スクリャービン:『法悦の詩』、『神聖な詩』、他/ネーメ・ヤルヴィ&シカゴ響、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管、デンマーク国立放送響

今日付でNMLの「今週の一枚」として紹介されたディスクです。今年4月に永眠されたシカゴ交響楽団の元首席トランペット奏者アドルフ・ハーセスさんは今日7月25日がお誕生日なのだそうで、第2次大戦後間もない頃から半世紀以上にわたってシカゴ響の首席トランペット奏者を務め、“トランペットの神様”とまで賞賛されたハーセスさんを偲んで、という趣旨のようです。トランペットのソロが大活躍=ハーセスさんの演奏を堪能できる(協奏曲以外での)管弦楽作品としてよくパッと思い浮かぶのが『展覧会の絵』や『ツァラトゥストラはかく語りき』などだったりしますが、なるほど、スクリャービンの『法悦の詩』もあるのですね。

ちなみに、この2枚組CDに収録されているスクリャービンの交響曲3曲全てがシカゴ響の演奏ならば、一時期は世界最高とまで称されたこのオケのブラスセクションを充分堪能できるところだったのですが、そうは問屋が下ろしてくれなかったようで残念ながら違います(苦笑)。まぁそれでもレベルの高いオケを起用してるので、値段的には元が取れるとは思いますが・・・。

 

スクリャービン:『法悦の詩』、『神聖な詩』、他/ネーメ・ヤルヴィ&シカゴ響、他(2枚組)【Chandos】

アレクサンドル・ニコラエヴィチ・スクリャービン
・交響曲第4番『法悦の詩』 Op.54
・交響曲第2番ハ短調 Op.29
・交響曲第3番ハ短調『神聖な詩』 Op.43
・管弦楽のための前奏曲『夢想』 Op.24

指揮:ネーメ・ヤルヴィ
管弦楽:シカゴ交響楽団(法悦の詩)、デンマーク国立放送交響楽団(神聖な詩)、
    ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
トランペット:アドルフ・ハーセス(法悦の詩)

録音時期:1989年11月27-28日(法悦の詩)、1985年12月9-10日(交響曲第2番、夢想)、
     1990年5月31日-6月2日(神聖な詩)
録音場所:シカゴ、オーケストラ・ホール(法悦の詩);
     グラスゴー、ヘンリー・ウッド・ホール(交響曲第2番、夢想);
     コペンハーゲン、デンマーク放送コンサートホール(神聖な詩)

http://ml.naxos.jp/album/CHAN241-5

Chan2415

 

3つのオケを起用しての演奏ですが、まずはハーセスさんがソロを担当している『法悦の詩』、御年68歳の時の録音ですが、全盛期をやや過ぎているとはいえバリバリ現役には変わりない圧倒的な存在感と迫力です。まだショルティが音楽監督だった頃で世界最高の金管セクションが健在であることを明白に感じずにはいられない演奏です。Deccaなどとはまた一味違ったChandosによる癖のないナチュラルで良質な録音もいいですね。

もっとも黄金期のシカゴ響ならおバカな指揮者が振らないかぎりはこれくらいできて当たり前なのでしょうし、むしろ予想外に良かったと感じたのは2番シンフォニーの出来ですね。どういう縁か京響定期で2度の生演奏に接することのできた曲なのですが、ともすれば冗長になりやすく退屈さを憶えかねないこのシンフォニーに対して、ヤルヴィはメリハリを効かせて身の引き締まった音楽に仕上げています。スコティッシュ・ナショナル管のややドライなトーン、特にブラスセクションのパリッとした響きも功を奏して大いに健闘しています。

『神聖な詩』でのデンマーク国立放送響も好演を見せていますし、往年のシカゴ響のような世界のトップ3に肩を並べられるほどではないにしろ、スコティッシュ・ナショナル管にしてもデンマーク国立放送響にしても、こうして並べて聴いても意外に見劣りすることのない一流のレベルにある証明を窺わせているように感じました。

 



京都市交響楽団 第556回定期演奏会(指揮:大友直人)

大友さんが前回京響定期に登場されたのって何時でしたっけ?所用で聴き逃してしまったことは覚えてるのですが・・・なので個人的には大友回は随分と久しぶりでした。今年から私は3階→2階に席を移したので、座席からステージが一層よく見えるようになったのですが、久しぶりに大友さんの姿を拝見して「白髪増えたなぁ〜」・・・すみません(苦笑)。

それにしても、今度の座席、思った以上に直接音しか耳に来なくて、ちょっと失敗したかな?と少々後悔しています(苦笑)。まぁでも、他の指揮者で聴いてみないとまだわかりませんかね。大友さんって必要以上にバランス取り過ぎて強奏時にも音量を抑える傾向が見られますので(東響ではどうか知りませんが京響でのお音さんを見た私の印象ではそんな感じ)。

 

京都市交響楽団 第556回定期演奏会
2012年4月21日(土)14時30分開演@京都コンサートホール

◆S.ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op.34,No.14
◆S.プロコフィエフ:交響曲第1番ニ長調『古典交響曲』 Op.25
(休憩)
◆A.スクリャービン:交響曲第2番ハ短調 Op.29

指揮:大友直人
コンサートマスター:泉原隆志

 

個人的には大友さんなら英国モノか北欧系で・・・と思うのですが、あいにくとオール・ロシア。1曲目と3曲目が先日の日曜(4月15日)に行われた東響[http://tso.jp/]での599回定期と同じなので仕方なかったのかな・・・という気もしますが(逆だとこっちが練習台みたいな感じになるのでそれよりマシですけど)・・・でもスクリャービンの2番なんて3年前にゴレンシュタインが振ってるのを聴いてますし、しとらすとしては正直「また?!」という感じ(苦笑)。

客入りは・・・土曜のマチネのわりにあまりよくなかったです。花見にでも取られちゃったかな?

1曲目のヴォカリーズはメロディアスな小品をあざとくならないように上手に聴かせる演奏で、この辺りはさすが大友さんといったところ。2曲目の古典交響曲は良くも悪くも端正に仕上げたいう印象でした。もうちょっと諧謔的な部分があってもよかったのでは?と思わなくもなかったですが・・・まぁいいや。

後半メインのスクリャービンの2番は3年前にゴレンシュタインが振ってるのでオケにとっては2回目かな?たぶん。そして前述のようにこちとらもまさかの2回目w あれからも京響はレベルアップしてるし、振ってるのは前常任かつ現桂冠なお方(更には東響定期で採り上げたばかり)なので、それなりに完成度高くて当然だったかも・・・この曲を初めて聴く人にとっては良かったのではと思いました。私の希望としては
「もっと豪快に鳴らしてネチっこくやってもよろしいんですのよ」
だったのですが、それはそれで大友さんらしくないですしねぇ・・・。

ところで、先月定年で卒団された山本さんの代わりに入団した新人のファゴット奏者は村中宏さん。別府の出身で東京芸大を卒業したばかりのようです。後半に中野さんの隣で2番を吹いてましたが、演奏後のカーテンコールで大友さんがファゴットを指した際に、中野さんに促されて一緒に立って、会場だけでなく壇上からも盛大に祝福されてました。こういうの微笑ましくていい雰囲気ですね。レセプションでマイク渡されてメッチャ緊張しながら挨拶してたのが初々しかったです。これからも頑張ってほしいですね。自分の体調を考慮して彼の挨拶を見ただけで私は帰宅したので、大友さんがどんな話をされたのかまでは知りません、あしからず。

 



小山実稚恵20周年記念演奏会 in 京都

何が20周年かいうと、ショパンコンクール入賞からだそうです。記念演奏会が京都・東京・仙台で行われるとのこと。

小山実稚恵20周年記念演奏会
~ピアノ3大協奏曲の夕べ

2005年11月3日(木・祝)19時開演
@京都コンサートホール

◆F.ショパン ピアノ協奏曲第1番ホ短調 op.11
(休憩)
◆A.N.スクリャービン ピアノ協奏曲嬰ヘ短調 op.20
(休憩)
◆P.Ⅰ.チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 op.23

ピアノ:小山実稚恵
指揮:広上淳一
管弦楽:京都市交響楽団(コンサートマスター:工藤千博)

 京都新聞のトマト倶楽部(文化事業を行う団体?)の主催でチケット代が2,000円とお買得価格なので、大ホールに9割以上の人が入ってました。定期演奏会より多いってのも、なんだかなぁ(苦笑)。まあ、でも小山さんのピアノに広上さんの指揮、これでいくらなんでもハズレはないでしょう、ということで(笑)。

 小山さんのピアノ、音色や強弱などの使い分けを随時的確にしながらも、どんな時でも出す音に一点の曇りも濁りもないのはさすがです。ホール中にガンガン響くわけではないのですが、クリアで美しい音。しかも、広上さんのサポートがいいこともありますが、オケのみんなと一緒になって音楽を作ろう・感じようという姿勢や表情に好感が持てます。

 聴衆が一番盛り上がったのは最後のチャイコフスキーでしたが、個人的にはスクリャービンが一番印象に残りました。若い頃の作品ということで後期ロマン派の影響が強く残ったもので、聴いていても濃厚なロマンティシズム漂うものなのですが、感情をたっぷり込めながらも決してセンチメンタルなものに陥らず、しっかりとした造形感も内容の深みも出ていて大変聴き応えがありました。以前無名のピアニストがやったリサイタルで聴いたスクリャービンはちっともいいとは思わなかったけど、小山さんのような素晴しい演奏で聴くといやでも関心が増しますね。「スクリャービンのピアノ・ソナタ全集をあなたは買いたくな~る買いたくな~~る」と暗示をかけんばかり(爆)でした。
 チャイコフスキーもとてもよかったです。特に終楽章が圧巻でしたね。クリアで芯のしっかりした音はキチンと維持しつつ終始速めのテンポで推進力を伴ってガッ、ガッと突き進むピアノに、以心伝心のように広上さんも(前のめりにならないようにしっかり手綱を締めながらも)オケを引っぱる引っぱる。阿呆がやるとタダの安っぽいものにしかならないチャイコフスキーですが、今日の演奏のように全体の構造をしっかり作り上げておいて終楽章でああいったことをすると、中身の濃い名曲なんだな~と思わされるから不思議です。聴衆だけでなく、オケのメンバー全員が笑顔で暖かい拍手を送っていたのが印象的でした。

 2つの有名なコンクールで上位入賞してはいますが、日頃の鍛錬を怠らず一歩一歩着実に人生の時を刻んできた結果が、今日のような演奏に繋がっているのでしょうね。年齢的に深みが増してくるこれからが注目だと思います。