングの取り方の違いに慣れるのが一苦労だったようです。ちなみに広上さんはテーリヒェンの曲を指揮したのはこれが初めてだったとか。ともあれ、想像以上の良作品に若いティンパニ奏者の熱演は聴き手にとっても貴重な体験でしたし、彼が首席として京響にいる有難味を改めて感じました。

そして2曲目、ヒンデミット1949年作の、木管楽器・ハープと管弦楽のための協奏曲。やや小ぶりな編成のオケにフルート・オーボエ・クラリネット・ファゴット・ハープのソロが絶妙に絡み合うのですが、結婚行進曲のフレーズが出てきたりドイツ人のヒンデミットが敢えてフランス的なものを採り入れたりと、平易で親しみやすい中にも匠の技が凝縮されたようなユニークな音楽。京響の誇る木管首席陣が揃い踏みで本領発揮し美しいメロディーを奏でてくれてましたが、ヒンデミットは好きな作曲家ベスト5に入ると仰ってたフルート首席の清水さんは1995年7月13日の376回定期(井上道義指揮@京都会館)でもこの曲のソロを担当されたそうです。今日の演奏は彼以外のメンバーがゴッソリ入れ替わってますが、わりとインターナショナルな面子が揃っている京響において、オーボエ首席の高山さん、クラリネット首席の小谷口さん(演奏後に司会からマイクを向けられた時のリアクションが9年前と同じ初々しさだったのはご愛嬌w)、ファゴット首席の中野さんと何故か首席陣が揃ってドイツ系なんですよね。清水さんもジュリアード音楽院での師匠だった元ニューヨーク・フィル首席奏者ジュリアス・ベーカーが若い頃にロジンスキ、ライナー、ワルター、クーベリックといった独墺系を得意とする巨匠達の薫陶を受けてますし、そういう点では木管ソリスト4人のトーンが比較的近いので統一感があって、それぞれの技巧の冴え以外にも音色の響きや絡み具合を楽しめたのがよかったですね。

後半はコンマスが渡邊さんに替わり、プログラムもフランスもの。まずはアンリ・トマジ1957年作のトロンボーン協奏曲。所々ビッグバンドっぽかったりフレンチ・カフェっぽいムードがあったりとなかなかカラフルな音楽。帰宅してググったら技巧的にはかなりの難曲だと後で知って驚いたのですが、聴いていた時にはそういったのを全く感じさせなかったトロンボーン首席の岡本さんの演奏ぶり。お喋り好きなのかどうか知りませんが腕もよく回るけど舌も回るという感じで、演奏後のトークでもトロンボーンの歴史の古さ(スライドの原型は7世紀頃?まで遡れるとか)や、現在のような形になったトロンボーンが初めてオーケストラ作品に使用されたのがべ―トーヴェンの5番シンフォニーの終楽章だったとか〔※しとらす的補足:ベートーヴェン以前ではトロンボーンは神聖な楽器としてミサでの聖歌の伴奏とか教会での宗教音楽で用いられることは多くとも世俗的な場面で使われることが無かったため、交響曲といった宗教が絡まない世俗的ジャンルの作品で用いたのはベートーヴェンの交響曲第5番終楽章におけるのが記録上では初めて〕、広上さんと一緒にいろいろと薀蓄を語ってくださってました。

これまでの3つの協奏曲、ソリストを務められた方々のうちハープの松村さん以外は皆さん中学校の部活が楽器をはじめる最初のキッカケだったそうで、中山さんは小さい頃に親に無理やりピアノやらされたとか黒歴史?みたいな過去話してましたし、世の多くのピアニストやヴァイオリニストとは異なる日本の管楽器奏者独特のエピソードをそれぞれに持ってらしたのが面白かったです。

最後とアンコールはビゼーのお馴染みの曲から。『カルメン』の「闘牛士の歌」で朗々としたトランペットを奏でていたナエスさんを「ジプシーの踊り」に入る前に広上さんが一旦止めて立たせて客席に拍手を促せるサービスを見せていたのも、こういったイベントならではの一興でしたかね。

演奏会終了後の交流会でスタッフの方に伺ったところでは全体練習が2日しかなかったそうで、レアなコンチェルトを3つも採り上げたわりにはオケ側に定期ほどの練度まで達していなかったのは致し方ない側面もありましたが、それでも20世紀の冷戦時代初期にそれぞれ書かれた作品、しかも実演で接する機会がそうそう無いであろう曲を堪能するには充分でしたし、何よりも今回1度きりの一発芸みたいな感じで終わらせるのは勿体無いと聴き手に印象付けられただけでも大成功だったのではないでしょうか。テーリヒェン、ヒンデミット、トマジの3曲ともソリストは自前の首席奏者で賄えるし京響のストロングポイントが出せるしで、定期演奏会並みにもう少し練度を高めた上で再演の機会なりセッション録音してリリースするなりして、今日の演奏会に招待された会員だけでなく個人的にはより多くの人々に聴いてもらいたいと心から強く願っています。

 

 

 



ビゼー:アルルの女、フォーレ:マスクとベルガマスク、グノー:『ファウスト』バレエ/山田和樹&スイス・ロマンド管

今日付でNMLに登録されたディスクから注目のものをいくつか。

まず、その1。

オランダPentaTone[http://www.pentatonemusic.com/]レーベルからスイス・ロマンド管弦楽団[http://www.osr.ch/]を起用しての新譜ですが、これまでマレク・ヤノフスキの指揮でブルックナー・ツィクルスをリリースするという縁がありましたが、首席指揮者がChandosレーベルと深い縁を持つネーメ・ヤルヴィに代替わりして、このオケとの縁も切れるか・・・と思いきや、さすが新人発掘に定評のあるレーベル、首席客演指揮者の山田和樹さんに目をつけてきましたよ!単発なのか今後も有り得るのかまではわかりませんが、とりあえず今回リリースされるのは『アルルの女』などのフランス管弦楽作品集です。

このPentaToneの抜け目のなさは嬉しいというか、今やプロデュースの質がすっかり落ちてしまっているユニヴァーサルやワーナーのクラシック部門から出されるよりも、PentaToneのように目利きと好録音に定評のある欧州の中堅レーベルから目をかけられる方が何十倍も有難味がありますね。

 

ビゼー:アルルの女、他/山田和樹&スイス・ロマンド管【PentaTone】[Hybrid SACD]

ジョルジュ・ビゼー
・『アルルの女』第1組曲
・『アルルの女』第2組曲[エルネスト・ギロー編曲]
ガブリエル・フォーレ
・組曲『マスクとベルガマスク』 Op.112
シャルル・フランソワ・グノー
・歌劇『ファウスト』〜バレエ音楽

指揮:山田和樹
管弦楽:スイス・ロマンド管弦楽団

録音時期:2013年2月(DSDレコーディング)
録音場所:ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール

http://ml.naxos.jp/album/PTC5186358

[※↓画像をクリックするとタワーレコードの商品ページにリンクします]
Ptc5186358

 

スイス・ロマンド管のフランスものというと真っ先にアンセルメ時代の数々の名録音が思い浮かぶオールドファンも多いと思いますが、いくらフランス語圏のジュネーヴに本拠を持つとはいえ、ドイツ系の指揮者を何代もシェフに迎えていれば、アンセルメ時代とは響きが多少変化するのはある意味当然かもしれません。山田さんがここで見せたアプローチはアンセルメ時代のフランス的エスプリを強引に抽出して強調するという愚を犯さず、あくまで今も伝統として地脈に残っているエスプリ分と色彩感を自然に引き出し、そこに適度なドラマ性を持たせて音楽を作っているように思います。ですが、その匙加減がとてもいい塩梅というか、オケのストロングポイントとポテンシャルを巧みに引き出しているのは今年の京響ニューイヤーコンサートで彼がやってみせたのと同じではないですか!あの時初顔合わせだった京響と違ってスイス・ロマンド管とはコンビネーションがある程度確立されている分だけ、附されたドラマ性にもあざといところが全く無くて、ごくごくナチュラルに聴こえてきますので、とても心地好い新鮮な印象を持たせてくれます。

こちらが積極的に手を伸ばさずとも何かと耳に入ってくることの多い『アルルの女』でフレッシュな感覚を得られるとは思いませんでした。それはフォーレやグノーでも同様です。リズム感もとてもいいですしね。この調子でPentaToneレーベルが山田和樹&スイス・ロマンド管での録音を継続して出してくれるといいのですが・・・ぜひ続編に期待したいと思います。

あとは個人的願望として、彼には早いうちにオペラの経験も積んでいってほしいですね(若いうちからコンサート指揮ばっかりだと年食ってから行き詰まるか斜め上に老生化することが多いし・・・一応合唱指揮は積んでるっぽいのか・・・昨年振ったらしいオネゲル『火刑台上のジャンヌ・ダルク』やクセナキス『オレステイア』はこう言っては何やけど特殊ジャンルやしなぁ)。スイス・ロマンド管がオケピットに入っているジュネーヴ大劇場でチャンスもらえたりとかないですかねぇ・・・。

あぁ〜、そういえば来年夏にスイス・ロマンド管との来日ツアーがあるんでしたっけ?でもなんで関西来ないかなぁ・・・福井とか名古屋とか倉敷とかまで行ってられへんいうのに(ブツブツ)。

 

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