ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲、プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番/パトリシア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン)、ウラディーミル・ユロフスキ&ロンドン・フィル

今日付でNMLに登録されたディスクでもう1つ注目すべきが、Naïve[http://www.naive.fr]レーベルから先月下旬に新譜でリリースされたばかりの、ストラヴィンスキーとプロコフィエフのヴァイオリン・コンチェルトの組み合わせのもの。ヴァイオリニストはモルドヴァ出身のパトリシア・コパチンスカヤ[http://patriciakopatchinskaja.com/]、私は初めて目にした名前の女性ヴァイオリニストですが、昨年とかに来日経験があるようなので、実演を聴かれた人もそれなりにいるのではと思います。たぶんストラヴィンスキーとプロコフィエフの2人のキャラの濃い(笑)ロシアの作曲家のカップリングで、バックがユロフスキ&ロンドン・フィルのコンビでなければスルーしてたかもしれません。ただの興味本位で聴いてみたのですが、これがまた・・・だったので。

 

ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲、プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
 /パトリシア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン)、ウラディーミル・ユロフスキ&ロンドン・フィル
【Naïve】

イーゴリ・ストラヴィンスキー
・ヴァイオリン協奏曲 ニ調
 [※ラストに置かれたカデンツァはコパチンスカヤとシェーマンによるオリジナル]
セルゲイ・プロコフィエフ
・ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調 Op.63

ヴァイオリン:パトリシア・コパチンスカヤ
指揮:ウラディーミル・ユロフスキ
管弦楽:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスター:ピーター・シェーマン

http://ml.naxos.jp/album/V5352

V5352

 

Naïveのサイトを見ても録音時期とかのデータが記されてないのがとても残念なのですが・・・ストラヴィンスキーのカデンツァはジャケット裏に
“WHICH STRAVINSKY DIDN’T WRITE | WITH PIETER SCHOEMAN”
と書かれていたので、たぶんコパチンスカヤ単独でなくロンドン・フィルのコンマスの意見を取り入れながらのオリジナル、だと考えたのですが、違ってたらスンマセンです。

さて、モルドヴァ生まれでウィーンとベルンで作曲とヴァイオリンを学んだというパトリシア・コパチンスカヤ、ストラヴィンスキーとプロコフィエフで見せている彼女のヴァイオリンは単にアクが強いと言うよりも凄まじいほどエッジが鋭くてパワフルな印象です。でも決して乱暴ではなくて繊細に気を使っている部分もちゃんとあるし、あれだけガツガツ弾いてるようでいて音色に一片の濁りも無い。先月の京響定期に来演したアレクサンドラ・スム女史とはまた違う毛色の肉食系といったところでしょうか。イギリスの音楽壇界隈でも勢いの良さでは一目置かれているであろうウラディーミル・ユロフスキとロンドン・フィルのコンビに対して一歩も引かないどころか彼らと歩調を合わせつつ大いに自己主張しているところが見事だと思いました。

このディスクに収録された2曲とも私にとっては縁遠いコンチェルト(定期とか地元で聴ける生の演奏会で無理やりメンコンやチャイコン聴かされるよりはこういったのを採り上げてもらった方がマシという程度・苦笑)なのですが、それでも1度聴いただけで圧倒されてしまったという次第でした。

ところで、この新譜にはプロモージョン動画もあるので、よろしければ参考までに。

 



ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、ストラヴィンスキー:春の祭典、ラヴェル:ボレロ/フィリップ・ジョルダン&パリ国立歌劇場管

1974年チューリッヒ生まれのスイス人でアルミン・ジョルダンの息子フィリップ・ジョルダン[http://www.philippe-jordan.com/]。親の七光りなどではなく地道に歌劇場の下積みから経験を重ねて、2009年シーズンからパリ国立オペラ[http://www.operadeparis.fr/]の音楽監督に抜擢されている他、ファビオ・ルイージの後任として2014-15シーズンからウィーン交響楽団[http://www.wienersymphoniker.at/]の首席指揮者を務めることが内定しているなど、真に将来を嘱望されている若手指揮者の1人ですね。
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その彼が現在の手兵であるパリ国立オペラの座付きオケと演奏した3曲のモダンバレエ音楽(『牧神』は厳密には後付ですが)の録音が今日NMLに登録されていました。Naïve[http://www.naive.fr/]レーベルから今年初旬にリリースされたディスクですが、有名曲揃いなだけでなく指揮者とオケの実力を測りやすい類の曲でもありますので、早速聴いてみました。

 

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、ストラヴィンスキー:春の祭典、ラヴェル:ボレロ
 /フィリップ・ジョルダン&パリ国立歌劇場管弦楽団
【Naïve】

クロード・ドビュッシー
・牧神の午後への前奏曲
イーゴリ・ストラヴィンスキー
・バレエ『春の祭典』
モーリス・ラヴェル
・ボレロ

指揮:フィリップ・ジョルダン
管弦楽:パリ国立歌劇場管弦楽団
フルート:フレデリック・シャトー[牧神の午後への前奏曲]

録音時期:2012年5月
録音場所:パリ、オペラ・バスティーユ

http://ml.naxos.jp/album/V5332

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V5332

 

率直に言うと、色彩感豊かで洗練されたオケの響きは文句無し。そしてフィリップ・ジョルダンの指揮がとにかく抜群のキレを見せていて音楽作りが凄く上手いですね。オケとの相性も良さそうです。ハルサイやボレロでのクライマックスへのピークの持っていき方がナチュラルなのとリズム感の切れ味の良さでエキサイティングな演出になってますし、同時に緻密な部分も持ち合わせていて繊細なニュアンスへの配慮も怠りなくしっかりと成されている印象がします。

下手に何か細工をしようとすると途端に作為的なあざとさを曝け出す無様な結果になりがちですが、フレージングがナチュラルかつスムーズで、全体と細部のバランスを巧く保ちながら聴き手を自然に興奮の渦へと誘う、その手腕は見事と言う他なく、こうしたところはオペラハウスでの下積み経験があればこそなんだろうかと思いながら聴いていました。パリ国立オペラ音楽監督就任記念コンサートで演奏されたアルペン・シンフォニーのライヴ録音が各方面で高い評価を受けているのも頷けますね。

 


 

ちなみに、2009年11月に行われた就任記念コンサートでのリヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲のライヴ録音が下記のディスクです。さすがにドイツっぽさは微塵もありませんが、彼らがキャンバスに描いた風景は鮮やかな極彩色の迫力あるもので、独墺系の名盤とはまた違った趣きの魅力があると思います。

http://ml.naxos.jp/album/V5233

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V5233

 



チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲、フィレンツェの思い出/サラ・ネムタヌ(ヴァイオリン)、クルト・マズア&フランス国立管、他

NMLの「今週の一枚」に本日付けで登録されたディスクです。日本での取り扱いは来月初めからのようですが、いち早くということでしょうか。私は映画全般に疎いというか関心を持てない人間なので、2009年公開のフランス映画『オーケストラ!(Le CONCERT)』というのがあったことを知らなかったのですが、なんでも劇中でチャイコンを演奏するシーンというのが大きな見せ場だそうで、そのヴァイオリンソロの演奏を吹き替えで担当しているのがサラ・ネムタヌというフランス国立管弦楽団のコンミス。1981年生まれでルーマニアとフランスのハーフというか二重国籍者っぽい方のようです。

 

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲、フィレンツェの思い出
 /サラ・ネムタヌ(ヴァイオリン)、クルト・マズア&フランス国立管、他
【Naïve】

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
・ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
・弦楽六重奏曲 ニ短調『フィレンツェの思い出』 Op.70

ヴァイオリン:サラ・ネムタヌ
指揮:クルト・マズア[ヴァイオリン協奏曲]
管弦楽:フランス国立管弦楽団[ヴァイオリン協奏曲]
ヴァイオリン:リュック・ヘリー[フィレンツェの思い出]
ヴィオラ:ザビーヌ・トータン、クリストフ・ゴーグ[フィレンツェの思い出]
チェロ:ラファエル・ペロー、ジャン=リュック・ブーレ[フィレンツェの思い出]

録音時期:2012年4月[ヴァイオリン協奏曲]、2012年9月[フィレンツェの思い出]
録音場所:パリ、シャトレ座[ヴァイオリン協奏曲]、
     ラジオ・フランス・スタジオ106[フィレンツェの思い出]

http://ml.naxos.jp/album/V5325

V5325

 

さすがフランスのトップクラスのオケのコンミスを務めるだけあって、4日前に聴いたどこぞのソリストよりもよっぽどバリウマ(笑)で、上品で繊細な中にもしっかりとキャラクターを打ち出した説得力ある演奏です。どこかフランスらしからぬ独特の感性が垣間見えるのは彼女にルーマニア系の血が入ってるせいもあるのでしょうか?あと伴奏がいい感じでサポートしているのも好印象ですね。まぁソリストの職場仲間だから息が合って当然なのでしょうけど。

でも、聴き物なのはチャイコンよりもむしろ『フィレンツェの思い出』の方かもしれません。サラ・ネムタヌと共にヴァイオリンを担当するリュック・ヘリーは同じフランス国立管弦楽団のコンマス。他の4人の内3人がフランス国立管の首席奏者で、ヴィオラのクリストフ・ゴーグもフランス放送フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者という肩書持ちが揃ってのフランス勢によるセクステットなのですが、これが想像以上にアクが強いというか厚みのある響きで刺激的な熱演になっていて、良い意味で予想を裏切ってくれました。

〔※ついでにググってみると、フランス国立管もフランス放送フィルもORTF(フランス公共放送)内のラジオ・フランスが現在は管理・運営しているオケなのだそうな〕

映画『オーケストラ!』を観て感銘を受けた方は、ぜひ今度の新譜も聴いてみることをお薦めします。

 



リスト:『巡礼の年』全曲/ベルトラン・シャマユ(ピアノ)

フランスはナンスを発祥とするクラシックの一大イベント『ラ・フォル・ジュルネ』。日本でも2005年の東京を皮切りにいくつかの都市で開催されるようになりましたが、日本では開催時期がゴールデンウィークに設定されているので、すっかり春の風物詩となった感がありますね。今年の専用サイトも開設され、NMLでも一昨日3月11日から「聴けるプログラム」として特集ページが組まれています。

 →ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン<熱狂の日>音楽祭 http://www.lfj.jp/lfj_2013/

 

さて、今年のテーマは満を持しての盛大なフランスお国自慢「パリ、至福の時」だそうで、日本語版公式サイトに書かれてあった由来には

タイトルの「至福の時」L’heure exquise(ルール・エクスキーズ)は、19世紀後半のパリを代表する詩人ポール・ヴェルレーヌの詩「白い月」の最後のフレーズから、ルネ・マルタンが引用したものです。作曲家のフォーレやアーンはこの詩に音楽を付け、歌曲にもなっています。
19世紀から20世紀にかけて、パリは世界の芸術の首都としてさまざまなジャンルの芸術家が集い、交流し、素晴らしい作品の数々が生まれましたが、L’heure exquiseという言葉をテーマタイトルに引用することによって、ルネ・マルタンは芸術家たちにとって至福の時代であった頃のパリを再現しようとしたのです。

とありました。おそらくは「19世紀から20世紀にかけて、パリは世界の芸術の首都としてさまざまなジャンルの芸術家が集い」とあるのがミソで、フランスの作曲家だけでなくパリで活動していた時期もあったスペインの作曲家のアルベニスやファリャまで引っ張り出しています。道理で出演者の中に村治佳織さんや荘村清志さん、大萩康司さんに鈴木大介さんといったギタリストの名前が多いと思ったら、そういうことだったので、と。それにしてもスペインのアルベニスとファリャを巻き込むとは図々しい(苦笑)というか、まるで「ワシが育てた」とでも言いたげな感じでフランスの悪い面(一種の傲慢さ)が垣間見えるというか・・・(以下略)。

まぁせっかくNMLでも特集ページが組まれましたし、私自身もフランス音楽は好きな方なので(というかクラシックに嵌るキッカケがラヴェルだった)、今回の東京での公演に出演する演奏者や採り上げられる作曲家など、NMLのカタログの中で適当に目星をつけたディスクをチョイスして時々採り上げてみることにしました。

まずは、5月3・4日にオケとの共演やソロリサイタルで出演する1981年トゥールーズ生まれのフランス人ピアニスト、ベルトラン・シャマユ(Bertrand Chamayou)がNaïve[http://www.naive.fr/]レーベルに録音した現時点での最新盤から。

 

リスト:『巡礼の年』全曲/ベルトラン・シャマユ(ピアノ)(3CD)【Naïve】

CD1
フランツ・リスト
・巡礼の年 第1年『スイス』 S.160
 ウィリアム・テルの聖堂
 ワレンシュタット湖畔で
 田園曲
 泉のほとりで
 夕立
 オーベルマンの谷
 牧歌
 郷愁
 ジュネーヴの鐘

CD2
フランツ・リスト
・巡礼の年 第2年『イタリア』 S.161
 婚礼
 物思いに沈む人
 サルヴァトール・ローザのカンツォネッタ
 ペトラルカのソネット第47番
 ペトラルカのソネット第104番
 ペトラルカのソネット第123番
 ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」
・巡礼の年 第2年補遺『ヴェネツィアとナポリ』 S.162
 ゴンドラを漕ぐ女
 カンツォーネ
 タランテッラ

CD3
フランツ・リスト
・巡礼の年 第3年 S.163
 アンジェルス!守護天使への祈り
 エステ荘の糸杉にI:哀歌
 エステ荘の糸杉にII:哀歌
 エステ荘の噴水
 ものみな涙あり−ハンガリー風に
 葬送行進曲
 心を高めよ

ピアノ:ベルトラン・シャマユ

録音時期:2011年3月、6月、7月
録音場所:フランス、ポワティエ

http://ml.naxos.jp/album/V5260

V5260

 

このアルバムが録音されたのはリストの生誕200周年アニヴァーサリー・イヤーであると同時に演奏者自身も30歳という節目の年を迎えた時期ですけど、己の持てる技術と音の品質を全て洗練された自然美の構築と描写に注ぎ込んだ感のある演奏で、個々の曲の作曲年代がバラバラで作風の傾向も異なる『巡礼の年』3集を、まるで元から1巻の絵巻物として存在していたかのように作り上げたかのようです。各曲の個性を消すのではなくそれぞれ細部まで丁寧な表現を見せながらも全曲を一通り聴くとまことに流麗で一切の不自然さを感じさせない見事さです。

例えば「ソナタ風幻想曲『ダンテを読んで』」。ヴィルトゥオーソ的要素を発揮させがちなこの曲において力みがまるで無く軽々と弾いているようにすら見えますが、スケール感とダイナミズムはそのままにフォルテの音色が透明でかつズシッと質感もあり、それが前後の曲から浮き出ることなく迫力と存在感を誇示することに成功していると思われます。「エステ荘の噴水」においても美しい音色で印象派のような幻想的な情景を描き出していますし、他の曲についても語りだすとキリがないのでしょうが、それでも全曲でCD3枚分ある『巡礼の年』を時間の経過を忘れてしまうほど明瞭でスムーズな流れで(聴き手に疲労感を与えることなく)聴き通せてしまうのはまことに不思議です。

今回の東京でのラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンではサン=サーンスやドビュッシーなどを採り上げるようですが、時間とお金に余裕のあるピアノ好きの方は、ぜひ行かれてみてはいかがでしょうか?

 

東京国際フォーラム%%http://maps.google.co.jp/maps?q=35.676840,139.763553+(%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%A0)&hl=ja&ie=UTF8&z=15%%35.676840%%139.763553%%15