京都市交響楽団が2020年度の定期演奏会ラインナップと新体制を発表

サー・サイモン・ラトルが若い頃に首席指揮者として徹底的にアンサンブル能力を鍛え上げて世界的に有名になり、また2018/19シーズンから山田和樹さんが首席客演指揮者に就任したことで日本にとっても身近になった英国のメジャーオケの1つ、バーミンガム市交響楽団は City of Birmingham Symphony Orchestra, 略称CBSO・・・なのですが、そうした欧州での名付けに倣うようにしたのかどうか、我らが京都市交響楽団は2020年4月から英語表記を

“City of Kyoto Symphony Orchestra”


に変えて、下記のような新体制で臨むそうです。

第13代常任指揮者兼芸術顧問:広上淳一
首席客演指揮者:ジョン・アクセルロッド
特別名誉友情コンサートマスター:豊嶋泰嗣
特別客演コンサートマスター:石田泰尚、会田莉凡
特別首席チェロ奏者:山本裕康

(※内容を順次、追加更新します)

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◆第644回定期
2020年4月24日(金)19:00
指揮:大友直人
◇ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 Op.26
〔Vn 荒井里桜〕
◇エルガー:交響曲第2番 変ホ長調 Op.63

◆◆第645回定期◆◆
2020年5月16日(土)14:30
2020年5月17日(日)14:30
指揮:クリスティアン・アルミンク
◇モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』 K.527〜序曲
◇モーツァルト:ピアノ協奏曲第10番(2台のピアノのための協奏曲) 変ホ長調 K.365(316a)
〔Pf フェルハン・エンダー&フェルザン・エンダー〕
◇チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 Op.64

◆第646回定期
2020年6月26日(金)19:00
指揮:広上淳一
◇ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調 WAB 108[ハース版]

◆◆第647回定期◆◆
2020年7月25日(土)14:30
2020年7月26日(日)14:30
指揮:パスカル・ロフェ
◇ラヴェル:スペイン狂詩曲
◇ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調
〔Pf ロジェ・ムラロ〕
◇デュティユー:メタボール
◇ラヴェル:バレエ『ダフニスとクロエ』第2組曲

◆第648回定期
2020年8月29日(土)14:30
指揮:阪 哲朗
◇廣瀬量平:祝典序曲
◇モーツァルト:交響曲第36番 ハ長調 K.425『リンツ』
◇リヒャルト・シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』Op.28
◇リヒャルト・シュトラウス:歌劇『ばらの騎士』 Op.59〜 ※選曲

◆◆第649回定期◆◆
2020年9月12日(土)14:30
2020年9月13日(日)14:30
指揮:ジョン・アクセルロッド
◇マーラー:交響曲第2番 ハ短調
〔S テオドラ・ゲオルギュー、 Ms ウォリス・ジュンタ、 cho 京響コーラス〕

◆第650回定期
2020年10月9日(金)19:00
指揮:ゲルゲイ・マダラシュ沼尻竜典
◇リスト:ハンガリー狂詩曲第2番 ニ短調 S.359/2
◇コダーイ:ガランタ舞曲
◇モーツァルト:オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲 変ホ長調 K.297b
◇ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調『英雄』 Op.55

◆◆第651回定期◆◆
2020年11月28日(土)14:30
2020年11月29日(日)14:30
指揮:サッシャ・ゲッツェル
◇グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16
〔Pf アレクセイ・ヴォロディン〕
◇リヒャルト・シュトラウス:アルプス交響曲 Op.64

◆◆第652回定期◆◆
2021年1月23日(土)14:30
2021年1月24日(日)14:30
指揮:アレクサンドル・スラドコフスキー
◇チャイコフスキー:幻想序曲『ロメオとジュリエット』
◇チャイコフスキー:祝典序曲『1812年』 変ホ長調 Op.49
◇ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 Op.47

◆第653回定期
2021年2月19日(金)19:00
指揮:小泉和裕
◇ワーグナー:歌劇『リエンツィ』〜序曲
◇グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 Op.82
〔Vn クララ=ジュミ・カン〕
◇ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68

◆◆第654回定期◆◆
2021年3月27日(土)14:30
2021年3月28日(日)14:30
指揮:広上淳一
◇エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 Op.61
〔Vn ダニエル・ホープ〕
◇ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 Op.70, B.141

◆◆第九コンサート◆◆
2020年12月27日(土)18:00
2020年12月28日(日)14:30
指揮:広上淳一
◇シベリウス:組曲『恋人』 Op.14
◇ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 Op.125
〔S 砂川涼子、Ms 谷口睦美、T ジョン・健・ヌッツォ、Br 甲斐栄次郎、cho 京響コーラス〕

◆ニューイヤー・コンサート
2021年1月10日(日)14:30
指揮:井上道義
◇伊福部昭:管絃楽のための『日本組曲』〜第4曲「佞武多(ねぶた)」
◇伊福部昭:二十絃箏協奏曲『二十絃箏とオーケストラのための交響的エグログ』
〔箏 LEO(今野玲央)〕
◇池辺晋一郎:井上道義委嘱作品[※世界初演]
◇武満徹:3つの映画音楽〜第3曲 – 映画『他人の顔』よりワルツ
◇ドリーブ:バレエ『コッペリア』〜ワルツ
◇ハチャトゥリアン:組曲『仮面舞踏会』〜第1曲「ワルツ」
◇チャイコフスキー:バレエ『眠れる森の美女』 Op.66〜村人の大ワルツ

[※以上、場所はすべて 京都コンサートホール・大ホール です]

※※追記:COVID-19感染拡大防止のため、第644回・第645回・第646回定期は開催中止、第647回・第648回・第649回は内容を変更して部分的開催。第650回は指揮者を変更しプログラム前半の曲目を差替。



京都市交響楽団が2019年度の定期演奏会ラインナップを発表

私、AmazonのFire TV Stickをパソコン用フルHDモニタに接続して使ってて、Prime Video以外にも今夏から契約しているDAZNなんかを観たりしてるのですが、これを書きながら偶々観ていた、YouTubeにアップされてるhr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)の定期演奏会ライヴ動画、コンサートの始まりで楽員さんが全員一斉に舞台に出てきて観客が拍手で迎えるシーンがあって、あらま今の京響と同じやん、みたいな・・・。欧州各国や米国のオーケストラ事情を細かいところまで把握してはいないので、こういう始まりがドイツのスタンダードなのかはわかりませんが、フランクフルトでやってるのなら京都でやったってエエやんというわけで、次からは私も遠慮がちでなくもっと堂々と楽団員さんたちの入場を拍手で迎えることにしようと思いました。

 

さて、今上陛下の天皇譲位が控える2019年度の京都市交響楽団の定期演奏会ラインナップ、こうして書いてて気づいたのですが、ブラームスが1個もありません!珍しい!個人的には大して好きな作曲家でもないのでブラームスの名前を見るたびに少し辟易していたところもあったのですが、定期にブラームスが無い1年というのは新鮮でいいですね。遡って調べたら10年ぶりでした。年11回しかない定期で京響に採り上げてほしい作曲家は他に山ほどあるので、その次の年もブラームスは無しでいいです。それよりかはブルックナーの2・3・6番を誰か振ってくれへんかな?

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ハイドンの『天地創造』は本来であれば8月ではなく新年の初め1月に演奏するのが相応しいのですが、こういうスタンダードのオラトリオを採り上げる機会が極端に少ない日本では贅沢も言っれられません。世界最高峰の合唱団と名高いスウェーデン放送合唱団のシェフを10年務めた合唱指揮のスペシャリスト、ペーター・ダイクストラが京響と手がける『天地創造』、大いに楽しみです。

来年の高関さんと下野さんの担当回、なんかコレジャナイ感がするのは気のせいでしょうか?(苦笑)
交響曲第6番、ブルックナーだってドヴォルザークだって良いの書いてるんだけどなーベートーヴェンでなくてもなー(ぶつぶつ)

 


 

◆第633回定期
2019年4月12日(金)19:00
指揮:井上道義
◇プロコフィエフ:交響組曲『キージェ中尉』 Op.60
◇プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26
〔Pf イリヤ・ラシュコフスキー〕
◇プロコフィエフ:バレエ『ロメオとジュリエット』 Op.64~井上道義セレクション

◆◆第634回定期◆◆
2019年5月18日(土)14:30
2019年5月19日(日)14:30
指揮:カーチュン・ウォン
◇吉松 隆:鳥は静かに… Op.72
◇シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47
〔Vn ラグンヒル・ヘムシング〕
◇フランク:交響曲ニ短調

◆第635回定期
2019年6月21日(金)19:00
指揮:広上淳一
◇ヴェルディ:『シチリア島の夕べの祈り』〜序曲
◇コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
〔Vn 五嶋 龍〕
◇ラフマニノフ:交響的舞曲 Op.45

◆◆第636回定期◆◆
2019年7月27日(土)14:30
2019年7月28日(日)14:30
指揮:高関 健
◇スメタナ:連作交響詩『わが祖国』(6作全曲)

◆第637回定期
2019年8月25日(日)14:30
指揮:ペーター・ダイクストラ
◇ハイドン:オラトリオ『天地創造』 Hob. XXI-2
〔S 盛田麻央、 T 櫻田 亮、 B 青山 貴、 cho 京響コーラス〕

◆◆第638回定期◆◆
2019年9月21日(土)14:30
2019年9月22日(日・祝)14:30
指揮:下野竜也
◇ブルックナー(スクロヴァチェフスキ編曲):弦楽五重奏曲 ヘ長調 WAB 112〜第3楽章「アダージョ」
◇モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
〔Pf ヤン・リシエツキ〕
◇ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調『田園』 Op.68

◆第639回定期
2019年10月11日(金)19:00
指揮:ラルフ・ワイケルト
◇モーツァルト:交響曲第35番 ニ長調 K.385『ハフナー』
◇ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調『ロマンティック』 WAB 104[ノヴァーク版第2稿]

◆◆第640回定期◆◆
2019年11月16日(土)14:30
2019年11月17日(日)14:30
指揮:シルヴァン・カンブルラン
◇武満 徹:夢の時
◇ハイドン:交響曲第104番 ニ長調『ロンドン』 Hob. I:104
◇ストラヴィンスキー:バレエ『春の祭典』

◆◆第641回定期◆◆
2020年1月18日(土)14:30
2020年1月19日(日)14:30
指揮:ジョン・アクセルロッド
◇ベートーヴェン:劇付随音楽『アテネの廃墟』 Op.113〜序曲
◇バーンスタイン:ハリル ― 独奏フルート、弦楽オーケストラと打楽器のためのノクターン
〔Fl アンドレアス・ブラウ〕
◇ショスタコーヴィチ:交響曲第7番 ハ長調『レニングラード』 Op.60

◆第642回定期
2020年2月14日(金)19:00
指揮:リオ・クォクマン(廖國敏)
◇ラロ:スペイン交響曲 Op.21
〔Vn スヴェトリン・ルセフ〕
◇プロコフィエフ:交響曲第5番 変ロ長調 Op.100

◆◆第643回定期◆◆
2020年3月28日(土)14:30
2020年3月29日(日)14:30
指揮:広上淳一
◇シューベルト:交響曲第5番 変ロ長調 D.485
◇マーラー:交響曲第4番 ト長調
〔S 森谷真理〕

 

◆◆第九コンサート◆◆
2019年12月27日(金)19:00
2019年12月28日(土)14:30
指揮:ユベール・スダーン
◇メンデルスゾーン:序曲「静かな海と楽しい航海」 Op.27
◇ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 Op.125
〔S 吉田珠代、Ms 八木寿子、T 清水徹太郎、Br 近藤 圭、cho 京響コーラス〕

◆ニューイヤー・コンサート
2020年1月12日(日)14:30
指揮:クレメンス・シュルト
◇シューマン:歌劇『ゲノヴェーヴァ』 Op.81〜序曲
◇シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54
〔Pf 岡田 奏〕
◇シューマン:交響曲第3番 変ホ長調『ライン』 Op.97

 

[※以上、場所はすべて 京都コンサートホール・大ホール です]

 


 

2年続けての登場になるリオ・クォクマン(http://www.liokuokman.com/)と、今回が初登場となる1986年シンガポール生まれの新鋭カーチュン・ウォン(http://www.kahchunwong.com/)、華人系の俊英指揮者が台頭してきて、1年に2人も京響定期に登場するというのは時代の流れですかねぇ〜。そのカーチュン・ウォンは今シーズンから独バイエルン州ニュルンベルク市(あのワーグナー『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のニュルンベルクはここ)の第2のオーケストラであるニュルンベルク交響楽団[Nürnberger Symphoniker https://www.nuernbergersymphoniker.de/]で首席指揮者を務めていますが、では第1はというとニュルンベルク州立歌劇場[Staatstheater Nürnberg https://www.staatstheater-nuernberg.de/]の座付きにあたるニュルンベルク州立フィルハーモニーで、こちらも今シーズンからGMDにヨアナ・マルヴィッツ(Joana Mallwitz http://joanamallwitz.com/)がマルクス・ボッシュの後釜として就任しました。彼女とカーチュン・ウォンは2人とも1986年生まれですから、若手同士で切磋琢磨しつつ成長していってくれるといいですね。


 

ちなみに、カーチュン・ウォンが採り上げるフランクの交響曲と、リオ・クォクマンが採り上げるラロのスペイン交響曲は、2曲とも京響定期では9年ぶりの演奏となります。

シルヴァン・カンブルランが昨秋に読響を率いて滋賀びわ湖ホールでメシアンの『アッシジの聖フランチェスコ』を上演したの、とても行きたかったんですけど、都合がつかずに行けなかったんですよね。ですので、京響に客演で来てくれるの嬉しいです。読響の常任は今年度いっぱいで退任するそうですが、京響とはどんな化学反応を起こしてくれるのでしょう?

N響、東響、新日フィルと東京のオケには何度か客演されてるラルフ・ワイケルト、初めての京都でブルックナーを振ってくれるのは良いのですが、なぜ京響はいつもいつもオーダーが4番ばかりなのでしょう?2・3・6・7番じゃダメなん?なんかすげーモッタイナイ感が・・・。

翌年1月、アクセルロッド回で共演するアンドレアス・ブラウは定年の2015年までエマニュエル・パユとともにベルリン・フィルの首席フルート奏者を務めていた人。土日2日公演での登場ですので、部活動で吹奏楽をやっている中高生さんたちには仲間連れでぜひとも聴きに来てほしいですね。

あと、定期ではないですがニューイヤー・コンサートを振るクレメンス・シュルト(http://www.clemensschuldt.de/)、京響ニューイヤーのプログラムでこんなチャレンジする指揮者は山田和樹さん以来ではないでしょうか?個人的にシューマンは好みじゃないけど、こういうプログラムを組む心意気が興味深いので、都合がつけば行ってみたいですね。

 

 


武満徹:『波の盆』『乱』、細川俊夫:記憶の海へ、尾高惇忠:オルガンと管弦楽のための幻想曲/尾高忠明&札幌交響楽団

NMLに
『夏休み特集 – 「海」を聴く』
と題したプレイリストのページができてまして、どうせドビュッシーの『海』の聴き比べだろうとタカを括って見てみたところ、大勢の作曲家による“海”を題材にした作品が並べられていて驚きました。このリストには日本を代表する現役の作曲家の細川俊夫さんの作品が2つ入ってまして、逆引きみたいな感じでこのプレイリストにはない細川作品をNMLで検索していたところ、Chandos[http://www.chandos.net/]レーベルに尾高忠明さんと札幌交響楽団[http://www.sso.or.jp/]のコンビが録音した邦人作曲家の作品集のディスクを見つけ、聴いてみた次第です。

 

武満徹:『波の盆』『乱』、細川俊夫:記憶の海へ、尾高惇忠:オルガンとオーケストラのための幻想曲
 /尾高忠明&札幌交響楽団
【Chandos】

尾高惇忠
・オルガンとオーケストラのための幻想曲[※世界初録音]
武満徹
・波の盆
・乱
細川俊夫
・記憶の海へ〜ヒロシマ・シンフォニー〜[※世界初録音]

指揮:尾高忠明
管弦楽:札幌交響楽団
オルガン:ブライアン・アシュレー

録音時期:2000年5月8-11日
録音場所:札幌コンサートホールKitara

http://ml.naxos.jp/album/CHAN9876

Chan9876

 

日本屈指の音響を誇る札幌コンサートホールKitara[http://www.kitara-sapporo.or.jp/]でのセッション録音という点を割り引いても、地方オケを侮るなかれ、札響は巧いと素直に感心しましたし、武満さんを筆頭とする邦人作曲家の作品の演奏にも慣れている印象を受けました。シェフが岩城さん、秋山さん、尾高さんと続いて彼らの薫陶を受けたからでしょうね。(ウェールズ時代からの尾高さんとの付き合いというだけで無しに)Chandosレーベルのスタッフが札幌まで出向いてきただけのことはあるように思いました。しかも世界初録音が2曲というオマケ付き(笑)。

その世界初録音の1つ、尾高惇忠さんの作品はオルガンの大伽藍サウンドにまずは圧倒されますが、聴いていくうちにサン=サーンスの3番シンフォニーのような色の重ね塗りのような響きではなく、彩色違いの絹糸を何本も撚りあわせた線画で描いたような独特のファンタスティックな音楽であることに気付かされます。こういったところは日本人ならではの感性なんでしょうか。

もう1つの世界初録音の細川作品は広島交響楽団[http://hirokyo.or.jp/]のプロ化25周年記念に作曲されて世界初演も広響が行ったそうですが、細川さんの生まれ故郷でもある広島の名がサブタイトルに付せられているとはいえ、『ヒロシマ・声なき声』(ヒロシマ・レクィエム)のような原爆を関連付けたものではないそうですし、実際に出てくる音楽からもそうした暗さとは無縁のように感じました。全体的に茫洋とした雰囲気ですが、微細に見ていくと1つ1つの音がとても繊細で緻密に織りあわせてあるような印象です。札響が慣れていると思ったのはこうしたところをしっかりと表現できている事にも表れています(随分前に大野さんが大フィルの定期に初客演した際に前半で細川作品を採り上げていましたが、あの時はオケ側が曲にも大野さんの棒にもついていけてないのが丸わかりでしたっけ・・・苦笑)。

そして2曲の世界初録音作品に挟まれた武満さんの曲は『波の盆』が30年前に放映された同名のテレビドラマの主題曲で、もう1つは黒澤映画『乱』の音楽から組曲化された作品です。武満さんの代表作として『ノヴェンバー・ステップス』がよく挙げられますが、現代音楽が苦手な人、もしくはクラシック音楽自体にあまり縁のない人が武満作品に手を付けるなら、有名な『ノヴェンバー・ステップス』よりも『波の盆』の方がずっと入りやすく、かつ武満世界の一端に馴染みやすいのではないでしょうか。日本のテレビドラマの主題曲らしい日本人への親しみやすさを持ちながらも、そこには武満さん独特の世界観もしっかりと刻み込まれてます。涙腺の弛い状態で聴いたら、ちょっと泣けてくるかもです。『乱』は黒澤明監督と武満さんが以後決定的に袂を分かった曰く付きの作品ですが、対立点の1つが音楽をどのオケに演奏させるかだったそうで、ロンドン響の起用を主張した黒澤監督に対して武満さんが反対して、彼と盟友の岩城さんが当時音楽監督を務めていた札響が演奏を担当することになり、はじめは無名のオケに不満タラタラだったらしい黒澤監督も実際に演奏を聴いてからは深々と頭を下げる他なかったというエピソードがあるそうです。いわば札響の誇りでもある『乱』の演奏は映画公開から15年経ってもDNAがしっかり受け継がれていることを証明した素晴らしいものとなっているように感じました。

 



岩城宏之 conduct オール武満プログラム・・・京響 第485回定期

 今年は武満徹さんの没後10周年にあたるので(1996年2月20日に亡くなられてますから今日がちょうど2日違い)、岩城さんも思い切ってオール武満プロを組まれたようです。曲ごとにオケの配置が替わるので、その都度幕間の時間繋ぎがてら岩城さんのトークがあったのですが、プログラムに解説を書いた人に向かって、まぁ文句を言うこと言うこと(爆)。岩城節炸裂なのですが、悪いのはちゃんと調べないまま書いた方にあると思うので仕方ないですね。生前の武満さんと深い親交があり作品も積極的に内外で採り上げてきた岩城さんから見れば穴だらけだったんでしょう。

 しとらすはそれほど武満作品に親しんでるわけではないですが、エッセイでもたまに見かける毒舌を生で聞けてよかったです(笑)。その彼曰く「今日は初期・中期・後期から曲目を選んでみました」とのことですので、曲名の後に作曲年代も記してみました。ちなみに「夢窓」は京響初演だそうです。京都信用金庫が創立60周年を記念して3人の作曲家に「京都」をテーマに新作を委嘱したのだそうで、武満さんの「夢窓」の他はトリスタン・ミュライユ「シヤージュ(航跡)」とマリー・シェーファー「香を聞く」。この3曲を『交響的三部作“京都”』として小澤征爾さん指揮!の京響が1985年9月9日に京都会館で世界初演したそうで・・・へぇ~へぇ~へぇ~。翌日には東京の昭和女子大学人見記念講堂でも演奏され、このとき録音もなされてレコード化されたらしいのですが・・・今じゃ手に入りっこないわな・・・。

京都市交響楽団 第485回定期演奏会
2006年2月18日(土)18時開演@京都コンサートホール

◆武満徹 弦楽のためのレクイエム [1957]
◆武満徹 ノヴェンバー・ステップス [1967]
(休憩)
◆武満徹 夢時(Dreamtime ゆめとき) [1981]
◆武満徹 夢窓 [1985]
(休憩)
◆「系図」~若い人たちのための音楽詩~ [1992]
  〔※岩城宏之による室内オーケストラ向け編曲版〕

指揮:岩城宏之
コンサートマスター:工藤千博
尺八:三橋貴風(ノヴェンバー・ステップス)
琵琶:首藤久美子(〃)
ギター:佐藤紀雄(夢窓)
ナレーター:吉行和子(「系図」)
アコーディオン:山岡秀明(〃)

 没後10年でも定期でこうしたプログラムを組んでくれるオケは少なくとも関西では他にありませんので(特に大フィルなんて絶対にやらないだろうな・・・)、とてもありがたいチョイスでした。「弦楽のためのレクイエム」や「ノヴェンバー・ステップス」あたりはFMとかで聴いたことはあるのですが生では初めてでしたし、京響のサウンドの特性がわりと邦人作品に向いているのと岩城さんが武満作品を得意にしているのと相まって、生で味わう“タケミツ・トーン”を存分に堪能できましたし、どれもいい演奏でした。

・・・うん、4曲目までは・・・

 最後の「系図」(オリジナルはニューヨーク・フィル創立150周年委嘱作品で大編成オケ用なんですが、詩の雰囲気に合わせたいからと武満さんの死後に岩城さんが武満夫人の了解をとって小編成オケ向けに編曲したとか)、谷川俊太郎さんの『はだか』という詩集の中から武満さんが

1.むかしむかし
2.おじいちゃん
3.おばあちゃん
4.おとうさん
5.おかあさん
6.とおく

という6篇の詩を選んで曲をつけたんだそうです。詩は歌うのではなく朗読されるようになってて、いずれも家族をモチーフにした少女の1人称で書かれた詩のためか武満さん自身は「12歳から15歳の少女による朗読」とされたようなのですが、今日の朗読はお母さん世代どころかおばあちゃん世代?にあたる女優の吉行和子さんでした(実際の演奏会でも大人の女性が務めることが多いそうですね)。
 で、女の子の語りという設定ですので詩自体が平易な言葉遣いで書かれてますし、曲もそれに合わせてか旋律など親しみやすい曲調になっているのですが・・・なんなんですか、このどこか哀愁が漂っててひたすらに美しいのは・・・曲が半分もいかないうちから涙が出てきて止まりませんでしたよ・・・。吉行さんの朗読も京響の演奏も、何故こうも泣かせてくれるんだか・・・。これ以外に感想なんて書けません。

 そんなわけで、大変に貴重な体験をさせていただきました。岩城さんと吉行さんと京響のみなさん、ありがとう。

4ヵ月後の追記:
2006年6月13日、岩城さんが心不全で亡くなられました。享年73歳。しとらすにとって岩城さんの指揮はあの京響2月定期が最初で最後になってしまいましたが、その1回で貴重な体験をさせていただきました。謹んで御冥福をお祈りいたします。