ブルックナー:交響曲第8番[ハース版]/ルドルフ・ケンペ&チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

NMLで

「SOMM Recordings」ほか3レーベルが参加

というお報せとともに大量に登録されたディスクの中で見かけたもの。

SOMM Recordings[http://www.somm-recordings.com/]は1995年に創業したイギリスのレーベルとのこと。指揮者ルドルフ・ケンペですぐに思い出すのがシュターツカペレ・ドレスデンやミュンヘン・フィルだったりしますので、トーンハレ管との組み合わせは珍しいと思ったのですが、ググってみると単に私が不勉強だっただけのようで(苦笑)、ケンペがこのオケの首席指揮者を務めていた時期もあったようです。

 

ブルックナー:交響曲第8番[ハース版]/ケンペ&チューリッヒ・トーンハレ管(2CD)【SOMM Recordings】

アントン・ブルックナー
・交響曲第8番ハ短調[ハース版]

指揮:ルドルフ・ケンペ
管弦楽:チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

録音時期:1971年11月12-13日
録音場所:チューリッヒ、トーンハレ

http://ml.naxos.jp/album/SOMMCD016

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Sommcd016

 

さて、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団[http://www.tonhalle-orchester.ch/]。スイスはドイツ語圏にあるチューリッヒにはオペラハウスとしてのチューリッヒ歌劇場とコンサート専門オーケストラとしてのトーンハレ管がありますが、1985年にオペラ部門とコンサート部門に完全に分化した団体となる前は1つのオーケストラで両方掛け持ちしていたそうです。一応オペラメインのグループとコンサートメインのグループに内部分けがされてはいたようで、その中でメンバーの行き来は多少はあったそうですが。

閑話休題。

ケンペとトーンハレ管のブル8、LP時代にスイスのTUDOR[http://www.tudor.ch/]レーベルからリリースされていたそうで、マニアの間では知る人ぞ知る隠れ名盤のようですが、実際に聴いてみて納得です。ブルヲタ名乗れるほどのレベルではない私が言ってもあまり説得力ないでしょうけど、少なくともハース版での演奏でケンペ&トーンハレ盤に比肩できるレベルの録音は古今東西の名盤多しと言えどそうそうないと思います。個人的にはノヴァーク版第2稿ならシューリヒト&ウィーン・フィルの一択なのですが、いかんせんブル8を初めて聴いたのが高校の時が大学入りたての頃だかに廉価盤LPで出ていたシューリヒト盤だったせいで、後から生前の朝比奈さんの生演奏(在京オケに客演する機会を狙って仙台から出かけたりw)とかで聴いたハース版の演奏にはなかなか馴染めなかった経緯があります。これが7番となると第2楽章でのパーカッションの追加の有無でハース版に絶対的な軍配を上げるのですが、8番は最初に聴いたのが超の付く名盤でしたからねぇ・・・運が良いんだか悪いんだか(爆)。

ともあれ、ハイレベルの録音名盤が目白押しとはいえ演奏水準がちょっとでも落ちるとどうにも間延び感が拭えない印象のするブル8のハース版、だったらいっそノヴァーク版第1稿の方がスッキリと腑に落ちるくらいなのですが、このケンペ盤はそういったの抜きで、とにかく最初から最後まで素晴らしい。全てに無駄がなく、かつ流れとテンポ感が自然。それでいて全体の壮大なスケール感と後半楽章の濃密さが半端なくて、第3楽章の深遠なる宇宙を思わせる神憑り、終楽章での堂々たる躍動感には圧倒されるばかりでした。オケもトーンハレ管のブラスセクションが豪快な鳴りっぷりで、第3楽章の神憑りっぷりもこのブラスセクションあってこそという気がします(弦セクションがしっかり下支えしているというのももちろんありますが)。

惜しむらくは1971年の録音、しかも場所が音響の良さでは欧州でもトップクラスのトーンハレにもかかわらず、一部であれっ?というか一世代古臭い部分が垣間見えること。元はかなりダイナミックレンジが広くとってある演奏だと容易に想像できるのですが、これとネットのストリーミングで聴いていることを勘案しても・・・という気がしなくもないです。ストリーミングでなく実際にCDでちゃんとしたオーディオ環境下で聴いたら印象が変わるのでしょうけど、もしかしたら SOMM Recordings が音源を入手してリマスタリングする以前の問題で、マスターテープの保管状態が万全でなかったのかしら?

ただ、演奏に関しては間違いなく文句なしの名演です。ブルックナーファンでも好みの違いがいろいろあるでしょうけど、これは誰が聴いても―ベストワンに挙げるかどうかは別として―ストレス無しで納得のいく、真摯で充実した内容の音楽だと思います。