京都市交響楽団 特別演奏会「第九コンサート」(指揮:広上淳一)・・・もっと先へ……《加速》したくはないか、聴衆

川原礫さんの『アクセル・ワールド』で黒雪姫がハルユキに言った有名な台詞
「もっと先へ……《加速》したくはないか、少年」
を拝借させてもらいました(ちなみに来春アニメ化される[http://www.accel-world.net/]そうで楽しみです)。なぜそんなことを言ってみたのかは後ほど。

 

京都市交響楽団 特別演奏会「第九コンサート」
2011年12月27日(火)19時開演@京都コンサートホール

◆ジャン=ミシェル・ダマーズ フルート、ハープ、弦楽のためのデュオ・コンチェルタント
◆L.v.ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調Op.125

指揮:広上淳一
フルート:清水信貴
ハープ:松村衣里
ソプラノ:小川里美
メゾソプラノ:手嶋眞佐子
テノール:吉田浩之
バリトン:黒田博
合唱:京響市民合唱団、京都市立芸術大学音楽学部合唱団

 

今日と明日の第九の公演は完売御礼だそうです。それ自体はとても喜ばしいことなのですが、最近の京響定期は広上回でも演奏レベルの向上とは裏腹に空席が目立つようになっているので、それを思うと正直複雑です。12月に餅代稼ぎでバカみたいに繰り返し第九の演奏会をやる日本の今の習慣が私は大嫌いなのですが(だってこの曲ってもっとメモリアル的なものというか特別なものでしょう?)、毎年師走に毎週やってるいうのを長年繰り返してたら、超がつくほど真面目で熱血な広上&京響コンビといえども、この時期の第九でベストバウトなど望めるべくもないわけで・・・。

12月の定期が無くなった代わりなのか定期会員のチケットの中に第九の特別演奏会も含まれるようになっていて、それを無駄にしたくなかったいうのと、このコンビでの第九は3年前に聴いているので比較できるかな、という理由で足を運びました。しとらす的には定期のスケジュールにこれを組み込むのはあまり好ましく思ってないのですが、来年はどうしよう・・・?

で、さっきの「もっと先へ……《加速》したくはないか、少年」ならぬ「もっと先へ……《加速》したくはないか、聴衆」なのですが、普段の京響定期には来ないのに2日間を満員御礼にするほど集まった人たちに言いたかった言葉なわけです。今年のラフ2や『ローマの祭』を体感した人なら明白なことですけど、広上&京響の真価ってまだまだこんなレベルじゃないですし。

ベートーヴェンの9番は名曲中の名曲の1つとはいえ、京響向きとも広上さん向きとも言い難い曲ではありますが、それでも3年前と比べてコンビの熟成とレベルアップはしっかり体感できてよかったです。単に指揮者とオケが全力投球してるというだけじゃなくて、第1・2楽章で凝縮度と推進力に満ちた進め方が印象的でした。3階席からだとティンパニの奥村さんがノリノリで叩いてるように見えたほど強調させてたり・・・などなど。

ですが、合唱団の入場で小休止を挟んだ3楽章で、餅代稼ぎで同じ曲を短期間に頻繁に演奏しすぎてる日本の悪習の弊害が感じられて気がかりになりました。奏でる音にというよりもそれ以外でですけど。変なタイミングでカツンカツンとノイズ出てしまってる様子とか上から見てて、多忙による疲労とかルーチンワークみたいになってしまってる影響とか隠せなくなってしまってるのかな、と(いつもの広上回の定期での空気とは少し違う感じ)。

3楽章をそんな感じで眺めてて、終楽章に入ってしばらくしてからのバリトンの歌い出し・・・これでガクッときて冷めてしまいました。合唱はよかったですよ。市立芸大合唱団が若いエネルギーでしっかりリードしてくれていたからでしょう。オケも最後まで頑張ってました。でもどことなく“らしくない”気がして、広上さんの指揮ぶりもただのオーバーアクションというよりもガス欠寸前のを強引にドライブしてるように思えて・・・以前聴いた時よりはレベルアップを実感できて好印象だったので高望みなんでしょうけど。それに私自身の体調も悪くて単に集中力が持たなかっただけかもしれませんし。ですから割り引いて読んでもらって丁度いいくらいでしょうか。

しとらす的には前半でやったダマーズの曲が京響らしさの出た素晴らしい演奏のように思いました。ジャン=ミシェル・ダマーズは1928年生まれのフランスの現代作曲家だそうですが、世にはまだまだ自分の知らない美しい曲が20世紀の作品の中にもたくさんあって、これもその1つなんだな、と。演奏も清水さんのフルートがとてもいい音色で(さすがは京響の看板プレイヤーのお一人ですね・笑)、松村さんのハープもよかったし、弦も澄んだ美しい響きで彩を添えていて京響のストロングポイントを存分に味わえました。質的にはこちらの方が明らかに高得点だと思います。感動したいならこっちの方だと思うんだけどなぁ・・・(オマエだけな、というツッコミしないでね・苦笑)。

ところで、今日会場でもらったパンフの中に来年度の定期のがありましたが、その中に2月下旬予定で新譜が出るという案内も書かれてあって、収録曲が8月の549回定期3曲になってました。これは嬉しいニュースですね。当初の予定では『ドン・キホーテ』だけと聞いていて、でも『ローマの祭』があまりに良かったので、後日用があって京コンに行った時に事務局にも立ち寄って、応対された方に「機会があればぜひCD化を」とお願いしたくらいです(実際に演奏会後に問い合わせとか多数あったそうですが)。ですので、この件に関しては京響サイドの決断に感謝申し上げたいです。あの時の『ローマの祭』は5月定期のラフ2と共に広上&京響のこれまでの最高到達点だと思いますし、全国の多くの人に今の京響がどれほどのものかを知ってほしいので、ぜひ買って聴いていただきたいですね。予価1,500円、Amazonでも販売されるはずです。