京都市交響楽団 第480回定期演奏会

2005年9月14日(水)19時開演
@京都コンサートホール

◆V.トルミス  序曲第2番
◆S.ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番ハ短調 op.18
(休憩)
◆P.I.チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調 op.64

指揮:アヌ・タリ
ピアノ:伊藤恵

 アヌ・タリは1972年生まれのエストニア人。写真での印象とは違い、どちらかというと可愛らしい感じの顔立ちに、スレンダーで背もそんなに高くなさそう(170cmあるかないか)。録音もあるようですが未聴で、私は全く初めてでした。

 1曲目、ヴェリヨ・トルミスはエストニアの作曲家で合唱作品が多いらしく、合唱曲の分野ではそれなりに名前を売っているようです。今回の序曲第2番はもちろん管弦楽曲ですが、なんとなくシベリウスとショスタコーヴィチを足して2で割ったような音の作りでした。全体的に速めのテンポで1歩1歩を力強くしっかり大地を蹴って早足で歩くような、エネルギッシュで前向きな印象を持った曲でした。
 アヌ・タリの指揮は右手はほとんど拍子を振るだけ、左手は楽譜をめくるか右手と一緒に拍子を振るくらいで、あまり器用には見えませんでしたが、練習で良い関係を築けたのかオケがよく喰らいついている様子でした。今日のコンマスだった工藤千博さんが一際大きな身振りで弾いてましたし。

 2曲目のソロは伊藤恵さん。昨秋の神戸でのリサイタルで聴いたシューマンとシューベルトのソナタがとても印象に残っていて、信頼度100%(笑)。間違ってもおセンチになったり変に甘ったるくなったりするようなことにはならないと思ってはいましたが、まさに期待に違わない素晴しいラフマニノフでした。ピアノのダイナミックレンジが広く1つ1つの音を丹念に力強く弾いて曲の構造をしっかりと作り、スケール大きく仕上げてきました。自分が弾いてない時でもオケに合わせて体を大きく動かしたり口ずさんだりと、ラフマニノフの世界にすっかり入ってはいるのですが、それでいて流されず闇雲に没入せず、曲の全体構造を掴んで聴衆に提示してくれるのは伊藤さんならではだと思いました。バランスよくピアノをサポートした指揮も良かったと思います。拍手を受ける時に、若き指揮者を盛り立てようとするソリストと、あくまでソリストを立てようとする指揮者の譲り合いは見ていて微笑ましかったです。

 3曲目のチャイコフスキー、音の響きはやっぱりロシア・スラブ的というよりも北欧の薫り漂うもので、このままシベリウスでもやってくれないかな~~~なんて思ったり。京都コンサートホールは場所によって聴こえ方がえらい違うので断言はできませんが、私のいた席(ヴィオラの真上にあたる3階席)からは弦を大きく鳴らして際立たせてるように聴こえました。テンポは全体的に中庸で、目立ったリタルダントやアッチェランドもなかったですが、その中でもメロディーはわりとたっぷり歌わせてましたし、メリハリが効いて引き締まった、非常に集中度が高く熱い好演奏でした。いつもこんなに音大きかったっけ?というくらい弦の厚みがあって、木管ソロもよかったし(仙崎さん・小谷口さん・高山さん、お疲れさんどした!)、終楽章コーダに入る直前で間違い迷惑ブラボーをデカい声でかましやがったバカオヤジがいなければ大変気分良くホールを後にできたんですけどね!!!たぶん1階席だと思うのですが、下の客席がよく見えなかったので、誰かはわからずじまい。特定できたら帰りにヤキ入れてやったのに(をい)。

 アホなオヤジ客に呆れたのか工藤さんは苦笑いでしたが、小谷口さん周辺だけでなくヴァイオリンを中心に団員達の充実感溢れる笑顔があちこちで見られました。この日の演奏という結果だけでなく、指揮者の指名で拍手を受ける仲間に対して、そして指揮者に対して、自然な笑顔で心からの拍手を送るステージの団員(特に女性)を見て、アヌ・タリと京響がとても良好な関係を築いて本番に臨み成功させたことを客席からも実感しました。エストニアを背負っているという意気込みすら感じる気迫と同時に謙虚で控えめな一面ものぞかせて、演奏の中身とともに良い印象を持ちました。また京響定期でアヌ・タリに振ってほしいですね。今度はペルトやトゥビンなど、オール・エストニア・プログラムでぜひ。