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ヴァンハル:クラリネット・ソナタ集/エルンスト・シュラーダー(クラリネット)、ヴォルフガング・ブルンナー(フォルテピアノ)

昨日の記事で少し触れたウィーンの新興レーベルGramola[https://www.gramola.at/]からリリースされた新譜が今日付で登録されました。このレーベルはウィーンやザルツブルクなどで教育を受けた若手の音楽家を積極的に起用しているそうで、このディスクはクラリネットとフォルテピアノという組み合わせが珍しいという理由だけで食いついたのですが、聴いてみたらなかなかの良曲・好演揃いで、作曲家のヴァンハルについてちょっとググってみたら思いもかけない事実に気付いて、今回採り上げてみた次第です。

 

ヴァンハル:クラリネット・ソナタ集/シュラーダー(クラリネット)&ブルンナー(フォルテピアノ)【Gramola】

ヨハン・バプティスト・ヴァンハル
・クラリネット・ソナタ 変ホ長調
・ヴァイオリン・ソナタ ト長調[※クラリネットとピアノ編]
・クラリネット・ソナタ 変ロ長調
・クラリネット・ソナタ ハ長調
・ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調[※クラリネットとピアノ編]

クラリネット:エルンスト・シュラーダー
フォルテピアノ:ヴォルフガング・ブルンナー

録音時期:2012年5月9-11日
録音場所:オーストリア、オーバーエスターライヒ州クレムスミュンスター、クレムゼック城・楽器博物館

http://ml.naxos.jp/album/Gramola98988

Gramola98988

 

まずは作曲者のヨハン・バプティスト・ヴァンハル(ボヘミア出身なので本来はチェコ語でヤン・クシュチテル・ヴァニュハルと言うらしいのですが、ウィーンで名を馳せたのでドイツ語読みのほうが広まったそうな)、系統としてはウィーン古典派で作曲だけで名声を博し生計を立てることのできた、おそらくは最初の作曲家だそうで、他にも音楽活動として教師やったり、ハイドンやモーツァルト、ディッタースドルフとと組んで弦楽四重奏を演奏したりとかもしていたそうです。交響曲や室内楽曲など膨大な量の曲を書いて一時は大成功したものの、40代の頃に金銭トラブルなどの不幸が元で鬱病になって断筆した経験もあるとか・・・このエピソード、個人的にものすごくシンパシー感じます(私は彼みたいな才能持ちではない一凡人ですけど・苦笑)。

なにはともあれ、聴いてみてまず思ったのが、モーツァルトよりも先にクラリネットの特性を活かした傑作を書いた作曲家がいたということ(5曲のうち2曲はヴァイオリン・ソナタからのアレンジですが3曲はれっきとしたクラリネット・ソナタですからね)。ウィーン古典派らしいカッチリとした形式感と調和の中にキラリと光る部分を数多く見て取ることができます。NAXOSレーベルに交響曲の録音が何枚かあるみたいなので、時間を見つけて聴いてみようと思います。

また、演奏に関しても、クラリネットのエルンスト・シュラーダーとフォルテピアノのヴォルフガング・ブルンナーの両者ともに欧州の古楽界で一流どころとして名前を売ってるだけあって、ピッタリと息のあった躍動感ある華やかな素晴らしいハーモニーを軽やかに奏でています。そして気になったのがクラリネットの音色というか音の雰囲気。現代のモダンオケで使われているものと違うとは感じましたが、シャリュモーやバセット・ホルンなどのピリオド楽器系までは遡らないものの、どうやら19世紀初頭にウィーンとドレスデンで製作された2器のモデルを使ってるようです。道理でなぁ〜(バリバリのモダンなモデルなら京都というか京響には小谷口さんという日本でも指折りの名手が首席でいますんでw・・・彼女は2・3年前に文化庁派遣芸術家在外研修員としてウィーン国立音楽大学に1年ほど留学してましたし)。

 



リスト:ピアノ作品集(+『ドッペルゲンガー』〜リスト:シューベルト歌曲編曲集)/ドラ・デリイスカ(ピアノ)

チェルカスキーのディスクを紹介した際に私が20年前にライヴで聴いたリストによる『タンホイザー』序曲のピアノ編曲版のことをお話ししましたが、せっかくなのでその曲を探して聴いてみようと思いNMLで検索したら、さすがにチェルカスキーが録音したのはありませんでしたけど、1980年生まれのブルガリア人ピアニスト、ドラ・デリイスカ[http://www.doradeliyska.net/]が録音した演奏を聴いてみて、ちょっと興味を惹かれたのでググったりしてみて採り上げようと考えた次第です。ちなみにアルバムをリリースしたのは現在彼女が拠点としているウィーンのGramola[https://www.gramola.at/]という新興レーベルです。

 

リスト:ピアノ作品集/ドラ・デリイスカ(ピアノ)【Gramola】

フランツ・リスト
・ピアノソナタ ロ短調 S.178
フランツ・シューベルト[※リスト編曲]
・歌曲集『白鳥の歌』〜セレナード S.560(原曲はD.957-4)
・シューベルトの12の歌曲〜第2曲:水の上で歌う S.558-2(原曲はD.774,Op.72)
フランツ・リスト
・パガニーニによる大練習曲 S.141
リヒャルト・ワーグナー[※リスト編曲]
・歌劇『タンホイザー』序曲 S.442

ピアノ:ドラ・デリイスカ

http://ml.naxos.jp/album/Gramola98853

Gramola98853

 

日本語でそのまま「ドラ・デリイスカ」でググると、上記のではなく日本国内仕様で『リストなのか、シューベルトなのか~ピアノで弾く「歌曲王」の世界~』としてリリースされているアルバムについて賞賛している記事が目につきます。シューベルトの歌曲をリストがピアノ独奏用にアレンジした作品ばかりを全14曲並べたディスクですが、彼女の技巧の冴えはもちろんのこと、原曲となっているシューベルトの歌曲を歌手が歌うようなイメージでピアノを弾いて、リストのアレンジからシューベルトの歌を上手く表現している、といった感じです。

私はシューベルトに、しかも歌曲にはほとんどと言っていいほど馴染みがないので、このアルバムにも入っているシューベルトのアレンジものではよくわからなかったのですが、『タンホイザー』を聴いていると、彼女の表現力を褒める人の気持ちが理解できるような気がしました。ワーグナーのこのオペラ、正式には『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』、タンホイザー伝説とヴァルトブルクの歌合戦の伝説の2つの伝説を下敷きに作曲されました。その2つのうち歌合戦の方をかなり強く意識してデリイスカが弾いているように感じたのです。ミュージシャンの感覚としてはかなり難題だと思うのですが(歌には旋律を奏でるだけでなく言語感覚というか発音や言意その他諸々が付き纏いますから)、彼女の場合は母親がオペラ歌手で自身も小さい頃から歌うのが好きだったそうなので、そのあたりの感覚も家庭の環境で育まれたものなのでしょうね。ワーグナーの作風にあるダイナミズムもピアノでしっかり構築しながらも、その中に内在する‘歌’が聴き手にも自然に感じられるように演奏しているような印象を受けました。

ルックスは見ての通りの美人さんですが(笑)、腕前だけでしっかりアピールできるだけの実力を持ってるピアニストだと思います。ただし私の第一印象では演奏する作品によって得手・不得手がハッキリ分かれるタイプのようにも感じましたが、年齢的にそろそろアラサーからアラフォーにさしかかる頃で、自身の音楽性をどのように熟成させていくのか楽しみではないでしょうか。

 


 

ところで、先に挙げた『ドッペルゲンガー』(影法師)と題されたアルバムの方ですが、Gramolaレーベルのサイト内にプロモーションビデオっぽい動画がありましたので、興味のある方はご覧になってください。

 

『ドッペルゲンガー』〜リスト:シューベルト歌曲編曲集/ドラ・デリイスカ(ピアノ)【Gramola】
[※日本での輸入代理店マーキュリーでは『リストなのか、シューベルトなのか~ピアノで弾く「歌曲王」の世界~』というお題をつけて日本語版ライナーノート添付の国内盤仕様で出してるそうです]

フランツ・シューベルト作、フランツ・リスト編曲
・シューベルトの12の歌曲〜第8曲:糸を紡ぐグレートヒェン S.558-8(原曲はD.118)
・涙の讃美 S.557(原曲はD.711,Op.13-2)
・シューベルトの12の歌曲〜第9曲:セレナード(きけ、きけ、ひばり) S.558-9(原曲はD.889)
・シューベルトの12の歌曲〜第3曲:君はわが憩い S.558-3(原曲はD.776)
・シューベルト:歌曲集『白鳥の歌』〜セレナード S.560-7(原曲はD.957-4)
・6つのシューベルトの歌曲〜ます S.563-6(原曲はD.550,Op.32)
・シューベルト:歌曲集『美しき水車小屋の娘』〜水車職人と小川 S.565bis-2(原曲はD.795-19)
・シューベルト:歌曲集『白鳥の歌』〜仕事を終えて S.560-3(原曲はD.957-5)
・シューベルトの4つの宗教歌曲集〜万霊節のための連梼 S.562-1(原曲はD.343)
・シューベルト:歌曲集『白鳥の歌』〜春の憧れ S.560-9(原曲はD.957-3)
・シューベルト:歌曲集『冬の旅』〜辻音楽師 S.561-8(原曲はD.911-24)
・シューベルトの12の歌曲〜第11曲:さすらい人 S.558-11(原曲はD.489)
・シューベルト:歌曲集『白鳥の歌』〜影法師 S.560-12(原曲はD.957-13)
・シューベルトの12の歌曲〜第4曲:魔王 S.558-4(原曲はD.328)

ピアノ:ドラ・デリイスカ(使用楽器:ベーゼンドルファー)

録音時期:2011年10月

http://ml.naxos.jp/album/Gramola98931

Gramola98931