ラター:古風な組曲、グラス:チェンバロ協奏曲、フランセ:チェンバロ協奏曲/クリストファー・D・ルイス(チェンバロ)、ケヴィン・マロン&ウェストサイド室内管

今月の京響定期の後にツイッターでチラッと書きましたけど、来年8月の定期ではメインにどうやらジョン・ラターのマニフィカトを演奏する予定のようです。で、このイギリス人作曲家の名前、合唱曲以外の分野で最近名前だけ見たような・・・と思ってちょっと調べてみたら、NMLに9月1日付で登録されてたNAXOSレーベルの新譜の中にありましたね。現代音楽の作曲家がチェンバロとオーケストラのために書いた作品集という、ちょっと珍しいディスクです。3曲のコンチェルトにソロの小品1曲が収録されてますけど、それぞれの作曲家が各自の芸風に上手くチェンバロを馴染ませていて違和感が全然なかったのと、先入観無しで聴いてもわりと親しみやすい音楽のように思いました。

 

ラター:古風な組曲、グラス:チェンバロ協奏曲、フランセ:チェンバロ協奏曲
 /クリストファー・D・ルイス(チェンバロ)、ケヴィン・マロン&ウェストサイド室内管
【NAXOS】

ジョン・ラター
・古風な組曲
フィリップ・グラス
・チェンバロ協奏曲
ジャン・ルネ・デジレ・フランセ
・チェンバロ協奏曲
モーリス・オアナ
・ソー・タンゴ

指揮:ケヴィン・マロン
管弦楽:ウェストサイド室内管弦楽団
チェンバロ:クリストファー・D・ルイス
フルート:ジョン・マクムテリー[古風な組曲]

録音時期:2012年9月10-12日
録音場所:ニューヨーク、アメリカ芸術文学アカデミー

http://ml.naxos.jp/album/8.573146

8573146

 

まずはラターの『古風な組曲』ですが、これは正確に言うとチェンバロとフルートとの合奏協奏曲でしょうかね。それくらいチェンバロと共にフルートが大活躍してます。プレリュード・オスティナート・アリア・ワルツ・シャンソン・ロンドーの6曲からなりますが、メロディーラインが現代風で平易な親しみやすさがあるのと、チェンバロとフルートとのラインの絡みがなかなかに楽しい曲です。

2曲目のグラスのチェンバロ協奏曲。以前にオールソップとボーンマス響の演奏による彼の交響曲を聴いた身からすると、思わずニヤッとしたくなる曲です。終楽章は特にグラスらしい展開の手法が窺えるのですが、そこにチェンバロの音色が自然と溶け込ませているのが上手いという印象でした。

3曲目、フランスの新古典主義音楽の作曲家ジャン・フランセのチェンバロ協奏曲ですが、こちらは典雅な形式美の中にフランスらしいエスプリが随所に散りばめられている楽しい雰囲気を感じさせてくれる曲で、終楽章は聴いていてワクワクするような印象でした。

そして4曲目、チェンバロのソロで約3分半の小品ですが、作曲者のモーリス・オアナはモロッコのカサブランカ生まれのユダヤ系フランス人作曲家。ちょっと地中海の陽気を漂わせるオチャメな感じのタンゴです。

こうして聴いてみると、チェンバロはバロック期の音楽に頻繁に用いられる=古い楽器と思いがちなのが、書きようによっては現代人の感性にも充分に合う“新しさ”も備わっていることを証明するかのような良作揃いのディスクでした。指揮者のケヴィン・マロンが古楽のスペシャリストというのもまたある意味でユニークですね。

 



フィリップ・グラス:交響曲第2番、第3番(+交響曲第4番『ヒーローズ』、他)/マリン・オールソップ&ボーンマス響

ランダムで出てくるNMLトップページの「推薦タイトル」で偶々目にして聴いてみたディスク。それが自分の心の琴線に触れるものだったりすると、宝くじ当ったみたいでちょっと得した気分になるのはどうしてでしょう?www ちなみに私はクジ運・・・どっちかいうと悪い方かな?(苦笑)

閑話休題。

フィリップ・グラス[http://www.philipglass.com/]、1937年生まれのアメリカ人作曲家。本人はあまりそう言われたくないようですが世間での分類上は現代音楽の中でも“ミニマル・ミュージック”というジャンルだそうです。ちなみに、顔は下の写真のような感じ。
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〔※写真:昨年9月の高松宮殿下記念世界文化賞受賞者会見にて〕

オールソップの名前がなかったらスッ飛ばしてたかもしれませんが、彼女がヴァイオリン奏者としてグラスその人とグラス作品の録音にかかわったこともあるという、そんなエピソードを目にしたら興味がわきまして、聴いてみたら独特のユニークさに魅力を感じた、というところです。オケはかつての手兵で退任後も名誉指揮者の称号を送られたボーンマス交響楽団[http://www.bsolive.com/]、イギリス南部の都市を本拠としている団体です。

 

フィリップ・グラス:交響曲第2番、第3番/マリン・オールソップ&ボーンマス響【NAXOS】

フィリップ・グラス
・交響曲第3番
・交響曲第2番

指揮:マリン・オールソップ
管弦楽:ボーンマス交響楽団

録音時期:2003年7月20-21日
録音場所:イギリス、プール、ライトハウス・コンサートホール

http://ml.naxos.jp/album/8.559202

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“ミニマル・ミュージック”とは音の動きを最小限に抑えてパターン化された音型を反復させる音楽のことだそうで、でも作曲者本人がそのように分類されるのは嫌や言うてるらしいので、その辺の事は置いといて。2番シンフォニーの終楽章はブラスセクションの使い方はアメリカンなんだけど、それ以外でのある種の高揚感はドビュッシーの『海』ラストの「風と海との対話」や『夜想曲』第2曲の「祭」とかを少し連想させるかな、という印象を持ちましたけど、グラスはジュリアード音楽院を卒業した後に渡仏してナディア・ブーランジェに師事したことがあるそうで、そのあたりはフランス印象主義の影響なのかもしれませんね。

そしてディスクでは2番の前に置かれた3番シンフォニー。弦楽セクションだけによる演奏ですが、楽器編成と作曲書法に制約があるにもかかわらず、微妙なパターン変化の妙味や色彩感など、よくもまあこれだけ表現できるものだと感心しました。この辺りは作曲者本人と交流のあったオールソップの処理の巧さもあるのかな、という気がします。ただ叙情的な美しさだけでなく、そこかしこに紛れている小さな変化球っぽいのが上手い具合に隠し味になっているような印象でした。

 


 

オールソップとボーンマス響のコンビによるグラス作品の録音は2曲収録されたディスクがもう1枚存在します。まず『The Light』と題された曲はマイケルソン・モーリーの実験(1887年にアルバート・マイケルソンとエドワード・モーリーの2人の米国人物理学者によって行なわれた実験、内容を知りたい方はウィキペディアの解説をどうぞ)にインスパイアされた曲なのだそうですが、あまり深いこと考えずに聴いた方がいいかもです(をい)。

そして、『Heroes Symphony』と題された交響曲第4番はアンビエント・ミュージック(環境音楽)の先駆者として知られるブライアン・イーノがシンセサイザー&キーボード奏者として参加したデヴィッド・ボウイの11枚目のアルバム『Heroes』(邦題では「英雄夢語り」?今はそのまんま「ヒーローズ」かな?)のボーナストラック入り1991年盤を下敷きにした全6楽章からなる交響曲です。私は洋楽ロックには疎いのでデヴィッド・ボウイも名前を知ってる程度で彼名義のアルバムも残念ながら聴いたことがないのですが、1977年リリースの『Heroes』のタイトルチューンとなっている曲はボウイがベルリンの壁の傍で落ち合う恋人達の姿を見て着想を得たエピソードがあるそうで、冷戦期で東西に分裂していた当時のドイツの状況を思い起こしながら聴いていると、このシンフォニー全体を覆うモンヤリした閉塞感や寂寥感、シニカルさといった雰囲気が窺えるのも納得のいく印象でした。

 

フィリップ・グラス:交響曲第4番『ヒーローズ』、他/マリン・オールソップ&ボーンマス響【NAXOS】

フィリップ・グラス
・ザ・ライト
・交響曲第4番『ヒーローズ』〜デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノの音楽より

指揮:マリン・オールソップ
管弦楽:ボーンマス交響楽団

録音時期:2006年5月16-17日
録音場所:イギリス、プール、ライトハウス・コンサートホール

http://ml.naxos.jp/album/8.559325

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